広く浅く

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みんなのうた字幕1´・冬の下は冫

2023-02-02 19:55:02 | 文字・書体
久しぶりに、NHK「みんなのうた」、および文字(書体)の話。今回は以前の記事の補足編。敬称略。
みんなのうたの2023年2月・3月の再放送曲の1つが「ポケットの中で」。
名曲ぞろいだと思う、昭和末2・3月初回放送作品の1つ。1986年、うた・斉藤由貴、作詞・銀色夏生、作曲・吉川洋一郎、絵・やなせたかし。
作詞、作曲のおふたりは、みんなのうたでほかの曲も作っており(このコンビではポケット~のみ)、偶然なのか2022年12月・2023年1月に1曲ずつ再放送されている(詳細はおいおい)。

初回放送時は小学校3年生。なんだか分からない歌詞で、絵は暗めで若干怖い感じもしたが、嫌いではなく、記憶に強めに残っていた。
何度か再放送されているそうだが、しっかり見るのは37年ぶり。
改めて見聞きすれば、比喩が多用されている、と言えばいいのか、やはりよく分からない。でも、今なら、なんとなく分かるような分からないような…
アンパンマン作者と同一人物とは思えない絵(アニメーションでなく、静止した絵にズームする動き)は、歌詞に連動しているのかどうか、これも難解。その1つに、水平線の向こうに、帽子をかぶって涙を流す少女の大きな顔が斜めになっている絵があったのを思い出したが、考えてみれば気持ち悪い。そして、秋田県出身の版画家・池田修三っぽさがある。時折出てくる気球のバルーンが、レモンであることは初めて知った。
初めのほうの「桃色の砂糖菓子をかじりながら」の部分が、テープが劣化したように音が不安定になるかのように聞こえたが、伴奏(アナログシンセサイザー?)の音だけで歌はそうなっていないので、意図的にそういう音色にしたのだろう。

そして、その歌詞の字幕。

以前の記事の通り、昭和末期時点では、原則としてモリサワ製「テレビ太ゴシック体BT1」を使っていた。
同社「太ゴB101」をベースにした写真植字機(写植)用の書体で、デジタル化されていない(B101はデジタルフォントとして活躍中)。

BT1は、「北風小僧の寒太郎」で例示したように、「冬」の下の2つの点の向きが右下がりと左上がり、つまり「ン」になっているのが、変わっていると思っていた。
これはBT1だけではなく、1995年頃のWindows3.1&NEC製レーザープリンターで出力した、モリサワ「中ゴシックBBB」でも同じデザインだったようだ。現行のBBBはそうではないので、いったん「ン」でデジタル化されてから、形が改められたことになる。

ポケットの中でにも「冬」が出てくる。37年前に見た時、気付いていたが、

やはり、「ン」。

どうして「ン」なんだろうと、ずっと謎だった。今、ネット検索したら判明。
それは「冬」の部首に、忠実に従ったから。

冬の部首は、なんと「にすい」なのだそう。冷、凍と同じ。
というわけで、「ン」じゃなく「」なのだった!
ちなみに冬の上「夂」は「ふゆがしら」。

現時点(昭和末でも)では「冫」の冬は「変わっている」と思ってしまうが、本来は「冫」であるべきで、この書体はそれを守っていたことになる。
手書きで「冬」を「冫」で書く人など見たことがないが、やはり本来はそうであったのだろう。いつの時代に変わったのだろう。
令和の「令」の一件もあったけれど、元々の文字、学校教育で標準とされる文字、活字体と、違いが出てしまうものだ。
【3月24日追記・太平洋戦争終結を報道する、1945年8月(16日?)の秋田魁新報の見出しの「終」の冬の下が冫だった。】


モリサワの明朝体「リュウミン」など他の書体では、どんな「冬」だったのか気になる。
ここで、テレビ東京「演歌の花道」。BSテレ東で、昔のものを再放送している。その歌詞の字幕が、同時期のみんなのうたのそれに似た雰囲気がある。厳密にはやや小さく、書体は「太ゴB101」のほう。ちなみに、みんなのうた同様、平成に入ると写研の石井太ゴシック体に変わるようだ。
髪がふんわりとした五木ひろしが「さざんかの宿」を歌った回。いつ放送かは記録し忘れたが、1983年か。

↑BT1と異なることが分かりやすいのが「か」や「な」。BT1は線のカーブやつながりをなくした、シンプルなデザイン。

普通の「冬」!
ということは、BBBはデジタル化されても当初は冫だったのに、B101は写植時代から普通の冬だったことになる。なかなか複雑。

みんなのうたと字幕について、続く

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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
コレは90年代まで? (FMEN)
2023-02-03 20:53:44
私が以前調査したこち亀の初期までこれが使われておりました。
冬はありませんが平成の10年辺りまでテレビでは使われていたようです。
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みんなのうたは1989年まで (taic02)
2023-02-03 22:38:24
以前取り上げた1990年の「東の島にコブタがいた」が石井ゴシック体だったように、1989年度の途中から、全面的に写研書体に変更されています。
おそらく、字幕作成システムが更新されたのではないでしょうか。ひとくちに写植といっても、出力方式など複数あったようで、この時期はそれらが並行して使われていたようです。局や番組によっては、旧式のままだったのではないでしょうか。
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