原稿作成のため、ニコラス・レイが『大砂塵』(54)に続いて撮った西部劇を見る。
主演は『オクラホマ・キッド』(39)以来、16年ぶりの西部劇出演となったジェームズ・キャグニー。共演は当時の若手注目株で、後にボー・デレクを妻にしたジョン・デレク、相手役にスェーデン出身のヴイヴェカ・リンドフォース、敵役にアーネスト・ボーグナインという配役。
公開当時の謳い文句は「壮大な野外シーンを背景に展開するビスタビジョン初の西部劇」だが、内容はあまり明るいものではない。
大まかなストーリーは、無実の罪で服役していたマット(キャグニー)と、孤独な青年デイヴィー(デレク)が出会う。かつて息子を亡くしたマットは、息子と同年齢のデイヴィーをかわいがるが、デイヴィーは反発して悪事に手を染める、というもの。
つまり、『大砂塵』の女同士の争いに変わって、今回は疑似父子の対立を描いているのだが、無実の罪を背負ったマット、列車強盗と間違われ町民から狙撃されるマットとデイヴィー、そのせいで片足が不自由になるデイヴィーと、冤罪とそれにまつわる傷がストーリーの鍵を握るところに、赤狩りの影響が感じられるのだ。
ラストは、キャグニー、デレク、ボーグナインの三つ巴の対決となるが、終わった後に爽快感はなく、苦さが残る。キャグニーは自伝の中で「オフビートな西部劇を作ろうとしたが、ディテールが編集でカットされ、ただのプログラムピクチャーになってしまった」と嘆いている。
パンフレット(55・東宝事業課(スカラ座No.55-2))の主な内容
解説/物語/ジェームズ・キャグニー/ロケーションスナップ集/ジョン・デレク/ヴイヴェカ・リンドフォース/ジーン・ハーショルト/ジェイムズ・キャグニイに就て(双葉十三郎)