高野山真言宗管長
総本山金剛峯寺座主
松 長 有 慶
新しい年を迎えて、真言宗教師と檀信徒の方々、ならびに大師信者の皆さまに、お歓び申し上げます。
高野、吉野、熊野の紀伊山地の三霊場を結ぶ参詣道が世界遺産に登録されて今年で七年目を迎えます。
これら三霊場には紀伊半島を覆いつくす広大な森林を背景とする神や仏の宿る幽玄な霊域が、千年の年月を経て保存されてきた歴史と、それを守り育ててきた人びとの厚い信仰心があります。
日本人が大昔から抱いてきた民族固有の神祇信仰では、山川草木、いたる所に神がみがいますと崇敬し、自然を大切に保存してきました。
弘法大師が中国からもたらされ、日本で大成された真言密教の教えでは、人間や動植物だけでなく、あらゆる物にはいのちが宿り、それらの間には、全く差別がない。人間だけではなく、この世に存在するすべてのものは、等しく仏さまになると説いています。
弘法大師と同じ頃、中国から新たな仏教を伝えられた伝教大師が開かれた天台宗でも、山や川、草や木、物質も動植物もすべて仏さまになる性質を具えているという教えが示されています。
私たちは現在の科学技術文明の発展のおかげで、物質的にはきわめて満たされた生活を送る事に慣れてしまっています。そのおかげで地球の資源は枯渇に瀕し、大気は汚染し、異常気象が常態化してしまいました。
今後の生活には危機的な状態が差し迫っているにもかかわらず、私たちは長年にわたり慣れ親しんだ、地球上の有限な資源の大量浪費、限りなき自然破壊をもたらす日常生活を改めようとしません。
私たち地球に住む人類や動植物が末長く生き残るためにも、天地万物に神仏が宿るという教えをともにも
つ真言、天台両宗の平安仏教と、神道に信仰厚い方々が、宗派の垣根を越えて協力し、世界の人々に、あく
なき自然破壊の阻止と、自身の日常生活の見直しを積極的に働きかけてゆかねばらない。そのために皆さま方からの熱のこもったお力添えを、年頭にあたりお願いいたしたいと存じます。
合掌
参与770001-42288
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