
【合うは別れの始まり】

これは三十代で連れ合いに死に別れ、五人の娘のうち二人を見送った祖母の口癖の言葉です。

僕の祖母は女手一つで百姓をしながら、五人の娘を育てあげた人です。

性格はイエスとノーがはっきりしていた性格でしたが、僕と妹にはとても優しいおばあさんでした。

生前に祖母が書いていた日記を読むと、どうしようもない難問に出会うと、【仕方ない】という言葉がその都度出てきます。

悲しい運命を、どうしよもない事と諦めていたように思えます。

人は愛する人と出会い、結ばれ、そして新しい命を授かり育てます。

その中で泣いたり笑ったりの人生があるように思います。

でもどんなに幸せな家族でも、やがて別れが来ます。

それは悲しい現実なんですが、でも僕はそれをそのまま受け入れたい。

別れがあると云う事は、反対に出会いがあると云う事だと思います。

生き物には命に限りがあるから、出合った人と良い関係でいようとするのではないでしょうか。

父は今年で88歳。

いつお迎えが来てもおかしくない年齢ですが、未だに新しい植物を取り寄せています。

父は、これらの植物が咲くのを観れないかも知れないがと笑いながら言いますが、こんな父に僕は頭が下がります。

普通ならもう寝ていたいと思う年齢だし、そんな父の体力です。

しかし毎日を積極的に生きようとする父は、息子の僕が言うのもなんですが立派です。

僕は生まれて父や母や妹や祖母と出会いました。

そして女房と結ばれ、息子や娘と出会いました。

しかし母と祖母には別れを告げました。

次はおそらく父を送るでしょうが、限りある残り少ない父との生活を大切にしたいと思います。