どうしても性に合わず
『さよなら、人類』と言っても、昔はやった、たまの歌ではない。スウェーデンの鬼才と言われるロイ・アンダーソン監督作。今年のベネチア映画祭でグランプリを受賞した映画のタイトルだ。
この映画は、『散歩する惑星』(00)『愛おしき隣人』(07)に続く“リビング・トリロジー=人生について話”の最終章にあたるそうだが、アンダーソン監督作は初見なので見る前はちょっと構えていた。
ところが、冒頭の死にまつわる落語の小噺のような三つの話。ワインの栓を抜こうとして心臓発作で死ぬ夫、それに気付かず料理を作り続ける妻。臨終が近付いても宝石が入ったバッグを手放さない老母、何とかそれを奪おうとするいい年をした子供たち。船の食堂で突然死した男が注文したえびサンドとビールの行方は…を見て、これはコント集を見るような気持ちで対すればいいのかと考え直した。
そして、狂言回し的にたびたび登場する、“面白くない面白グッズ”(ドラキュラの歯、笑い袋、歯抜けおやじのマスクなど)を扱う2人組のセールスマンの姿を見ながら、やっぱりこの映画は喜劇に違いないと自分を納得させたのだが…。
結局、日本人的な感覚では理解し難いブラックでシュールな不条理劇を、独特の間(ま)で見せられ続け、最後の方では頭がくらくらしてきた。こういう表現方法もあるということは認めるし、試写で見せてもらったので文句を言えた義理ではないのだが、どうしても俺の性(しょう)には合わない映画だった。
by the way.後で知ったのだが、2人組のモデルは日本では“極楽コンビ”と呼ばれたスタン・ローレル&オリバー・ハーディだという。