男鹿島
ひれふりてめじかもよるや男鹿島 桃 青
謡曲「放生会」に、放たれた魚のよろこぶさまを、
魚はよろこび鰭(ひれ)ふるや水を穿(うが)ちて岩陰の、
湛荷葉動くこれ魚の遊ぶ有様の……
とあるのを逆に寄るさまを発想したものか。掛詞によって仕立てただけの句のように思う。
芭蕉は『奥の細道』の旅以前に奥州に遊んだことがないから、何かで得た知識によって詠んだものであろう。
「男鹿島(おがのしま)」は、羽後南秋田郡八郎潟の西北岸の一村。男鹿山には鹿が多く、もと佐竹家で放った三頭の鹿が繁殖したものだという。
「ひれ」は魚の鰭。領巾(ひれ)の意を掛けている。領巾は昔、婦人が首に掛けて左右に長く垂らした布。装身のためのものであるが、人を招いたり別れを惜しんだりするときに振った。
「めじか」は牝鹿。「めじかがつお」の意を含ませている。男鹿島付近は、めじかがつおの産地である。
鹿の句ということで、これが季語で秋。
「男鹿島はその名の示すとおり、牡鹿であるからであろう、牝鹿の名を
負うめじかがつおが、領巾(ひれ)を振るように、鰭(ひれ)を振りなが
ら慕い寄って来ることよ」
一枚の旅のクーポン秋澄めり 季 己
ひれふりてめじかもよるや男鹿島 桃 青
謡曲「放生会」に、放たれた魚のよろこぶさまを、
魚はよろこび鰭(ひれ)ふるや水を穿(うが)ちて岩陰の、
湛荷葉動くこれ魚の遊ぶ有様の……
とあるのを逆に寄るさまを発想したものか。掛詞によって仕立てただけの句のように思う。
芭蕉は『奥の細道』の旅以前に奥州に遊んだことがないから、何かで得た知識によって詠んだものであろう。
「男鹿島(おがのしま)」は、羽後南秋田郡八郎潟の西北岸の一村。男鹿山には鹿が多く、もと佐竹家で放った三頭の鹿が繁殖したものだという。
「ひれ」は魚の鰭。領巾(ひれ)の意を掛けている。領巾は昔、婦人が首に掛けて左右に長く垂らした布。装身のためのものであるが、人を招いたり別れを惜しんだりするときに振った。
「めじか」は牝鹿。「めじかがつお」の意を含ませている。男鹿島付近は、めじかがつおの産地である。
鹿の句ということで、これが季語で秋。
「男鹿島はその名の示すとおり、牡鹿であるからであろう、牝鹿の名を
負うめじかがつおが、領巾(ひれ)を振るように、鰭(ひれ)を振りなが
ら慕い寄って来ることよ」
一枚の旅のクーポン秋澄めり 季 己