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興津のイベント

2012-03-03 21:16:18 | 旅行記
※旅行記の前回の記事はこちら
静岡市の西端【2023年4月8日訂正】静岡市の東端が「清水区」。かつての清水市。
由比町・蒲原町が合併(清水区に編入)する5年ほど前まで、清水市の西端【2023年4月8日訂正】清水市の東端だったのが「興津(おきつ)」地区。
さった峠と港町清水(江尻)の間にある旧東海道の宿場町の面影を残す町。かつては「清見潟」という景勝地、避寒地でもあったそうだが、埋め立てられて現在はない。1961年に清水市に合併している。JRで清水駅から1駅のところに興津駅がある。

興津駅の裏手に、国のカンキツ類の試験研究機関があり、以前何度か外から覗いたことがあった。※2008年秋2009年春
ミカン好き、そしてカンキツ類が育たない寒い土地に住む者として、とても魅力的な場所。

その試験場が年に1度、2月に1日だけ一般公開されることを知った。それを見るのが、今回の旅行の大きな目的だった。


試験研究機関の正式名称は長ったらしくて「独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構果樹研究所カンキツ研究興津拠点」。
現在の名称・体制になったのは2006年から。独立行政法人化(農水省管轄)されたのは2001年で、それ以前は農林水産省直轄の「果樹試験場カンキツ部(の興津支場?)」だった。
現在は独立行政法人全体の本部も、果樹研究所の本所もつくば市にあり、興津は出先機関扱い。
しかし、興津の試験研究機関としての歴史は古く、開設は1902(明治35年)6月(農商務省農事試験場園芸部)までさかのぼり、この時点を果樹研究所の創設としている。
現在流通しているカンキツ類の中には、ミカンの「興津早生」やミカンとオレンジの雑種の「清見」など興津で作られたものもあるし、さらにそれらが親となった品種(デコポン、せとかなど)も多い。
果樹試験場の他の試験地は、移転している所も多い(「ふじ」を作ったリンゴ部門は青森県藤崎町→盛岡市)が、興津は同じ場所で一貫して我が国の果樹栽培に貢献し続けていると言えよう。

長ったらしい独立行政法人の名称は「農研機構」と略するのが公式に認められているようだ(公式サイトのロゴがそうなっている)。
「果樹研究所カンキツ研究興津拠点」の名前は、少なくとも地元の方々などは旧称から「試験場」などと呼ばれていると思われ、正式名称を言っても通用しないかもしれない。以下、記事中では「試験場」とします。

余談だけど、農研機構の組織は、秋田県大仙市にもある。
元は国の「東北農業試験場」で、現在は「東北農業研究センター」。略称「東北農研」。(以前は別の独立行政法人で、2006年に農研機構に統合)
大曲のは「大仙研究拠点」といい、平成の大合併で誕生した市名を冠している。
一方、元は違う組織とはいえ、興津のほうは昭和の大合併のままの名称で、ちぐはぐ。
なお、大仙研究拠点は米や大豆を研究していて、例年8月下旬の土曜日に公開される。



興津の試験場の公開日には、例年、「興津宿寒ざくらまつり」というイベントも同時開催される。過去数年の開催日を調べてみると、2月の第1か第2土曜日。

今年はいつかと、昨年末あたりからいろいろネットで調べてみたが、簡単には分からなかった。
正月明け頃、Yahooなどのイベント告知サイト(個人などが情報をアップするもの)に、試験場公開が2月5日であるという情報が出た。
また、JR東海のウォーキングイベント「さわやかウォーキング」(JR東日本の「駅からハイキング」に相当)でも、2月5日に興津周辺のイベントが告知された。

ところが、その2月5日は日曜日。
過去に日曜日に開催されたことはないようだし、主催者発表ではないのでにわかには信じられなかった。

その後、1月10日過ぎに、農研機構果樹研究所のサイトに2月5日に公開される告知が出て、確実なものとなった。

その後、静岡市清水区役所のサイトや静岡新聞・静岡放送共同のイベント情報サイトや、寒ざくらまつりの主催者の静岡市清水商工会のサイトなどに告知が出た。
しかし、どちらか片方のイベントにしか言及していなかったり、静岡市役所(本庁)のサイトの市全体のイベント情報には掲載されなかったりと、知らない人が正確な情報を収集するのは難しかったと思われる。
それに、名称も長ったらしい施設名や「カンキツ」「興津”宿”」「寒”ざくら”」など、混同されやすい表記を使っていて、検索しづらい。
秋田市の「あらや大川散歩道雪まつり」の告知と似た状況に感じてしまった。
地元の皆さん向けで、毎年恒例のイベントなので、大々的に告知しなくてもいいのかもしれないが、やり方次第で新たなお客さんも来るはずだと思いますが。


さて、当日。清水駅前のホテルに泊まっていたが、薄曇りで富士山は霞んで輪郭が見える程度。

試験場公開も寒ざくらまつりも、9時から15時30分まで。早いほうがいいだろうと9時半前には興津駅に到着。
興津駅3番線から東京方向。線路のすぐ左のフェンスの向こうが試験場の敷地
興津駅の北側に試験場があるが、駅出口はない。南側の出口を出て踏切を渡らないとならない。

駅前の100メートルほど先を国道1号線が走っていて、さらにその100メートル先が1号線の静清バイパスと海。海に近いけれど埋め立てられたりバイパスがあったりして、きれいな海が望めるわけではない。

「果樹試験場」は駅を出て左へ
果樹試験場までの道のりは知っている。なんとなくまだ早いような気がして、先に寒ざくらまつりの会場へ。
会場は「興津生涯学習交流館 東側広場」だそうだが、そっち方面はよく分からない。
駅からまっすぐ進めば「寒桜まつり会場」(「桜」表記はスペースの都合でしょう)
海へ向かって進み1号線を渡ると、バイパスの手前で細い道と交わる。
この道は以前通ったことがあったが、そこを右へ曲がれ(清水駅方向へ)という。
こんな住宅地の一角みたいなところでおまつりをやるのかといぶかしく思いながら400メートル。
ヤシの木が並ぶ公園(手前の「園」文字、四角の中に「エン」と縦に書いている!)
公園の隣に広場があり、
大行列!
ところで、静岡で早咲きの桜といえば、伊豆の川津桜が有名だけど、興津と早咲きの桜には、こんな関係がある。
日本から贈られてワシントンのポトマック河畔に桜が植えられたのは有名な話。ちょうど100年前の1912年のこと。
その桜(の一部?)は、興津の試験場で育成されたのだそうだ。
その時、アメリカへ送られずに余った苗木が、試験場内に植えられた。つまり、ポトマック河畔の桜の「兄弟」が興津にあるということになる。

品種名としては「薄寒桜」(寒桜としては花色が薄い)で、これを指して「興津寒ざくら」などと呼んでいるようだ。
現在は、興津地域の各所に同じ桜が植えられており、まつりの会場にも植えられているのだが、今年はまだつぼみだった。

そんなわけで興津と寒ざくらの歴史は古いけれど、「興津宿寒ざくらまつり」は今年で15回目で、まだ新しいイベントのようだ。
上記の通り、寒ざくらまつりを主催するのは「静岡市清水商工会」。
静岡市には「静岡商工会議所」があるが、興津地区は管轄外で別に商工会がある。(なお、蒲原や由比にも別に商工会がある)秋田市でも、雄和や河辺は商工会管轄なのでそれと似たような状況。

上の写真の行列はおしること餅の無料配布のようだった。
ほかにも、テントが並んで地元のお菓子などが販売されたり、ステージで郷土芸能などが披露され、とても賑わっていた。
花はまだ咲いてないから「花より団子」なわけで、そうでなくても花見より地元振興イベントの意味合いが強そうだったが、とにかく朝早くからこれだけ人が集まるのにびっくり。
JRのウォーキングのゴール地点にもなっていたようだが、由比駅での出発受け付けが8時半からなので、この時点ではまだ到着した人はいないはず。この後、さらに賑わったことだろう。

会場隣にきれいな建物があった。寒ざくらまつり関係者の控え室やトイレとして使われていたようだ。
静岡市興津生涯学習交流館
2004年にできたもので、清水興津図書館を併設。
覗いた感じとしては、秋田市の西部と北部の市民サービスセンターに似ていた。(行政窓口機能はないのかな)
「津波ひなんビル」
「津波発生時は2~3階に避難してください」とあるが、これは2階建てで、3階は塔みたいな部分だけなんじゃ?
それよりも、秋田市北部市民サービスセンターもまったく同じことなのだが、ここは海からとても近い場所。万一、大きな津波が来たら、2階だろうが3階だろうが、本当に大丈夫なの? と不安に感じてしまう。

「日本のまん中に おきつ がいた イメージキャラクター“あゆむ”」
検索してもよく分からないが、興津のキャラクターらしい。
興津川では、東日本でいちばん早く鮎漁が解禁になるそうなので、その関係だろうか。

あまりに人が多いのと、今、お菓子などを買っても荷物になるので、早々に退散。
細い道を通らなくても、交流館からまっすぐ国道1号線に出ることもでき、興津駅までの距離は同じ。
国道沿いのお店などでも出店やイベントをやっていたし、細い道は歩道がないのに車がけっこう通っていたので、国道を通ったほうがいいかもしれない。
なお、国道を興津駅と反対方向に進めば、マックスバリュ、清見寺、清見潟公園などがある。国道は清水駅からの路線バスが通る。

興津駅に戻って、試験場へ。
一般公開の出入り口は2か所あったようだ。興津駅のすぐ裏の正門と200メートル北東の角の門。
どちらも門のそばに踏切があるが、道幅は狭く、特に北東側は車が多く通る。
この日は、一般公開とJRのウォーキングに対応するため、踏切に誘導スタッフが何人も張り付いていた。警備員の服装の人はJRからの派遣だろうか。オレンジ色の「果樹研究所」のジャンパーを着た人もいて、試験場としてもかなり気合が入った行事のようだ。
駅からすぐのJAのスーパー「ふれっぴー」の角を曲がった踏切
踏切の先が試験場の門で、まっすぐ並木が続いている。背後には山。

踏切を渡って、試験場内へ足を踏み入れる。門にもオレンジジャンパーのスタッフがいて迎えてくれた。
並木道を進む
この木は、「モミジバスズカケ」。街路樹の「プラタナス」としておなじみの木。
プラタナスというのは、スズカケノキ科スズカケノキ属の植物の総称であり、固有の種名ではないそうだ。(「クリスマスローズ」と同じか)
日本でプラタナスと呼ばれる木はこの「モミジバスズカケ」が多い。モミジバスズカケは、スズカケノキ(ヨーロッパ種)とアメリカスズカケノキ(アメリカ種)の雑種。

試験場のモミジバスズカケは1902年に植えられたもので、試験場の開設当時を知っていることになるが、それだけでなく日本で最初に植えられたプラタナス
日本で植えられているプラタナスは、すべてここの木の子孫とのこと。
また、東大のイチョウ、北大のポプラと共に、明治時代に作られた「日本三大並木」だそう。


並木の先には、建物があり、その前が受付。
といっても、簡単な案内地図を渡されただけ。
順路に従って、2階建ての研修棟という建物に入る。小さい建物で、通路が狭い。見学者がけっこう多くて、やや混雑。
研修棟では、技術相談コーナーで農家らしき方が熱心に説明を受けていたり、研究内容のパネル展示などもあったけれど、噂に聞いていて楽しみにしており、かつ実際見て圧巻だったのが、「カンキツの展示」。
「珍しいカンキツ、新しいカンキツをじっくりご覧下さい。」とのことで、
 (再掲)
大きな机の上に一面にカンキツ類の果実が散りばめられて(ぶちまけられて?)いた!
これには、老若男女誰もが目を奪われていた。
しかも、
「持って、傷つけて香りをかいでね」
なんと手を触れたり香りを確かめることも可能。
ただし、研究用の果実であり、食べたり持ち出したりはできません。

並べられたカンキツ類は大きさも形も色もさまざま。リンゴではここまで個性的ではない。
何といっても色がきれい。
光沢のある暖色が目に鮮やかで、暖かくて明るい気分になる
いつの頃からか、こんな色合いを総称して「ビタミンカラー」というらしい。これを見て、そう呼ぶのもなるほどなと、感覚としては納得。
β-クリプトキサンチンを始めとするカロテノイド系色素によるものであり、種によって組成や量が異なることによるものなわけであるが、植物の進化の不思議さを感じる。

大きさもさまざま。
ピンポン玉くらいから、ヘルメットみたいなのまで
巨大なのは、ザボン(ブンタン)の一種らしい。
2.8キロ!

形もさまざま。
洋梨みたいないびつな形だったりゴツゴツだったり

でっかくてゴツゴツなのは、
「シシユズ(獅子柚子)」。ユズと同じように使えるらしい
上の写真右下に写っている、シュウマイみたいな筋の入った形の黄色のは「キクダイダイ(菊橙)」という種だと思われる。次回、紹介するかもしれません。

一部だけだけど種名を書いたシールが貼られていたし、試験場のスタッフがそばにいて聞けば説明してくれていた。

「紅まどか」
果樹研究所のもう1つの研究拠点である、長崎県にある口之津の試験場で20年ほど前に作られたブンタンの品種。重さは1キロ弱くらいとのこと。
ピンクグレープフルーツほどではないけど果肉が少し赤いから「紅まどか」なんでしょうね。白いところ(中果皮、アルベド)がずいぶん分厚い。
【4日追記】果樹研究所の公式サイトの「一押し旬の話題」というページで、紅まどかが1日付でアップされていた。
「糖度が高く、苦みが少ないので、食味は非常に良い」「長崎県でわずかに作られているだけ」「入手できた人は幸運ですね」とのこと。(興津では研究用にごくごくわずかに栽培しているのだと思われる)

こちらは、
はかりに乗っていた巨大なのと同じもの(たぶん)
これも果肉が赤くて、やや中果皮が厚い。で、種がすごく多い。
どんな味がするんだろう?

お言葉に甘えて表面を傷つけて香りをかいでみた。
どれもカンキツ類のいい香りはするのだが、たくさんかいでいると、よく分からなくなってしまった。

次回は、屋外の様子を紹介します。※次の記事は、旅行記ではなく動物・植物カテゴリーです。
※旅行記カテゴリーとしての続きはこちら

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3 コメント

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Unknown (Unknown)
2023-04-08 12:09:13
こんにちは。過去記事もいろいろと楽しく、興味深く読ませていただいております。
その中で、この記事に関して気づいたのですが…
>静岡市の西端が「清水区」。
>清水市の西端だったのが「興津(おきつ)」地区。
とあるのは、いずれも“東端”ですね。単純なケアレスミスかとは思いますが、とりあえずご報告まで。
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Unknown (タロー犬)
2023-04-08 12:11:49
名前を入れ忘れていました。清水市育ちの弘大OB、現在は焼津市在住のタロー犬です。
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こんばんは (taic02)
2023-04-08 19:50:12
さかのぼって見ていただき、ありがとうございます。
ご指摘ありがとうございます。東と西、時には右と左さえも取り違えて文章にしてしまうことがあり、恐縮です。また何かあれば、お知らせ願います。
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