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映画の王様

映画のことなら何でも書く

『追われる男』(55)

2018-04-02 08:30:57 | 復刻シネマライブラリー

 原稿作成のため、ニコラス・レイが『大砂塵』(54)に続いて撮った西部劇を見る。

 

 主演は『オクラホマ・キッド』(39)以来、16年ぶりの西部劇出演となったジェームズ・キャグニー。共演は当時の若手注目株で、後にボー・デレクを妻にしたジョン・デレク、相手役にスェーデン出身のヴイヴェカ・リンドフォース、敵役にアーネスト・ボーグナインという配役。

 公開当時の謳い文句は「壮大な野外シーンを背景に展開するビスタビジョン初の西部劇」だが、内容はあまり明るいものではない。

 大まかなストーリーは、無実の罪で服役していたマット(キャグニー)と、孤独な青年デイヴィー(デレク)が出会う。かつて息子を亡くしたマットは、息子と同年齢のデイヴィーをかわいがるが、デイヴィーは反発して悪事に手を染める、というもの。

 つまり、『大砂塵』の女同士の争いに変わって、今回は疑似父子の対立を描いているのだが、無実の罪を背負ったマット、列車強盗と間違われ町民から狙撃されるマットとデイヴィー、そのせいで片足が不自由になるデイヴィーと、冤罪とそれにまつわる傷がストーリーの鍵を握るところに、赤狩りの影響が感じられるのだ。

 ラストは、キャグニー、デレク、ボーグナインの三つ巴の対決となるが、終わった後に爽快感はなく、苦さが残る。キャグニーは自伝の中で「オフビートな西部劇を作ろうとしたが、ディテールが編集でカットされ、ただのプログラムピクチャーになってしまった」と嘆いている。

 

パンフレット(55・東宝事業課(スカラ座No.55-2))の主な内容
解説/物語/ジェームズ・キャグニー/ロケーションスナップ集/ジョン・デレク/ヴイヴェカ・リンドフォース/ジーン・ハーショルト/ジェイムズ・キャグニイに就て(双葉十三郎)

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『戦略空軍命令』

2018-02-28 06:09:11 | 復刻シネマライブラリー

 原稿作成のため、『戦略空軍命令』(55)を再見。

 

 朝鮮戦争終結後の、ソ連との冷戦の激化という状況を反映し、米空軍の全面協力のもと、核抑止力の重要性や愛国心の大切さを説くために作られた一種の空軍PR映画。

 現代の目から見れば、時代錯誤も甚だしいと、言えなくもないのだが、それとは別に、戦闘機がビクター・ヤングの美しい音楽に乗って大空を行く映像が、ヴィスタヴィジョンの大画面と色鮮やかなテクニカラーで存分に見られるという魅力がある。

 また『グレン・ミラー物語』(54)に続く、アンソニー・マン監督、ジェームズ・スチュワート、ジューン・アリソンという名トリオによる夫婦愛の物語という見どころもある。

 スチュワートが演じた予備役召集に応じて再入隊する主人公のロバート・“ダッチ”・ホランドは、セントルイス・カージナルスの三塁手という設定。そのモデルとなったのは、スチュワートと同じ、“のっぽ”の大打者テッド・ウィリアムズだという。

  

パンフレット(55・東宝事業課(スカラ座No.55-1))の主な内容
解説/物語/戦略空軍命令と航空映画の魅力(岡俊雄)/この映画に登場する爆撃機の性能/スタアメモ ジェームズ・ステアート、ジューン・アリスン/わき役のひとびとフランク・ラヴジョイ、バリー・サリヴァン、ブルース・ベネット、ジェイ・C・フリッペン、フランク・モーガン/監督アンソニー・マン/マン監督とステュアートの七本目のコンビ作品

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『ケンタッキー魂』

2018-02-23 13:15:56 | 復刻シネマライブラリー

 原稿作成のため、ジョン・ウェイン製作・主演の『ケンタッキー魂』(49)を見る。

 

 舞台は1819年のアラバマ。英国軍との戦いに参加し勝利したケンタッキー連隊は、故郷に引き上げる途中、アラバマに立ち寄る。一方、アラバマにはワーテルローの戦いに敗れたナポレオン軍の残党が流れ着き、米政府から四つの地区を与えられて住み着いていた。

 この映画は、この二つの史実を踏まえて、フランス人居留地の開拓をめぐる陰謀に、元ケンタッキー連隊の隊員ブリーン(ウェイン)と仏軍の将軍の娘フルーレット(ヴェラ・ラルストン)の恋を絡めた開拓民たちの物語として創作されたもの。

 “極楽”と呼ばれた喜劇コンビ、ローレル&ハーディのオリバー・ハーディが、ブリーンの相棒役で出演し、ウェインとの楽しい掛け合いを見せてくれる。

 ヒロインのフルーレットを演じたヴェラ・ラルストンは、チェコ代表としてオリンピックにも出場した元フィギュアスケーター。第二のソニア・ヘニー(ノルウェー出身の元フィギュアスケーター女優)にはなれなかったが、後にリパブリックのオーナー、ハーバート・J・イエーツ夫人の座に収まった。

 “アメリカの歴史秘話”に加えて、そうしたキャスティングの面白さもこの映画の見どころの一つだ。

パンフレット(50・アメリカ映画宣伝社(American Picture News))の主な内容
解説/物語/よみものB級映画論(上村弘之)/アメリカの批評/この映画に関連して/試写室だより「頭上の敵機」/今週の話題

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『軍法会議』

2018-02-21 19:21:48 | 復刻シネマライブラリー

 原稿作成のためオットー・プレミンジャー監督、ゲーリー・クーパー主演の『軍法会議』(55)を見る。

 

 第一次大戦終結直後、日本の真珠湾攻撃を予見し、空軍の独立とパイロットの安全確保を訴えながら、軍法会議で有罪となったビリー・ミッチェル大佐(クーパー)を主人公に描く。晩年のクーパーは、老いが目立ち、若手に食われる場面も多いのだが、本作で、検事役のロッド・スタイガーが、ねちねちとクーパーをいびるシーンは、見ていて本当につらくなる。

 寄ってたかってクーパーをいじめるような展開を見ながら、まるで赤狩りのようだと思ったら、何と赤狩りで仕事を追われたダルトン・トランボとマイケル・ウィルソンがノンクレジットで脚本に参加していた。

 また、タブーに挑み続けたプレミンジャー作ということで、裁判を通して軍隊の複雑さを描いているところが面白いのだが、裁判長役のチャールズ・ビックフォード、弁護側のラルフ・ベラミーといった舞台出身の俳優たちのうまさが際立つ映画でもあった。

  

パンフレット(56・不明)の主な内容は
解説/物語/ゲイリイ・クーパー、エリザベス・モンゴメリイ/ビリイ・ミッチェルという男/判決後のビリイ・ミッチェル/撮影余話
解説/物語/「法廷映画」の異色 盛り上がる人間像(槇由起雄)/ゲイリイ・クーパー/エリザベス・モンゴメリー/判決後のビリイ・ミッチェル

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『大砂塵』続報

2018-01-12 08:48:05 | 復刻シネマライブラリー
DVDリーフレットの解説を書いた『大砂塵』が発売されました。



https://www.amazon.co.jp/dp/B0788C3D5T
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『大砂塵』

2017-12-19 18:29:15 | 復刻シネマライブラリー
DVDリーフレットの解説を書いた『大砂塵』の発売は、どうやら来年になったようです。



https://www.amazon.co.jp/dp/B0788C3D5T
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『街中の拳銃に狙われる男』『シェラマドレの決斗』

2017-12-11 08:35:19 | 復刻シネマライブラリー

リーフレットの解説を執筆した
ロバート・ミッチャム主演で“渡り保安官=town tamer”の活躍を描いた『街中の拳銃に狙われる男』(55)
マーロン・ブランド主演の種馬をめぐる争いを描いたメキシカン・ウエスタン『シェラマドレの決斗』(66)のDVDが発売された。





どちらも異色西部劇としてなかなか見応えがあった。

https://www.amazon.co.jp/dp/B077YGSFV1
https://www.amazon.co.jp/dp/B077TP9P8G

 


『街中の拳銃に狙われる男』パンフレット(56・国際出版社)の主な内容は
痛快!豪壮!型破りの西部劇!/ゴールドウィン父子の話/物語/スタア・メモ ロバート・ミッチャム、ジャン・スターリング/渡り保安官について
『街中の拳銃に狙われる男』パンフレット(56・外国映画社)の主な内容は
解説/物語/スタア・メモ ロバート・ミッチャム、ジャン・スターリング、ヘンリー・ハル、バーバラ・ローレンス

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『大砂塵』

2017-09-27 10:57:16 | 復刻シネマライブラリー

某所での原稿作製のため、『大砂塵』(54)を40数年ぶりに再見。



 1890年代、鉄道の敷設が進むアリゾナを舞台に、賭博場に現れた流浪のギター弾きとかつての恋人である酒場の女主人が、銀行襲撃犯と自警団との争いに巻き込まれていく姿を描いた異色西部劇。初見時、まだ中学生だった自分は「おばさん同士がいがみ合う、変な、妙な西部劇だなあ」と感じた。

 今回、見直してみてその印象が全て覆ったわけではないが、役柄とも重なるジョーン・クロフォードとマーセデス・マッケンブリッジの対立、男女役の逆転、『カサブランカ』(42)や赤狩りが与えた影響など、映画の奥にあったものを調べていくと、いろいろな意味で興味深い映画だとは思った。

 ラストでチラッと流れるだけの主題歌「ジャニー・ギター」(作詞・歌ペギー・リー、作曲ビクター・ヤング)が、なぜスタンダードになったのかは謎だが、多分、ラジオなどで流れて独り歩きした結果なのだろうと推察する。

https://www.youtube.com/watch?v=jw9pxjzfSX0

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