広く浅く

秋田市を中心に青森県津軽・動植物・旅行記などをご紹介します。

新屋の湧水

2012-08-14 23:52:52 | 秋田の季節・風景
また暑くなってきたので、涼しげな話題を。
当ブログで何度か取り上げた、秋田市南西部の新屋(あらや)地区。なじみはあるけれど、まだまだ知らないことが多い。

新屋は湧き水(湧水)の街とも言われる。
秋田市西部市民サービスセンターのホームページには
「昔から新屋は良い水の出る所でした。海岸線を南北に走る砂の小高い丘(新屋砂丘)へ降る雨と雪が、地下20Mの地下水層へ溜まり、新屋町の随所から湧き水となって流れ出ます。」
「豊かな水資源に支えられ発展してきたこの地域は、昔から酒や味噌、醤油の醸造が盛んでした。」
「昭和初期までは湧き水や井戸が五百カ所以上あり、皆の台所として使用されました。井戸神様を祭り、日々の暮らしと密着していたこの湧き水も時代とともに消えつつあり、今では僅かに残るばかりです。」
とある。

たしかに、新屋の旧街道(酒田街道)には今も湧き水がある。
じゃあ、どこにどれくらいの水が湧いているのか?
ネットで調べてみると、ガイドマップのようなものでも欠落している所があるなど断片的な情報が多かった。

それらを総合すると、結局6か所存在するようだ。
JR羽越本線 新屋駅側から順に紹介します。
駅を出て秋田市西部市民サービスセンターの前を通り、新屋交番が移転してきた「日吉神社前」交差点で県道56号線(旧国道7号線)を渡る。日吉神社北側の道に入って進む。
県道56号線を振り返る。右の木々が日吉神社
日吉神社のお祭りで露店が並んでいた道であり、路線バス新屋西線(栗田神社前経由)のルート。
駅から500メートルほどの日吉神社の裏というか脇が1か所目。前の路面の一部が濡れているのも湧き水か。
右側の屋根のところ
公園風になっていて比較的最近整備されたと思われる。
2つ目以降に紹介する湧水は、複数の資料に掲載があったが、ここだけはほとんど載っていない。
環境省の「秋田県の代表的な湧水(http://www.env.go.jp/water/yusui/result/sub4-2/PRE5-4-2.html)」には「日吉神社横の湧き水」として掲載されている。
飲んでいいとかダメとか掲示のたぐいはなかった
なお、日吉神社の手水舎の水は地下水を汲み上げているそうなので、同じ水源かもしれない。


※以下、2番目から5番目に紹介する4つの湧水は、1989年に市制100周年を記念して秋田市によって名称を記した石柱が建てられており、いずれも「~湧水の里」という名。他の資料では「~の湧水」「~の湧き水」という表記のことも多く、実際にはどれが正式なのかは分かりません。
※各所の写真に絵馬のようなものが写っているが、何年か前に地元の秋田公立美術工芸短期大学の学生が作って、新屋各所に設置された百人一首のパロディ。のはず。たぶん。古くなって傷んでいるものもあった。

日吉神社横の湧き水から100メートルほどで2つ目。神社の森は終わって、商店や住宅が並ぶ。
住宅の間に細い坂と湧き水
比較的広いスペースに屋根がかけられ、地面は石が敷かれている。
薬王院下の湧水
今は「薬王院」なるものは存在しないようだが、「下」というからには坂の上にあったのだろうか。
こうした集落に近い湧き水によくある、3つに区切られた水槽があり、用途別に分けているのだろう。
最後の槽からは、雨水といっしょの下水に流れてしまうようだ
水質検査の結果書が掲示されていて「水道法水質基準に適合する」となっていた。書類の宛先(=依頼者?)は「秋田商工会議所新屋支所」、採水場所は「薬王院下の湧水」。


さらに100メートルほど進むと、旧街道・バス路線が右へカーブし、左に細い道が分岐する。
分岐点に建つ三角形の古い建物を使って地域活動などを行う「新屋参画屋」がある。
正面の茶色いのが参画屋
その分岐の手前左側が3つ目の湧水。
 愛宕下地蔵の湧水
屋根がなく、3区分の水槽はあるものの傷み気味。表示類も雨風にさらされている。造園会社から寄贈された看板があり「昔酒田街道を通る旅人は、この周辺の光景と湧水で心を癒した」といった内容が書かれていた。飲用できるかどうかの掲示はなし。
どうも、数年前にここを整備しようという計画が持ち上がっていたようだが、現在はどうなっているか不明。
水量は他よりもやや多めに感じた。


分岐から、左の細い道の方へ入る。店はなくなって完全な住宅地になり、大きなお屋敷もある。
150メートル弱で、左に小さめのお寺がある。そのお寺の隣の奥まった所が4つ目。
 実相寺前の湧水
湧水周辺はお寺とつながっていて敷地内かのようにも見えるが、実際には隣接地らしく、入口や通路も別。「実相寺前」でなく「実相寺下の湧水」などの表記も見られるが、お寺は平地にあるのだし、位置関係からして「前」のほうが適当な気がする。

ここは屋根付きで水槽が2つに区分され、奥に水神様がまつられていた。8月7日が全国的に水神様の祭事の日で、ここでも管理している近隣住民が行なっているとの掲示があった。
ここにも水質検査結果書が掲示されていた。同じく商工会議所新屋支所宛てで、採水場所名は「実相寺」。
飲んでみたが、クセのない味(水の味には鈍感でうまく表現できないのですが)。


そこからお寺の前を過ぎて数十メートル進むと、道が左に曲がっていて、そこが5つ目。
門前町の湧水
「門前町」という由来が分からない。ここも屋根付きで2槽。

ここには秋田保健所と新屋振興会連名による「注意」が掲示されていた。
「環境が変わってきておる」そうです
「検査したところ水質が悪くなっております」「病気にかかることを予防するため」飲用や野菜などを洗わないようにとのこと。

なお、現在は「秋田保健所」は存在しない。
1997年に秋田市が中核市になったため秋田市内は新たに発足した「秋田市保健所」の管轄となり、旧来の県の秋田保健所は「秋田中央保健所(潟上市昭和に移転)」となったはずなので。それ以前の掲示なのだろう。


最後の6つ目。
さらに道を進むと酒造会社がいくつかある。300メートルほど進んで、バス通りへ出ると、新屋郵便局付近。
郵便局の向かいにも、造り酒屋がある。「秋田晴」「酔楽天」の秋田酒造株式会社。
再掲)冬の光景
この前にあるのが「長寿の泉」。水槽はなくパイプから水が流れ落ちるタイプ。でも、
止まってます
酒造に使っている水の一部を開放しているのだろうか。
掲示によれば、3月下旬から11月上旬までの日曜祝日以外の10時から17時まで水が出る。
水量の関係で他の期間でも休水することがあるそうだ。この時止まっていたのは、お盆だから?

以上、6か所の位置関係
所在地としては、最後の長寿の水だけが新屋元町、他は新屋日吉町。
【15日追記】湧水がほぼ一直線に並び、そこは県立栗田養護学校や県営住宅・市営住宅などから下りる坂の下に当たる。つまり、冒頭の市民サービスセンターが言う「海岸線を南北に走る砂の小高い丘(新屋砂丘)」の東側のふもと。※坂の途中には市立日新小学校がある

湧水群といえば、秋田県では美郷町六郷が有名で大規模。弘前市でも町中にいくつかの湧き水がある。
でも、身近な秋田市新屋にも、こんなにあったとは知らなかった。どこも地域の皆さんなどによって大切に維持されているようなのがうれしかった。費用や手間は大変だろうけど、大事に守り続けてほしい。
湧水の近所の人がバケツで汲んで、道路に打ち水をしていたのが涼しかったし、暑い中歩いてきて、水に手を入れるとひんやりとするのが気持ちよかった。

ちなみに、新屋地区の水道水は秋田市の他の地区と同じく雄物川が水源。新屋は雄物川岸の街でもある。
ただし、秋田市北部や中央部は仁井田浄水場で作った水だが、新屋側は豊岩(とよいわ)浄水場から供給されている。一説には、豊岩浄水場の水のほうがおいしいという話がある。豊岩のほうが設備が新しいし、川幅が数百メートルもある大河のあっち岸とこっち岸で、水質が違ってもおかしくはない。(仁井田の水もまずくはないと思うけれど)【2018年3月15日追記】これは昔の話で、2010年代の時点では、仁井田と豊岩の水を混ぜて供給する体制になっているらしい。【2023年10月12日訂正】2018年の追記は勘違いだったのか、その後また変わったのか、2023年時点では浄水場ごとに給水地域は分かれている。
コメント (6)
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