テレビでランドルフ・スコット主演の『捨身の一撃』(A LAWLESS STREET)(55・コロムビア)を。
町民が保安官を裏切る皮肉を描く
1人で体を張って町の治安を守り続けている初老の保安官(スコット)。だが町の支配を企む賭博場のオーナーと劇場主は殺し屋を雇い保安官の命を狙う。そんな中、長い間離れ離れに暮らしていた保安官の妻(アンジェラ・ランズベリー)が歌手として町に現れる。
西部劇の約束事を盛り込みながらテンポ良く78分でまとめたジョセフ・H・ルイス監督の職人技が光る一編。真面目過ぎる独善的な保安官の孤独、彼を選んだ町民自らが彼を裏切るという皮肉なテーマは、ゲーリー・クーパーの『真昼の決闘』(52)やヘンリー・フォンダの『ワーロック』(59)などでも描かれたが、アメリカの秩序の根幹を成す“法”や“自警”が持つ矛盾についてあらためて考えさせられるところもある。
本作では、公開当時、57歳のスコットと30歳のランズベリーが夫婦役を演じている。ランズベリーは、後年の「ジェシカおばさんの事件簿」などでのひょうひょうとした演技が印象深く、本作の歌って踊る若き日の姿は少々意外な感じもするが、イギリス出身の彼女はもともとは歌手で舞台でも活躍した人。むしろこちらの方が本領なのだろう。殺し屋役のマイケル・ペイトがなかなかいい味を出し、劇場主と不倫している牧場主の妻役のジーン・パーカーが色っぽかったことも記しておこう。