宮城旅行記の続き(前回の記事)。
松島から塩釜にかけては、JR東北本線とJR仙石(せんせき)線がほぼ並走している。
海が見えたかと思えば、トンネルもあって地形は変化に富む場所を、両路線は寄り添ったり離れたりを繰り返す。ただし、駅が同じ場所にあるものはない。
この区間の駅の配置を簡単に示す。
駅間の距離は、ある程度意識して配置しています
東北本線の松島・塩釜2駅の間に対応する区間に、仙石線は6~7駅もある。
仙石線は、元々、私鉄として開業したので、駅が多い。
東北本線の駅間が離れすぎているとも言え、ちょうど10.0キロ。東北本線(3セク化された盛岡~青森を含めても)でもっとも駅間距離が長いのがここのはず。
ちなみに、上野を出た東北本線が、370キロほど走って初めて海に出会うのも、この辺りとのこと(この先で海が見えるのは青森の野辺地辺りかな)。
ここに限らず、一部の“乗り鉄”が考えるのが、鉄道で直接つながっていない駅どうしを、バス、船、徒歩などで短絡すること。旅程が効率的になることもあるが、道路や地形が歩きにくかったり、時間が読めずに失敗することもある。※広島でやった記録。
松島・塩釜周辺では、松島駅と高城町(たかぎまち)駅、塩釜駅と西塩釜駅の間が近く、いずれも10分ほどで徒歩連絡が可能。
※昨年や前回の記事の通り、バスを使えば、塩釜と本塩釜など塩竈市街地では他の連絡もできる。
今回の旅では、東北本線の列車を塩釜駅で降りて、鹽竈神社に向かうつもりだった。
時刻表を見ると、手前の松島駅で降りて高城町駅まで歩くと、ちょうど乗り換えられそうな仙石線の列車を発見。乗り換えは必要になるが、本塩釜駅から参拝したほうがいいような気もしていたので、それに惹かれた。
車内でぎりぎりまで悩んで、思い切って松島駅で降りた。
東北本線松島駅
2010年にできたきれいな駅舎。駅業務は子会社へ委託されていて、時間帯によっては無人。
旧駅舎であったというキオスクは今はないものの、待合室には紙コップの飲料自動販売機があり、Suica決済可能、しかもフラッペというか水分の多いかき氷も2種類あるという、初めて見たタイプ。後で買ってみたらかき氷とはちょっと違ったけれど、暑い時にはうれしかった。
高城町へのルートは難しくない。
駅正面の一本道を150メートル進むと、国道45号線の横断歩道橋のある交差点と高城川。国道向かいに高城川の橋があり、仙石線の橋も並行するのがさっそく見える。
歩道橋の上から橋と仙石線
道路の橋は「松島橋」だそうで、
古ぼけた表示板に「松島橋」
橋を渡れば、あとは脇道(何本かある)に入って仙石線沿いをたどる。途中、生協のスーパーがあるところで、信号機のない広い道路を渡るので、注意。
仙石線沿いの道
正面の建物側面が見えているのが高城町駅
松島駅到着後、高城町発の電車まで12分ある。800メートルほどだから、10分あれば余裕と高をくくっていた。
ところが、生協の辺りで怪しくなってきた。走れば間に合いそうだったが、汗をかきたくないから断念。次に乗ることにした。
高城町駅から仙台方面への昼間の列車は、昔は、石巻始発の快速と各停が毎時1本ずつだった。
それが2015年からは、仙石線としては石巻始発各停1本、この高城町駅始発(折り返し)各停1本、そして石巻始発で途中から東北本線に入る「仙石東北ライン」の快速が1本の毎時3本体制。
仙石東北ラインとは、東北本線と仙石線を接続する連絡線を建設し、直通車両を開発したもの。連絡線は、東北本線・塩釜駅方向と仙石線・高城町駅方向を行き来できる形状(上の図のピンク色の線)。
乗り損ねた列車の次の列車は、仙石東北ライン。
これに乗ってしまうと、結局、東北本線・塩釜駅で降りることになってしまい、旅程としては時間を無駄にしただけになってしまうのは、ちょっと悔しい。
でも、機会があれば乗ってみたいとも思っていたので、1駅だけ乗っちゃうことにした。
折り返し駅かつ分岐駅である高城町は、小さな駅。
高城町駅。タクシー乗り場だけやけに広く、あとはすべて狭い
ホーム側から
狭い道路と線路に挟まれて小さな駅舎がちょこんとあり、構内踏切で結ばれた1面2線の島式ホームがちょこんとある。昭和の地方私鉄の風情が漂う駅だけど、仙台周辺にはわりとあるかも。例によって駅業務は子会社委託。
列車が到着
仙石東北ラインの車両は2両1組だが、多くは2組つないだ4両で運転されるという。
来た列車は、運悪く2両編成の列車。席は埋まり、立ち客がけっこういた。
ところが、先頭車両の先頭部がぽっかりと空いていた。そこに立つしかあるまい。結果的に、前面展望を楽しむことができた。
車両はHB-E210系気動車。ハイブリッド方式のディーゼルカーで「リゾートしらかみ」などと同じ方式。
東北本線は交流、仙石線は直流で電化されているため、安価に直通運転しようということなんだろう(石巻から先、非電化の石巻線へも直通できるメリットもある)。
※ハイブリッド方式は、男鹿線のような蓄電池式電車ではなく、新潟や五能線に導入される電気式気動車とも少し違う。
ワイドボディ3ドア、セミクロスシートの車両。
1駅だけの乗車、しかも混んでいてよく分からなかったけれど、E721系など最近のJR東日本の普通列車と大差なさそう。
走行音や振動も、ハイブリッドのリゾしらと変わらない感じ。エンジン作動時は、それなりの音と振動がある。
高城町を出て2分ほど。これから2度停車した後、東北本線へ入る旨の放送が流れる。
海の近くとは思えないほど「山」の風景。右側へポイントが切り替わっている
たしかここでいったん停止してから、連絡線へ。
まっすぐが仙石線、右が連絡線
連絡線には架線が張られていない。
連絡線走行中。右に東北本線が見えてくる
東北本線に合流するところに信号機(「場内」と表示)があり、赤なので2度目の停止。
青信号に
青に変わったタイミングで、左隣の仙石線を下り列車が通過。それと入れ違いのように我々の列車は東北本線へ入る。
この場所は「信号場」のような位置付けかと思っていたら、松島駅の構内という扱いらしい。松島駅自体は通過すらしないけれど。
信号機の下に「無線切換」と注意書きがあったので、無線方式が違うのだろうか。なお、自動列車停止装置(ATS)はこの区間では両線とも同じだから、切り替えなくていいはず。
連絡線通過にかかった時間は1分ほど。
あとは、東北本線を普通に走って(車両の最高速度は100km/hだから、E721系よりは少し遅いのかも)、塩釜到着。
仙石東北ラインにより、仙石線の快速と比べて、石巻-仙台が10分ほど短縮されて60分を切った。連絡線の通過時間をさらに短縮する計画もあるらしい。
一方で、よそ者としては運行形態が分かりづらい。地元利用者としても、仙石線の仙台-松島海岸では快速がなくなったし、石巻-本塩釜・多賀城の直通列車は減ったし、東北本線の松島駅では、以前あった仙台-松島の折り返し列車が廃止されたし、場合によっては不便になったところもあるはず。
仙石線側で容易に快速を増発できる環境ではないし、震災復興、地方の活性化の意味もあるけれど、全体的に考えればどんなもんなのだろうか。
旅行記は続く。
松島から塩釜にかけては、JR東北本線とJR仙石(せんせき)線がほぼ並走している。
海が見えたかと思えば、トンネルもあって地形は変化に富む場所を、両路線は寄り添ったり離れたりを繰り返す。ただし、駅が同じ場所にあるものはない。
この区間の駅の配置を簡単に示す。
駅間の距離は、ある程度意識して配置しています
東北本線の松島・塩釜2駅の間に対応する区間に、仙石線は6~7駅もある。
仙石線は、元々、私鉄として開業したので、駅が多い。
東北本線の駅間が離れすぎているとも言え、ちょうど10.0キロ。東北本線(3セク化された盛岡~青森を含めても)でもっとも駅間距離が長いのがここのはず。
ちなみに、上野を出た東北本線が、370キロほど走って初めて海に出会うのも、この辺りとのこと(この先で海が見えるのは青森の野辺地辺りかな)。
ここに限らず、一部の“乗り鉄”が考えるのが、鉄道で直接つながっていない駅どうしを、バス、船、徒歩などで短絡すること。旅程が効率的になることもあるが、道路や地形が歩きにくかったり、時間が読めずに失敗することもある。※広島でやった記録。
松島・塩釜周辺では、松島駅と高城町(たかぎまち)駅、塩釜駅と西塩釜駅の間が近く、いずれも10分ほどで徒歩連絡が可能。
※昨年や前回の記事の通り、バスを使えば、塩釜と本塩釜など塩竈市街地では他の連絡もできる。
今回の旅では、東北本線の列車を塩釜駅で降りて、鹽竈神社に向かうつもりだった。
時刻表を見ると、手前の松島駅で降りて高城町駅まで歩くと、ちょうど乗り換えられそうな仙石線の列車を発見。乗り換えは必要になるが、本塩釜駅から参拝したほうがいいような気もしていたので、それに惹かれた。
車内でぎりぎりまで悩んで、思い切って松島駅で降りた。
東北本線松島駅
2010年にできたきれいな駅舎。駅業務は子会社へ委託されていて、時間帯によっては無人。
旧駅舎であったというキオスクは今はないものの、待合室には紙コップの飲料自動販売機があり、Suica決済可能、しかもフラッペというか水分の多いかき氷も2種類あるという、初めて見たタイプ。後で買ってみたらかき氷とはちょっと違ったけれど、暑い時にはうれしかった。
高城町へのルートは難しくない。
駅正面の一本道を150メートル進むと、国道45号線の横断歩道橋のある交差点と高城川。国道向かいに高城川の橋があり、仙石線の橋も並行するのがさっそく見える。
歩道橋の上から橋と仙石線
道路の橋は「松島橋」だそうで、
古ぼけた表示板に「松島橋」
橋を渡れば、あとは脇道(何本かある)に入って仙石線沿いをたどる。途中、生協のスーパーがあるところで、信号機のない広い道路を渡るので、注意。
仙石線沿いの道
正面の建物側面が見えているのが高城町駅
松島駅到着後、高城町発の電車まで12分ある。800メートルほどだから、10分あれば余裕と高をくくっていた。
ところが、生協の辺りで怪しくなってきた。走れば間に合いそうだったが、汗をかきたくないから断念。次に乗ることにした。
高城町駅から仙台方面への昼間の列車は、昔は、石巻始発の快速と各停が毎時1本ずつだった。
それが2015年からは、仙石線としては石巻始発各停1本、この高城町駅始発(折り返し)各停1本、そして石巻始発で途中から東北本線に入る「仙石東北ライン」の快速が1本の毎時3本体制。
仙石東北ラインとは、東北本線と仙石線を接続する連絡線を建設し、直通車両を開発したもの。連絡線は、東北本線・塩釜駅方向と仙石線・高城町駅方向を行き来できる形状(上の図のピンク色の線)。
乗り損ねた列車の次の列車は、仙石東北ライン。
これに乗ってしまうと、結局、東北本線・塩釜駅で降りることになってしまい、旅程としては時間を無駄にしただけになってしまうのは、ちょっと悔しい。
でも、機会があれば乗ってみたいとも思っていたので、1駅だけ乗っちゃうことにした。
折り返し駅かつ分岐駅である高城町は、小さな駅。
高城町駅。タクシー乗り場だけやけに広く、あとはすべて狭い
ホーム側から
狭い道路と線路に挟まれて小さな駅舎がちょこんとあり、構内踏切で結ばれた1面2線の島式ホームがちょこんとある。昭和の地方私鉄の風情が漂う駅だけど、仙台周辺にはわりとあるかも。例によって駅業務は子会社委託。
列車が到着
仙石東北ラインの車両は2両1組だが、多くは2組つないだ4両で運転されるという。
来た列車は、運悪く2両編成の列車。席は埋まり、立ち客がけっこういた。
ところが、先頭車両の先頭部がぽっかりと空いていた。そこに立つしかあるまい。結果的に、前面展望を楽しむことができた。
車両はHB-E210系気動車。ハイブリッド方式のディーゼルカーで「リゾートしらかみ」などと同じ方式。
東北本線は交流、仙石線は直流で電化されているため、安価に直通運転しようということなんだろう(石巻から先、非電化の石巻線へも直通できるメリットもある)。
※ハイブリッド方式は、男鹿線のような蓄電池式電車ではなく、新潟や五能線に導入される電気式気動車とも少し違う。
ワイドボディ3ドア、セミクロスシートの車両。
1駅だけの乗車、しかも混んでいてよく分からなかったけれど、E721系など最近のJR東日本の普通列車と大差なさそう。
走行音や振動も、ハイブリッドのリゾしらと変わらない感じ。エンジン作動時は、それなりの音と振動がある。
高城町を出て2分ほど。これから2度停車した後、東北本線へ入る旨の放送が流れる。
海の近くとは思えないほど「山」の風景。右側へポイントが切り替わっている
たしかここでいったん停止してから、連絡線へ。
まっすぐが仙石線、右が連絡線
連絡線には架線が張られていない。
連絡線走行中。右に東北本線が見えてくる
東北本線に合流するところに信号機(「場内」と表示)があり、赤なので2度目の停止。
青信号に
青に変わったタイミングで、左隣の仙石線を下り列車が通過。それと入れ違いのように我々の列車は東北本線へ入る。
この場所は「信号場」のような位置付けかと思っていたら、松島駅の構内という扱いらしい。松島駅自体は通過すらしないけれど。
信号機の下に「無線切換」と注意書きがあったので、無線方式が違うのだろうか。なお、自動列車停止装置(ATS)はこの区間では両線とも同じだから、切り替えなくていいはず。
連絡線通過にかかった時間は1分ほど。
あとは、東北本線を普通に走って(車両の最高速度は100km/hだから、E721系よりは少し遅いのかも)、塩釜到着。
仙石東北ラインにより、仙石線の快速と比べて、石巻-仙台が10分ほど短縮されて60分を切った。連絡線の通過時間をさらに短縮する計画もあるらしい。
一方で、よそ者としては運行形態が分かりづらい。地元利用者としても、仙石線の仙台-松島海岸では快速がなくなったし、石巻-本塩釜・多賀城の直通列車は減ったし、東北本線の松島駅では、以前あった仙台-松島の折り返し列車が廃止されたし、場合によっては不便になったところもあるはず。
仙石線側で容易に快速を増発できる環境ではないし、震災復興、地方の活性化の意味もあるけれど、全体的に考えればどんなもんなのだろうか。
旅行記は続く。