広く浅く

秋田市を中心に青森県津軽・動植物・旅行記などをご紹介します。

天守移動後の本丸

2015-10-27 23:46:39 | 津軽のいろいろ
弘前公園の菊と紅葉まつりに続いて、本丸へ。
今年の弘前城のいちばんの話題が、天守の曳き屋。

天守の下の石垣を修理するため、上にある天守がジャマだから曳き屋して動かすもの。
「城が動く!」というPRに乗せられて、天守が動くこと自体が目的かのような錯覚にとらわれてしまうけれど、あくまでも石垣修理が本質。だけど、お城が動くのは貴重なシーンであることには違いない。
弘前駅中央口の正面
弘前駅正面の自動ドアのガラスには「天守曳屋」の文字と絵。
弘前市は工事中の観光客の落ち込みを危惧し、それを逆手に取って積極的に宣伝している。
入場者が倍増したとか、25億円の宣伝効果【30日補足・「報道などで周知された分を、広告を出した場合の広告費に換算して25億円に相当する」という意味らしい。実際に25億儲かったというわけではない。】があったとか、人気は上々の模様。
【11月5日追記】河北新報によれば、
・地切り式から着座式までの「本丸の有料区域入園者は約11万5900人で、前年同期比約5万7900人増とほぼ倍増」(ちなみに満開とずれた今春のさくらまつりは約19万6700人)
・「市が8月1日~10月15日を対象に集計した結果、新聞やテレビ、ウェブサイトで約150回取り上げられ、約25億450万円の広告効果」
・天守の重さは約400トン(以上追記)


訪れた10月17日は、天守の移動が終了したまさにその日。午前中で最後の5.0メートルが動いたそうだが、行った時はもう終わっていた。
後の24日にジャッキダウンされて仮天守台に「着座」。来春からはこの位置で内部も公開される。
元の位置へ曳き屋されるのは6年後2021年の予定。


ネットで弘前を訪れた方々の旅行記を見ていて、「弘前城は工事中だから、見学はパス」と、弘前に来たのに見るのをやめた方を2人ほどお見かけした。
たしかに、天守の中は見られないし、足場があったりして殺風景ではあるけれど、百年に一度という光景を見ないのはもったいないよ。人さまざまでしょうけど。
そんな苦情を受けないためか、券売所では「天守は工事中のため、中はご覧いただけませんのでご了承ください」と念押しされた。
いえいえ。工事を見るために来たのです!(そもそも、大鰐線利用の無料入場なんだから、文句は言えません)

今年の曳き屋の手順は、
8月16日に「地切式」でジャッキアップ。
9月3・4日に22.3メートル移動。
10月7日に時計回りに29度回転。この前後に2度目の移動(36.61メートル?)。
10月16・17日に19.94メートル移動。
結果として3回で計77.62メートル(上記と合計が合わない)移動したらしい。
大雑把には、本丸南東角から北西方向の本丸中央寄りに移動した形。

どうせなら実際に動いているところを見たいものだけど、前後の作業手順が多く、天守が動いている日はわずか。
しかも、仮天守台の上まで移動してしまっては、今後6年はほぼこれと同じ姿を見られるわけだから、もうちょっと早い段階を見ておきたかった。わがままだけど。


今回は、メインルートの天守下の下乗橋からではなく、反対の北側から本丸へ入った。枝垂れ桜が黄葉し始めていて、観光客はこの時期にしては多いか。
こんなところに天守が! 手前の赤い積み木みたいなのの上にレールが敷かれている
たしかに、今までとは違う場所に天守がある。
でも、予想したほど「動いた!」という感慨にもならなかった。
樹木を移植し、通路部分を通って曳き屋されたというが、そんな気があまりしない。

理由は、移動経路が柵で囲われている上、僕自身が本丸の細部を記憶するほど詳しくはないため、その距離感が分からないこと。
本丸が広大なので、80メートル弱の移動距離が短く感じられてしまうといったことだろうか。

仮天守台の上の天守
中央の木の板が、見学者の出入口だったところ。

浮いている
ジャッキダウン前なので、台座から浮いている。今はぴったりくっついていることでしょう。
手前の台みたいのから線が伸びて、天守の上の方につながっている。避雷針の仮の「接地(アース)」かな。

本来の天守台と仮天守台の中間付近には、
曳屋展望デッキ
ウッドデッキ風の展望デッキが設置され、動くようすを少し高い位置から見ることができる。
【28日追記】移動前にも「天守を見下ろす」ことはできなかったので、ほんのちょっと高いだけだけど斬新な視点。
仮天守台方向。右が最後の移動で使ったレール

天守は1811年竣工だそうだから築200年の建物を動かすのは、とても大変だったはず。よくぞ壊れずにそのまま動けたもんだ。
200年前の建築技術か、現代の曳き屋技術か、両方か、それらの確実さのおかげで、見た目にはたやすく動いたようにさえ見えてしまう。

反対側は、
工事現場出入口と奥が本来の天守台

デッキから下りて、現場出入口から覗くと、
前はここに天守がそびえていた

工事看板

下乗橋から本丸を出る。
左が展望デッキ。以前はこの右に天守

下乗橋から見る、この定番風景。
(再掲)
現在は、
こうなっている


(再掲)

あるべきものがなくて物足りない
よく見ると、移動先の天守の屋根がちょこんと見える。

こういう光景を見てしまうと、「動いた!」というのを実感させられる。
地元の父さんと思しき人も、これを見て感嘆のような感慨深いような声を上げていた。

順番が前後しますが、北側の「北の郭」から。
(再掲)

春の内濠ウォークで歩いた場所は、そのまま工事用通路になっている

これからは、石垣の工事は別として、天守自体は6年後まで特に変化がない。
その間に初めて弘前公園を訪れた人にしてみれば、以前の天守の場所を知らないわけだから、移動先の天守を見ても特に感慨は湧かないはず。そこをどうやって盛り立てて集客するかという課題があるのでしょう。

さて、弘前城の天守は、焼失して(前回の菊人形参照)再建する時、幕府に遠慮して櫓として建てたため、小さい。
本丸の内側に位置し、園内に木々が茂ることもあって、他の城のように「城の下の町から天守が見える」ということがないのが、弘前城の特徴でもあった。(弘前市によれば、外からはまったく見えなかったそうだ)

ところが、曳き屋で動いたせいで、市内から天守が見えるようになったそうだ。
本丸は西方向に開けていて岩木山がよく見えるわけで、そこへ移動したから、外からも見えるわけか。
特に、弘前公園から1キロ強南西に位置する禅林街の奥の「禅林広場」からは、県立弘前工業高校の上にはっきりと見えるようになったという。
移動後もライトアップはされているので、弘前の夜景に新たな彩りを添えることになりそう。

弘前の話題は続きます
※石垣修理工事についての続きは、1年以上後のこの記事

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6 コメント

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近況報告 (ガンメタ)
2015-10-28 12:54:30
しばらく入院していたガーラ420が復活しましたが、それと入れ替わるように390が入院となりました(こちらは簡単な修理のようです)また片隅に放置されていたUD783が連日整備工場に入っており、もしかすれば復活に向けて動いているのかもしれません。バスが足りない状況が続いてますから、直せるものは直そうとしているのかもしれません。
783復活? (taic02)
2015-10-28 22:35:28
10月から若干減便されたとはいえ、休日ダイヤ中心の減便ですから、平日は車両に余裕がないのでしょうね。
一方で、小型車やぐるるは余裕がありそうで、もったいない気がしています。
Unknown (秋田市のho)
2015-10-28 23:38:11
管理人 様


弘前城本丸近況レポ、
拝見させて頂きましたです。

誠にありがとうございます。

「単立式天守閣の趣きが増した。」
と言ったところでしょうか?。

私個人的には、
天守閣と御殿との組み合わせが大好きでありますので、
もしも可能でしたら、
御殿風にも見えますような、
武徳殿休憩所を本丸へ移築して頂けましたら、
モアベターでありますです。(^・^)
どういたしまして (taic02)
2015-10-29 20:22:53
空中からでも見ない限り、移動の実際が分かりにくいようにも感じましたが、多少なりとも伝われば何よりです。
「隅っこから真ん中の方へ出てきた」といった感じで、周囲の柵などがなくなれば、堂々とした姿になるでしょうね。来春以降の公開再開に期待です。

明治時代までは、天守にもう1つ櫓がくっついていたみたいですが、そんなまた違った光景も見てみたい気もしますね。

以前の姿を知る人にこそ、動いた弘前城を見てもらいたいです。機会があれば、ご自身で動いた弘前城を体感してみてください。
Google earth (Yokichi)
2016-01-26 09:49:04
こんにちは。
いつも拝見させていただいている、弘前出身の札幌市民です。
弘前城曳家の件です。
Google earthで弘前城見たところ、まさに曳家中の画像で、しかも、大勢で引っ張っているようなイベント最中のような様子が見てとれました。
もちろん、Google mapの航空写真版でも同様です。
既に話題になっているかもしれませんが、是非一度ご確認下さい。
貴重な瞬間 (taic02)
2016-01-26 23:36:09
こんばんは。いつもご覧いただき、ありがとうございます。
そんな貴重なシーンが写っているとは、知りませんでした。
ということは「曳屋ウィーク」が行われた昨年9月20~27日の撮影なのでしょう。狙ったのか、たまたまその日に当たったのか。

ストリートビューではタイムマシン機能で過去の画像も残りますが、航空写真は更新されると前のものは見られなくなるようなので、その点は惜しいですね。
あと、この更新により、以前は薄雲にさえぎられて見えなかった、文京小学校~附属小中学校辺りもクリアに見えるようになりました。文京小は校舎が変わってしまいましたが…

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