ライトが故障したバス ホンジュラスの風
ホンジュラスという開発途上国に住んでいたときのことです。
首都テグシガルパで用事を済ませ、危険区域といわれているマジョレオバスターミナルから下宿先に帰るためのバスに乗り込みます。目的地到着まで、通常は4時間ばかりでしょうか。
1時間ほどして山道に差し掛かったとき、バスが停止しました。前方ライトが故障したようです。運転手と乗組員らがライトの修理を始めました。
日本だとバスはワンマンです。中米周辺国でもワンマンの国が多かったです。ところが、ここホンジュラスでは、バスに料金徴収係とそのお友達、あるいは家族と思われる人々が複数名同乗しています。
人件費削減という概念がないのか、あるいはワークシェアリングの考え方が浸透しているのか僕にはよくわかりません。
山中であり、辺りは真っ暗であるため、ポケットライトらしきものを点灯させながら修理しています。日本であれば、幹線道路あるいは田舎の道であっても等間隔に大型ライトが点灯していて、車の運転には支障がありません。
ところがここはホンジュラス。電灯はまばら、車の通行量も夜間であるため、5分に1台程度です。
数十分経過しました。
修理できないようで、のろのろ運転で出発することになりました。時折乗用車が通るのですが、その後を追いかけるように運転していきます。前の車のライトを頼りにしているのです。しかし、バスは高速で走れないので、すぐにおいてきぼりです。
勿論、正面は真っ暗で、山中のためうねり道だらけです。
心配になりながら前方を見ていると、
「みんな一緒に地獄へ行こう」
同乗していた生きのいい男性が掛け声をかけました。乗客の何人かから笑い声が聞こえてきます。ラテン人の楽観主義に感心しながら、僕は苦笑しました。
数人が立ち上がり、真っ暗な前方を凝視しています。興味津々な真剣な目つきです。あきずに何十分も前方を見ている彼らは子どものようでした。
「事故に遭うと危険だ、どうしてくれるのだ」
と誰も文句を言いません。
悲観的に考えないのがラテン人のよいところ。それでも政府関係者の汚職についての文句はよく言っています…。
この国にバス事故がないのかというとそんなことはありません。
ある日、大型バスが追い越しをかけようとして、石油を積んでいた大型トレーラーと正面衝突しました。全焼です。その残骸を見たときは、ぞっとしました。僕も使う路線のバスだったからです。こんな痛ましい事故がありました。
のろのろ運転のため、通常だと4時間かかる目的地までを倍の時間で到着しました。既に夜10時過ぎでした。
下宿先に到着すると、お母さんが
「こんな時間までどうしたんだい」
と言いながら、出迎えてくれました。
事の顛末を話していると、他の家族も集まってきて、皆で談笑をした後、眠りにつきました。
最後まで読んでいただいてありがとうございます。
多くの方に楽しい旅をしていただければと思っています。
応援のクリックをどうもありがとうございます。
ホンジュラスという開発途上国に住んでいたときのことです。
首都テグシガルパで用事を済ませ、危険区域といわれているマジョレオバスターミナルから下宿先に帰るためのバスに乗り込みます。目的地到着まで、通常は4時間ばかりでしょうか。
1時間ほどして山道に差し掛かったとき、バスが停止しました。前方ライトが故障したようです。運転手と乗組員らがライトの修理を始めました。
日本だとバスはワンマンです。中米周辺国でもワンマンの国が多かったです。ところが、ここホンジュラスでは、バスに料金徴収係とそのお友達、あるいは家族と思われる人々が複数名同乗しています。
人件費削減という概念がないのか、あるいはワークシェアリングの考え方が浸透しているのか僕にはよくわかりません。
山中であり、辺りは真っ暗であるため、ポケットライトらしきものを点灯させながら修理しています。日本であれば、幹線道路あるいは田舎の道であっても等間隔に大型ライトが点灯していて、車の運転には支障がありません。
ところがここはホンジュラス。電灯はまばら、車の通行量も夜間であるため、5分に1台程度です。
数十分経過しました。
修理できないようで、のろのろ運転で出発することになりました。時折乗用車が通るのですが、その後を追いかけるように運転していきます。前の車のライトを頼りにしているのです。しかし、バスは高速で走れないので、すぐにおいてきぼりです。
勿論、正面は真っ暗で、山中のためうねり道だらけです。
心配になりながら前方を見ていると、
「みんな一緒に地獄へ行こう」
同乗していた生きのいい男性が掛け声をかけました。乗客の何人かから笑い声が聞こえてきます。ラテン人の楽観主義に感心しながら、僕は苦笑しました。
数人が立ち上がり、真っ暗な前方を凝視しています。興味津々な真剣な目つきです。あきずに何十分も前方を見ている彼らは子どものようでした。
「事故に遭うと危険だ、どうしてくれるのだ」
と誰も文句を言いません。
悲観的に考えないのがラテン人のよいところ。それでも政府関係者の汚職についての文句はよく言っています…。
この国にバス事故がないのかというとそんなことはありません。
ある日、大型バスが追い越しをかけようとして、石油を積んでいた大型トレーラーと正面衝突しました。全焼です。その残骸を見たときは、ぞっとしました。僕も使う路線のバスだったからです。こんな痛ましい事故がありました。
のろのろ運転のため、通常だと4時間かかる目的地までを倍の時間で到着しました。既に夜10時過ぎでした。
下宿先に到着すると、お母さんが
「こんな時間までどうしたんだい」
と言いながら、出迎えてくれました。
事の顛末を話していると、他の家族も集まってきて、皆で談笑をした後、眠りにつきました。
最後まで読んでいただいてありがとうございます。
多くの方に楽しい旅をしていただければと思っています。
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