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広く浅く

秋田市を中心に青森県津軽・動植物・旅行記などをご紹介します。

奥津軽いまべつ

2013-04-18 23:17:08 | 津軽のいろいろ
この続きで、津軽半島の青森県東津軽郡今別町にある、2つの鉄道駅と道の駅があり、新幹線の駅も造られている場所の訪問記。
雪が残っているのと、工事が行われているのとで、本来の駅周辺の姿ははっきりと分からないが、「何もない」「誰もいない」のはたしか。

駅の西側、家がわずかにある県道14号線へ行ってみる。
駅(道の駅正面)からは200メートルほど。緩い上り坂で、途中に今別川に架かる「きくのさとはし」という橋がある。【19日訂正】川を底とした谷状の地形のようで、駅から橋へ向かうと下り坂でした。
橋付近から線路・駅のほうを見る。雪しかない…
県道は車はほんの時たましか通らないが、歩行者スペースはないに等しく、緩くカーブしていて見通しも利かないので、うろうろしたくない。
県道の案内板
案内標識は、全国共通の道の駅のものと、古め(開業時に設置されたか)の「津軽海峡線 津軽今別駅」があった。
1日上下2本ずつしか停まらない津軽今別駅の案内はあるのに、津軽今別駅よりも道の駅よりも古く(1958年)から存在する「津軽線 津軽二股駅」の案内はないのか。

道端にごみ置き場があった。住宅用サッシをはめ込んだ手作りっぽい小屋なのだが、そこにびっくりする表示があった。
「猿が来ているから戸締めて下さい」
カラスとかネコじゃなくて、サルが出没するとは!
でも、サルだったらこんな窓、簡単に開けられそう。

「きくのさとはし」の下流(北)側にも、2本の橋が架かっている。1本は現地では気付かず地図で知った。車が通れない小さな橋で、雪に埋もれていたのか。
もう1本は、県道から駅北側の踏切で津軽線を越えて、東側へつながる道の橋で、「だいにうまながればし」とあった。こういう表示は「はし」と濁らないのが一般的なのに「ばし」表記が珍しい。「だいいち~」もあるのだろうか。

さっきから、海峡線の工事現場から「上り通過10分前」みたいな放送が流れているのが聞こえていた。運行中の鉄道の近くで行う工事では、通過列車には充分注意しないといけない。
やがて、けたたましい電子音が鳴り響き、
新青森行き「スーパー白鳥」が通過

「奥津軽農村公園」
道の駅の裏側は公園で、遊具や栗園があるようだが、ここも雪の中。

では、道の駅の中へ入ってみる。
実は、あまりに人気(ひとけ)がなくて、入るのを躊躇していたのです。
しあわせ駅長はカモメ?
道の駅、2つの鉄道駅、そして新幹線の駅と、4つの駅があることにちなんで「四あわせ駅長」。
建設中の新幹線の駅は「(仮称)奥津軽」という駅名になることで計画が進んでいた(この時点では)。

上の写真左側に紙が張ってあるが、冬期(11月~3月)の開館時間は9時から16時まで(夏期は9時から18時のようだ)。食堂は11時から15時で、土日はお休み。
この交通量と人の少なさからすれば、そういう営業時間になってしまうのも納得。逆に言えば、平日の昼間はお客が多いってことだろうか。失礼ながらちょっと信じられない。
それにしてもこの道の駅は小さい。小さいというのは、見慣れた青森や秋田の交通量が多い道路(1ケタ番号国道など)の道の駅と比較して。でも、トイレの数や情報提供の基準を満たせば道の駅になるため、全国的には小さい道の駅も珍しくはない。

道の駅の玄関のドアとドアの間(いわゆる風除室)が、自販機スペースと鉄道の駅の待合室代わりになっているようだ。(ということは道の駅の営業時間外もここまでは立ち入れるのかな?)
しっかりした造りで風雪は防げるだろうし、道の駅営業時間内は道の駅の中に入って待てばいいのだから、この手の無人駅の待合室としては、立派なもの。
 2つの時刻表と運賃表
時刻表と運賃表は2駅分が掲示されている。当然といえば当然だが、奇妙な光景。
津軽二股駅は、五能線の無人駅にもあるような、JR東日本共通デザイン(?)のもの。津軽今別駅のは、いかにもワープロソフトで作りましたという感じ。
運賃は、蟹田までは津軽二股から320円、津軽今別からは350円。青森まではそれぞれ950円と850円。蟹田までなら津軽二股のほうが安く、青森までは津軽今別のほうが安く、逆になっているのがおもしろい。運賃体系が異なるJR北海道と東日本をまたがって利用するかしないかが原因だろう。
※ただし、津軽今別駅に停車するのは特急列車のみ。津軽今別-蟹田間だけの乗車なら特急料金がいらない特例が適用されるが、そのまま青森まで乗れば特急料金が発生する。(蟹田で降りて普通列車に乗り換えないといけない)

道の駅の中。大漁旗が並ぶ
それなりに土産物や展示物、パンフレット類はあるものの、節電のため消灯されていて営業していないかのよう。(閉館時刻まであと1時間を切ってはいたが)
店というか案内の人は、奥に引っ込んでいるらしくいない。営業していない食堂スペースでテレビが点いていて、それを見ている人(何者?)と、同じ列車で降りた人がいるだけ。

写真と模型
青函トンネルを抜けた特急「はつかり」の写真と、今別町周辺をモチーフにした鉄道模型があった。
津軽線で2つ先で海沿いの「今別」駅辺りが町の中心のようだ。

トイレを拝借すると、洗面台にこんな掲示が、
ずいぶん派手なデザインだけど、「レバーはゆっくり」の下の行
3行目「「いきもき」に回せば「はちけ」ますよ?」の意味が分からなかった。津軽弁のようだが…

「いきもき」は「一気に」とか「せっかち」、「はちけ(る)」は「弾ける」といったところか。つまり「(蛇口を)勢いよく回せば、(水が)飛び散りますよ」ということのようだ。

奥津軽(仮称)駅イメージ図
新幹線の駅の完成予想図があった。北西側から見たもの。
今の道の駅らしきものは残っていて、そこに高い建物がつながって、さらに津軽線の上を渡って新幹線(現・海峡線)に至る渡り廊下状の通路ができるらしい。そして、道の駅に接して(今、公園がある所?)、平べったくて大きな建物ができるのか。
何もなくサルが出没するような今の姿からすれば、想像もつかない。
何もない所に新幹線の駅ができた例はいくつもあるし、同じ青森県の七戸十和田駅のように、できてしまえばなんとかなるのだとは思うけれど。
「2015年開業予定」の旗がちぎれてはためいていた
上記の通り、ここにできる新幹線駅は「奥津軽(仮称)」ということになっていた。
訪れた次の週(4月2日)、今別町長が青森県知事を訪ねて駅名案を報告したことが報道された。住民アンケートを踏まえ、周辺自治体の了解を得て、今後JR北海道に要望するという。
その駅名は、「奥津軽いまべつ」だそうです。
長ったらしいというか道の駅みたいな駅名だ。【19日追記】「奥津軽」という地域の呼び名もさほど一般的ではないように思われ、やや違和感を感じる。イメージとしては分からなくもないけど。

考えてみれば、海峡線の在来線と北海道新幹線は同じ線路を走る。新幹線開業後は、ここに「奥津軽いまべつ」と「津軽今別」が両方同じ場所に存在することになるのだろうか。そして津軽線の「津軽二股」はそのまま残るのだろうか。
この駅(区間)の場合、津軽線は並行在来線とは見なされないようで、新幹線開業後もJR東日本が運行を続けることになるらしい。となると、「津軽二股」駅はそのままで蟹田方面とを結ぶ列車の本数が増えるのだろうか。

それから、ここは青森県や津軽地方の中における位置としては、観光拠点になり得る可能性を秘めているかもしれない。
道の駅の掲示によれば、ここから車で金木の斜陽館まで40キロ1時間、竜飛崎まで30キロ45分(ちなみに青森市まで46キロ1時間15分)とのこと。アクセスとしては悪くない。竜飛岬や十三湖など、今まで公共交通でのアクセスが良くなったエリアが、ここからはそう遠くない。新幹線と接続する二次交通があれば、集客が見込めそう。

わずか53分間の滞在だったが、異空間へ迷い込んだような、時間を持て余したようなひとときだった。
【19日追記】本来の定義とは違うだろうけど、「秘境駅」の一種にさえ思えた。谷間に位置し他と隔離された立地なので。
津軽二股駅ホームから、海峡線の工事現場を望む。これが駅になるの?

行きと同じ車両・乗務員で上り列車が到着
いっしょに降りたもう1人の人も同じ列車に乗った。
駅を発車してすぐ、
海峡線津軽今別駅に下り特急「白鳥」が停車。1日2本のうちの1本
時刻表では、白鳥が15時36分着・発、乗っている津軽線上り普通が15時36分着・37分発なので、特急が遅れていた。

海峡線と合流する新中小国信号場では、巨大な「エコパワー金太郎」ことEH500形電気機関車がひく下り貨物列車とすれ違い。
青函トンネルを目指す

車内の乗客は、行きよりもまばら。
この列車は、蟹田が終点ではない。1日1本ある、青森まで直通する列車。乗り換えがないのは楽だが、1両で蟹田から青森までを進むことになる。

蟹田駅からは、ぞろぞろと乗り込んできて、ボックスがおおむね埋まった。北海道から来た、青春18きっぷや北海道&東日本パスの利用者のようだ。
蟹田から先は架線下を進む単行ディーゼルカーとなる。速度はそれなりだが、途中の郷沢駅で7分、中沢駅で12分も停まる。
青森の1つ手前、油川駅からは高校生などが乗ってきてデッキ付近に立つ人も出て、青森に到着した。
この日は土曜だったから良かったが、高校の下校時間帯と重なる平日は、1両編成ではきついような気がしたが、大丈夫だろうか。こういう列車こそ、収容力のある701系を!
あと、ボックスシートといっても、ほぼ垂直で固いキハ40系に1時間以上乗るのは、さほど楽じゃない。個人的にはロングシートでも701系のほうが座りやすいと思った。
津軽二股-秋田間の運賃は3890円。今回は6000円で乗り放題の「東北ローカル線パス」を使った(さらに浅虫温泉などにも行った)ので、だいぶ得した。

青森県にも、様々な地形や風土の土地があるものだと実感した4時間の旅だった。
せっかくなら三厩まで乗り通してみたいし、反対の下北半島を進む大湊線なんかもいつか乗ってみたい。


【19日追記】鉄道と道路の両方を走行できる「DMV(デュアル・モード・ビークル)」を使って、津軽鉄道沿線と奥津軽いまべつ駅を結ぶ(津軽鉄道の終点・津軽中里駅から奥津軽いまべつまで道路を走行)構想があるそうだ。実現できればおもしろいけど…
【2014年6月27日追記】2014年6月に、津軽鉄道がDMV運行を断念したことが、東奥日報による同社社長への取材で分かった。既存車両と共存することは踏切などのシステム上不可能で、DMV単独で運行するには採算が取れないため。
【2014年11月13日追記】2014年11月13日付朝日新聞秋田版の東北6県共通記事「みちのく経済」の「地方鉄道の新幹線対策」より。岩手や青森の私鉄・3セク鉄道の、北海道新幹線・新函館北斗開業に向けた対応の中で、DMV導入について津軽鉄道社長の話が出ていた。
「JR北が実用化を見送り、開業時の導入は断念した。だが、澤田社長は「「導入そのものは諦めていない」と話す。」
そうで、東奥日報とは少し違った話になっている。


【10月5日追記】2013年10月3日の東奥日報サイトから、その後の動き。
10月から現在のホームを廃止し、その外側に新たに線路を引いて作った仮設ホームを使うことになった。現ホームは長さ120メートル、仮設は135メートル。使用開始は上りが18日、下りが25日から。
新幹線開業後は、仮設ホームのレール部分はそのまま貨物列車用として使う。
また、新幹線開業時に津軽今別駅を廃止する計画とのこと。代わりに同じ場所に「奥津軽(仮称)」を新設するということなんだろう。※東奥日報のこの記事では駅名を「奥津軽いまべつ」とはしていない。

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5 コメント

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失礼な話 (FMEN)
2013-04-19 00:58:05
おっ、キンタロー。
青函は走るんですね。

どうもこの写真見る限り、この場所にわざわざ駅要るんでしょうか…
失礼な話ただの田舎にしか見えないんですが。
東北新幹線は某剛腕が乱立させた岩手を除けば名取、二本松、須賀川などあってもおかしくない場所にないのに、と。
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Unknown (Unknown)
2013-04-19 09:48:32
ここに新幹線駅作っても果たして需要があるのでしょうか?
できたら多分、東北地方の新幹線駅で一番利用客が少ない駅になる予感が…
確か今はいわて沼宮内が東北地方で一番利用客の少ない駅だったはず…
返信する
コメントありがとうございます (taic02)
2013-04-19 23:25:49
>FMENさん
ED79が老朽化したのと、東北本線から直通運転して効率化する目的で、金太郎さんが活躍しています。

沿線人口も少ない所に、だいぶ立派な駅になりそうですが、(非常時の停車用などに)もっと簡易なものにするとかできたのかもしれませんね。
強いて前向きにとらえれば、津軽線がJR経営のまま残ること、観光地のアクセスに使えるといったことでしょうけど…

>Unknownさん
開業後はどういうダイヤになり、どんな二次交通網ができるのかは未定ですが、人口自体多くなく、今は列車が2本しか停まらない所に、立派な駅を造っても…という気はします。

いわて沼宮内や安中榛名、七戸十和田、そして奥津軽いまべつ。せっかく造ってしまった駅を有効に使ってほしいですが…
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Unknown (聞茶)
2013-04-20 14:04:39
奥津軽は単純に需要の問題というよりは、新幹線におけるJR北海道とJR東日本の境界を確定させると言った意味合いが強いのではないかと。
それに青函トンネルの両端にはいざと言う時に何らかの形で旅客の乗降が出来る場所を確保しておく必要があるでしょうし。
ただ、外ヶ浜地域で中心的な集落のある蟹田からも遠いのはネックでしょうね。
個人的には沿線人口そのものよりも、広域交通に恵まれなかった津軽半島北端に
高速鉄道の効果を波及させるという意義の方が重要ではないかと思っていますが。
返信する
奥津軽駅は (taic02)
2013-04-21 00:21:30
4年前に経験したアクシデントのようなこともあるでしょうし、貨物列車が退避する場所ともなるようで、列車運行上はいろいろと必要な場所ではありそうです。

新幹線駅ができることで、龍飛などは時間的にもイメージ的にも近くなりそうですね。
十和田湖への玄関口として命名された七戸十和田駅が、開業後に十和田湖観光の拠点になっているかといえば、必ずしもそうでもないでしょうし、停車本数が少なくて不便です。
奥津軽も停車本数は多くはないでしょうが、二次交通が充実してくれれば、期待できそうではあります。
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