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リマインドと想起の不一致(1)

2016年02月11日 | リマインドと想起の不一致
リマインドと想起の不一致(1)

 ここに彼女もいた。ぼくの暮らしてきた町に。

 それもそのはずだ。ぼくらは同じ学校に通っていたのだ。

 現在の風貌とはかなり違う。ぼく自身という意味での確認しかできないのだが。当時は白髪もない。一本も。だが、本質的なところではなにも変わっていない。松は杉にはならず、梅も桜にはどう転んでもならない。

 町角の一つ一つに思い出がねむっている。不意に猫が飛び出してきたように、自分をはっとさせ、想定以上にびっくりさせる。

 大げさにいえば、犬のマーキング作業のように電柱の一本ごとに、ぼくらのにおいが付着していた。ここで笑った。ここで悲しんだ。

 自分の心に確かめるように、さらには反論の余地がないか訴えてみる。

 あの年頃は多感なのだ。彼女と同程度の愛くるしさを有している子たちもたくさんいた。なぜ、彼女は選ばれたのか。自分のお眼鏡にかなったのか。なぜ、別の女性はコースを外れてしまったのか。もし、そうした別のルートを走った(歩くというテンポを維持するには若すぎ、性急すぎる年代だ)場合として、同じよろこびや、似通った悲しみが生まれたのだろうか。未熟児や発育不良のように、その関係は開花や成長を妨げる種を内包していたのだろうか。仮定なので、答えは要していない。不確定な疑問だからこそ、想像は楽しいともいえた。



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