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壺中日月

空っぽな頭で、感じたこと、気づいたことを、気ままに……

男鹿島

2011年10月04日 22時31分49秒 | Weblog
          男鹿島
        ひれふりてめじかもよるや男鹿島     桃 青

 謡曲「放生会」に、放たれた魚のよろこぶさまを、
        魚はよろこび鰭(ひれ)ふるや水を穿(うが)ちて岩陰の、
        湛荷葉動くこれ魚の遊ぶ有様の……
とあるのを逆に寄るさまを発想したものか。掛詞によって仕立てただけの句のように思う。
 芭蕉は『奥の細道』の旅以前に奥州に遊んだことがないから、何かで得た知識によって詠んだものであろう。

 「男鹿島(おがのしま)」は、羽後南秋田郡八郎潟の西北岸の一村。男鹿山には鹿が多く、もと佐竹家で放った三頭の鹿が繁殖したものだという。
 「ひれ」は魚の鰭。領巾(ひれ)の意を掛けている。領巾は昔、婦人が首に掛けて左右に長く垂らした布。装身のためのものであるが、人を招いたり別れを惜しんだりするときに振った。
 「めじか」は牝鹿。「めじかがつお」の意を含ませている。男鹿島付近は、めじかがつおの産地である。

 鹿の句ということで、これが季語で秋。

    「男鹿島はその名の示すとおり、牡鹿であるからであろう、牝鹿の名を
     負うめじかがつおが、領巾(ひれ)を振るように、鰭(ひれ)を振りなが
     ら慕い寄って来ることよ」


      一枚の旅のクーポン秋澄めり     季 己