宮本輝の一押し本として、ファンが推薦することが最も多い作品です。
離婚した二人が……とか、書簡体の文章とか……興味ない内容と、苦手な文体なので敬遠したのですが、あまりの評判の良さに手にとってみました。
ううむ、こ、これは……すごい!
手紙を綴るということは、こんなに美しく言葉を紡ぐことなのか。
一つ一つの言葉を選び、ただ一人の人だけに、読まれるとも限らない文章を書くこと自体が、もう失われた文化とコミュニケーションのやり方でもあり、古代や中世に描かれた見事な絵画を見るような気さえしました。
二人の手紙のやり取り、その手紙だけを並べているだけなのですが、二人を取り巻く人々の人生が1本1本の糸となり、見事な錦繍をそれぞれの人生としており上げていく、不思議なカラクリを見事に小説に結実させた傑作です。