日本版『The Making of the English Landscape』といった趣の本書は1967年に刊行され、1996年に第14刷が発行されている好著。農業史、農業政策史が専攻の著者だけあって、農業がいかにこの国の国土景観を規定し続けてきたかの歴史的分析(古代~明治)はとても細やかだ。むろん、農業的土地利用の原則が崩壊しつつある今日、本書を読むことの意義は大きいであろう。それにしても、農業土木という分野はマジメに勉強する必要がありそうだ。農業を押さえるということは、水利や水系、地形を制することに他ならず、農産物の物流を考えることが交通(水運)や都市の立地を規定し、それら総体を統括することが国土経営(幕藩体制)そのものであったのだ。今さらではあるが。