当人相応の要求(12)
例えば、こうである。
モータリゼーション。四つの車輪の物語。遠くへ、短時間で行きたい人類。その結実としてのT型フォード。
その創始者。ヘンリー・フォード。1863年生まれ。車社会の到来。二足歩行へのあきらめ。
自動車社会と産業。社会の時間のようなテーマ。一点ものという考えは消え、流れ作業がはじまり、そのコンベアーを動かすために人が必要になる。モダン・タイムス。1901年、デトロイトというアメリカの都市においてフォードが車両の大量生産を先駆け、その為に人も流入する。
モータータウン。
人が増えれば、ちまたには音楽というこころの食料が必要になる。疲れを癒すためのアルコールと俗っぽさが混じる音楽。
デトロイト。モータウン。
彼は、古い音楽に熱中する。ベリー・ゴーディという人が作った音楽レーベル。ある種のおもねりが入ったサウンド。タンバリン。
車も土台が重要なら、軽いポップ・サウンドもベース・ラインが重要になる。彼にベースという楽器に目を向けさせてくれた人物、ジェームス・ジェーマーソン。モータウンの躍動する音楽の原動力。イギリスのアメリカかぶれのロック少年を魅了するその音色。彼は、考えもしなかった。音楽を聴くときに、渋い、ときには甘いボーカルやタイトなリズムに熱中するのは分かるが、派手さの一見ない、低音用の楽器を聴き入るために、スピーカーに耳を近づけようとは。
車に戻る。
日本では、トヨタ2000GT。流線型。ほぼ彼と同年代の車。世界に立ち向かうこと。敗戦国の復興の象徴としてのデザイン。東京オリンピックや万博というデータと同じ位置づけの車。
ジェームス・ボンド。
車の後姿。彼は、子供の頃、遊びに行ったいとこの家で時間を過ごすことが多くなった。外車に乗っているいとこの父が運転している隣を通過する国産車。彼の子供の視線でも、その頃のフェアレディやスカイラインという車のデザインは上質に映る。誰かの真似だったのだろうか? とても素敵なオリジナルな印象を持っていたが。自分を追い越す後部の丸いライト。夕暮れになるとそれが点灯する。彼の子供の頃の思い出として、そのことが鮮やかに残っている。
友人たちが、車の免許を取り出す。彼は、最高のドライブ・ミュージックのテープを作ることを夢想する。高速用。渋滞用。秋の景色用。ベリー・ゴーディという人が作った音楽レーベルが、いつも役立っていたことにある日、気づく。46分内の作業。TDK。
またもや車に戻る。お手本を越えてしまう真似。真面目な日本人。
性能が良くなりすぎた車があり、彼の青年時代は、貿易摩擦という言葉と概念がはびこりだす。誰もが低燃費を考えているわけでもないのかもしれないが、運転途中で故障するよりは、誰だってしない方が良いと思っているだろう。その方面での成功した日本の車。ついでに、テレビやビデオという製品が、外国に入り込み、図体のでかい肩にも、日本のラジカセが乗っている。その反面、ジョギングのお供として、小さな四角いものにヘッドホンをつなぎ音楽を流しながら走っている人々。現在は、アメリカ発信の小型な再生機器が耳に入っている。
車に戻る。どこにでも行ける車。だが、当然のように、多くの人には目的地がある。彼が、子供の頃にはなかった、カーナビというシステム。高性能になる社会。ものを覚えることを減らす人間。旅行先のレンタカーに搭載され、彼もその恩恵に充分すぎるほど、蒙った。彼の友人が運転していたのだが。その理由とは? 彼は、多くの青年たちを魅了するエンジンを原動力として動くものが好きになれずにいた。また、読書のさまたげになる行為としても。CO2。
ある日、就職の面接で免許がないという理由で落とされたことを懸念し、近所の自動車教習所に通う。人より長かったが、小さなカードに自分の緊張した顔写真が入ったものを手に入れる。そのことは、生活のリズムや、仕事の面で彼の役に立ったのだろうか。
でも、彼は若い頃に、環境破壊のことを懸念し、潔癖な性分もあるが、そのことを含め車に乗れなくなる。サイクルの物語。リ・サイクルの物語。
例えば、こうである。
モータリゼーション。四つの車輪の物語。遠くへ、短時間で行きたい人類。その結実としてのT型フォード。
その創始者。ヘンリー・フォード。1863年生まれ。車社会の到来。二足歩行へのあきらめ。
自動車社会と産業。社会の時間のようなテーマ。一点ものという考えは消え、流れ作業がはじまり、そのコンベアーを動かすために人が必要になる。モダン・タイムス。1901年、デトロイトというアメリカの都市においてフォードが車両の大量生産を先駆け、その為に人も流入する。
モータータウン。
人が増えれば、ちまたには音楽というこころの食料が必要になる。疲れを癒すためのアルコールと俗っぽさが混じる音楽。
デトロイト。モータウン。
彼は、古い音楽に熱中する。ベリー・ゴーディという人が作った音楽レーベル。ある種のおもねりが入ったサウンド。タンバリン。
車も土台が重要なら、軽いポップ・サウンドもベース・ラインが重要になる。彼にベースという楽器に目を向けさせてくれた人物、ジェームス・ジェーマーソン。モータウンの躍動する音楽の原動力。イギリスのアメリカかぶれのロック少年を魅了するその音色。彼は、考えもしなかった。音楽を聴くときに、渋い、ときには甘いボーカルやタイトなリズムに熱中するのは分かるが、派手さの一見ない、低音用の楽器を聴き入るために、スピーカーに耳を近づけようとは。
車に戻る。
日本では、トヨタ2000GT。流線型。ほぼ彼と同年代の車。世界に立ち向かうこと。敗戦国の復興の象徴としてのデザイン。東京オリンピックや万博というデータと同じ位置づけの車。
ジェームス・ボンド。
車の後姿。彼は、子供の頃、遊びに行ったいとこの家で時間を過ごすことが多くなった。外車に乗っているいとこの父が運転している隣を通過する国産車。彼の子供の視線でも、その頃のフェアレディやスカイラインという車のデザインは上質に映る。誰かの真似だったのだろうか? とても素敵なオリジナルな印象を持っていたが。自分を追い越す後部の丸いライト。夕暮れになるとそれが点灯する。彼の子供の頃の思い出として、そのことが鮮やかに残っている。
友人たちが、車の免許を取り出す。彼は、最高のドライブ・ミュージックのテープを作ることを夢想する。高速用。渋滞用。秋の景色用。ベリー・ゴーディという人が作った音楽レーベルが、いつも役立っていたことにある日、気づく。46分内の作業。TDK。
またもや車に戻る。お手本を越えてしまう真似。真面目な日本人。
性能が良くなりすぎた車があり、彼の青年時代は、貿易摩擦という言葉と概念がはびこりだす。誰もが低燃費を考えているわけでもないのかもしれないが、運転途中で故障するよりは、誰だってしない方が良いと思っているだろう。その方面での成功した日本の車。ついでに、テレビやビデオという製品が、外国に入り込み、図体のでかい肩にも、日本のラジカセが乗っている。その反面、ジョギングのお供として、小さな四角いものにヘッドホンをつなぎ音楽を流しながら走っている人々。現在は、アメリカ発信の小型な再生機器が耳に入っている。
車に戻る。どこにでも行ける車。だが、当然のように、多くの人には目的地がある。彼が、子供の頃にはなかった、カーナビというシステム。高性能になる社会。ものを覚えることを減らす人間。旅行先のレンタカーに搭載され、彼もその恩恵に充分すぎるほど、蒙った。彼の友人が運転していたのだが。その理由とは? 彼は、多くの青年たちを魅了するエンジンを原動力として動くものが好きになれずにいた。また、読書のさまたげになる行為としても。CO2。
ある日、就職の面接で免許がないという理由で落とされたことを懸念し、近所の自動車教習所に通う。人より長かったが、小さなカードに自分の緊張した顔写真が入ったものを手に入れる。そのことは、生活のリズムや、仕事の面で彼の役に立ったのだろうか。
でも、彼は若い頃に、環境破壊のことを懸念し、潔癖な性分もあるが、そのことを含め車に乗れなくなる。サイクルの物語。リ・サイクルの物語。