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秋田市を中心に青森県津軽・動植物・旅行記などをご紹介します。

津軽と秋田市のバス

2010-05-28 18:43:02 | 秋田のいろいろ
「週刊アキタ」という週刊紙(“誌”じゃなくてタブロイド判の“紙”)がある(発行元:週刊秋田社)。その5月14日号で、青森のバスが褒められ、秋田のバスが…というお話です。
「記者の眼」という半ページほどのコーナーに「「秋田市」と「青森十二湖」の路線バス/バス運転手のサービスの違い/温かな接客でリピーターを
という見出しで、記者が旅先の青森県津軽地方と帰宅途上の秋田市内の路線バスでの経験を綴っていた。

五能線から乗り換えた十二湖方面行きの路線バスでは、不慣れな観光客への適切な声掛け、肉声によるオリジナルの観光案内、乗客から拍手が湧いた丁寧な最後の挨拶など、運転士(行き帰りで別人)によるお客への熱意を感じる温かな対応があり、旅を楽しくしてくれた。
一方、秋田駅前から乗った路線バスでは、走行中に立ったら運転士に怒られ、しかも路線を間違えてしまったが冷たく対応された。青森とは対照的な接客で「客に乗ってほしい」という気持ちが感じられなかった。

といった趣旨の記事だった。

記事中にバス会社名は出ていないが場所や路線から判断すると、青森は弘前市に本社のある「弘南バス」(※「弘南鉄道」とはルーツは同じだが別会社)、そして秋田市のバスは秋田市に本社のある企業に間違いない。両社とも、当ブログではおなじみのバス会社だ。
まずは弘南バス。
弘前さくらまつりの臨時バス
十二湖周辺を走るのは、弘南バス「十二湖線」。五能線「リゾートしらかみ」に接続する観光的路線的な性格の路線で、鰺ヶ沢営業所が担当している。
僕は行ったことも乗ったこともないが、旅行された方のブログなどで「運転士のガイドが楽しくてよかった」という趣旨の複数の記述を目にしている。また、多客時には続行便を出すなど、臨機応変な対応をしているようだ。
こうしたことから、弘南バスが十二湖のイメージアップに貢献しているのは間違いないようだ。
【10月28日追記】10月下旬の朝日新聞社会面の連載で、バス会社名は出ていなかったが、この運転士の1人に焦点を当てていた。上京後、故郷に戻って就職・退職、60歳を過ぎてからバスの運転士になったといったような経歴の方だそうだ。

僕の経験上、弘前市内を走る弘南バスでも、観光客や高齢者の乗客に対し、丁寧に接している運転士を見るのは珍しくない。昔よりも接客レベルは向上しているように感じる。
先日、弘前市内の路線バスに乗った際、
「富田大通り経由 安原団地行き」
というバスが来た。(放送では「マックスバリュ安原店行き」と言っていた)
弘前市内の地理を知っていれば容易にルートは想像できる(小栗山線のルートで松原を左折)が、それ以前にこんな路線があったとは知らなかった(安原行きは東側の松森町経由しかないと思っていた)。1日2便だけ弘前駅発が運行されているようだ。(駅を通らない藤代営業所発着便も数本ある)
他のお客さん(僕以外は全員、地元の奥様ばかりに見えた)もそうだったらしく、乗車時に運転士に「松原は通りますか?」「実業高校の前、通る?」と何人かが聞いていた。珍しい路線とはいえ、ドア横に「富田大通り」「松原」などと出ているからそれを見れば分かりそうなものだが、運転士は嫌な顔をせず「はい。通りますよ」と答えていて、丁寧な接客が印象に残った。

会社の方針・対応にも共感できるし、秋田市では手をこまねいてやらない市街地循環バスを、商工会議所の資金援助を断って10年以上前から運行しているのも素晴らしいこと。
個人的には、もうちょっと工夫や努力してほしい点もなくはないが、地方のバス会社としては、(少なくとも秋田の会社よりは)がんばっているように感じる。



今度は秋田のバス。
記事を読む限り、記者は秋田市の路線バスに不慣れな方のようで、文中でも「中央高校“前”」と坂の上の旧国道にある「中央高校“入口”」の停留所を混同していると見受けられるし、そもそも行き先表示や車内放送を確かめればこんなことにはならなかっただろう。(秋田市をまったく知らない人ならともかく、乗り慣れないとはいえ住民なら見聞きすれば分かるはず)
それに、もう乗り換えができないような先のバス停まで来てから、今さら「通らないの?」と運転士に聞いたようだが、聞かれた運転士の方が困る。「通りません」としか答えられないよ。もっと早くに気付けばよかったのに…
※2016年には、中央高校入口の名称が変わった

また、この記事は弘南バスに2回、秋田のバスに1回だけ乗った経験に基づいて述べているが、それ以上に両社のバスを利用している僕から言わせてもらえば、秋田にだって親切な運転士はたくさんいるし、弘南バスにもイマイチの運転士もいないわけではない。
とはいえ、記事の指摘はごもっとも。同じことを言うにしても言い方というものがあるし、以前からこの会社には「お客」の存在があまり見えていないように感じてならない。それが運転士への社員教育に反映されてしまったのだと思うし、客離れの遠因にもなりかねない。

走行中に立ち歩いて怒られたとのことだが、万が一、バス車内で乗客が転倒してケガなどすれば、運転士の過失が問われる。
全国各地のバス会社が数年前から貼っているシール
そんなこともあってか、おそらく業界団体が主導して各バス会社は、特に最近、「着席してから発車する」ことを徹底しており、乗客には「両替は停車中(または降車時)に」「降車時は完全に停車してから立つ」ことを座席前のシールやポスター、放送などで呼びかけている。(だから、お客としても運転士が余計な心配をせずに運転に集中できるように、走行中の着席には協力しなければならない)
その一環として、走行中に立った客に対しては、直接声を掛ける必要もあるだろう。でも、それをするのなら、鳥取の循環バスのように、穏やかな口調で着席を促すのならいい。
秋田でたまにいるのは、普段は一言も発しないくせいに、客が立ち歩いた時だけ、「座ってください!」などと、しかも強い口調でしゃべる運転士(最近は乗り合わせていなかったが)。今回もそのクチだったのだろう。

路線バスで最重要なのは、安全運行であり、次はダイヤの正確さであろう。サービスは3番目になるものであるとは思うが、今や無視してはいけない重要事項だと思う。さしてお金がかかるわけでもあるまいし。
バスを利用しない多くの住民、地方公共交通を切り捨てようとする(ように思えてしまう)行政(特に国)など、厳しい状況なのは分かるが、特に秋田市のバス会社には一層の企業努力をお願いしたい。


ところで、そもそも、今回、記者が乗り間違えた原因の1つが、車両の「行き先表示」だと思う。
おそらく「新国道 土崎・飯島」という表示の路線に乗るべきところ、「県庁 寺内 土崎・飯島」に乗ってしまったのだろう。しかもその車両はLED式の行き先表示器で、記者は後部の表示しか見ていなかったはず。(←完全に憶測です)なぜなら…
秋田駅中央改札口を出て西口バス乗り場に来た人は、下の写真のような風景を見ることになる。
秋田駅西口バス乗り場
乗り場の配置上、バスの後部から車両に近づく形になり、車両後部の行き先表示機が目に入り、それで自分が乗る路線かどうかを第一に判断することになる。
後部の行き先表示は、前面のよりも小型。とりわけLED式では文字数が制限されてしまい、秋田のバス会社では、後部では経由地を一部または全部省略して表示していることが多い。
「土崎・飯島」
一方、今や少数派の幕式(フイルムに印刷したもの)の表示では、
青字部分でどちら経由かが分かる。これは寺内経由
従来は後部を見るだけで判別可能だったのに、LED式では「新国道 土崎・飯島」なのか「県庁 寺内 土崎・飯島」なのか、側面や前に回り込まないと区別できない。

乗り慣れない記者は、新国道と寺内と2つの経路があることを知らなかったか、あるいは忘れてしまい、「あっ! 土崎の方に行くバスだ」ととっさに乗ってしまったのだろう。
(実は両路線は乗り場が違うのだが、慌てていれば勘違いするだろうし、車両の表示の方を信頼してしまうのも無理はない)
「土崎・飯島」が続行する場合もある
このような例はほかにも秋田市内にいくつかあるし、今月実施中の社会実験の「後部は路線番号と行き先だけ表示」というやり方が正式採用されるとさらに増えてしまう。
僕が「系統番号や行き先だけでなく、経由地表示も充実させてほしい」と考えているのは、こうした理由による。

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2 コメント

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評価は難しい (mugi-shochu)
2010-05-29 09:44:01
弘前のバスには乗ったことがないので比較のしようはありませんが、ご指摘のバス会社の運転手は、”寡黙で口べた”(良く言えば(笑)ですが・・・)な方が多いという印象は受けますね。
言葉を変えれば、”客商売”という意識が低すぎるという感じ。
ただ、私がたまに乗り合わせるバスの運転手さんで、非常に親切丁寧に対応してくれ好印象な方もいるので、全てがそうだとは思いません。
いずれにしても、秋田のバスも頑張って欲しいものですね。
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県民性 (taic02)
2010-05-29 19:04:50
県民性もあるでしょうね。弘前でも観光客の問い合わせに難解な津軽弁&ぶっきらぼうな話し方で対応して、お客さんにしてみれば印象が悪くなった、それ以前に理解できたのか(笑)と傍から見ていて心配になる場面に何度か出くわしました。
方言はともかく、ある程度マニュアル化して社員教育すればいいように思います。弘前ではある程度それが出来ていて、秋田ではまったくやっていなくて、個人に任せてしまっているように感じます。
おっしゃる通り、僕も秋田でも親切な運転士さんを何人も見ています。そういう人たちと、無愛想な人が同じ給料をもらっているのは、おかしいなと思います。運転士個人の努力も必要ですが、個人営業じゃないんだし、もっと会社がフォローあげてほしいなと、秋田のバス会社に対して思っています。

でも本当に、やれることはやってがんばってほしいし、我々も乗って支援しないといけませんね。
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