むぎわら日記

日記兼用ブログです。
野山や街かどで見つけたもの、読書記録、模型のことなどを載せております。

『天に星 地に花』帚木 蓬生(集英社文庫)

2022年05月06日 | 読書
江戸時代の百姓一揆の顛末を描いた歴史小説。
大庄屋の息子で医師になった男を主人公としているため、傍観者の立場で描写しているところが面白く感じました。
江戸時代の農村社会が良く描かれておりリアリティを感じました。
疫病(天然痘/疱瘡)や飢饉が農村を襲い、領主の悪政がきっかけで農民たちの怒りが爆発します。
主人公は疱瘡に罹り一命を取り留めますが、そのとき治療をしてくれた医師に弟子入りし、医療の道を進むことになります。
天然痘の医学的描写が、作者が医師ならではの詳しさで圧巻です。
題名の『天に星~』にはつづきがあり、
天に星
地に花
人に慈愛
と続きます。
本当の意味は、天は暗黒、地は荒野、しかし星は輝き、花は咲くように、人の世も暗闇のようで慈愛があるという意味らしいです。
ラストもそのようなハッピーエンドで、あばた面の主人公は独り身であり兄が刑死し、師匠も亡くなってしまったが、亭主が逃走して引き取った妹と暮らし、妹の息子を跡取りとし、なんと幸せな人生かとつくづく感じるというもので、必死に生きていることのすばらしさをかみしめることができました。

コメント
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