壺中日月

空っぽな頭で、感じたこと、気づいたことを、気ままに……

風の筋

2011年06月29日 22時28分44秒 | Weblog
        嵐山藪の茂りや風の筋     芭 蕉

 『嵯峨日記』の十九日の条には、
    「午半(うまなかば)、臨川寺に詣づ。大井川前に流れて嵐山右に高く、
     松の尾の里に続けり」
 とあり、この散策中の嘱目吟であろう。
 自然を大づかみに、しかも動的にとらえ、色彩的にも豊かな効果をあげた句である。
 「風の筋」は、風が吹き通る道筋。竹藪の穂のそよぎから、視覚的にとらえていったもの。

 季語は「茂り」(茂み)で夏。繁茂した季節感のみならず、柔軟な竹藪の穂のなびきやすい質量感をとらえた使い方がみごとである。

    「嵐山の方を眺めやると、ずっと竹藪の茂りが連なっている。その藪の穂の
     上を風の吹き通ってゆくのが、一本の筋となって望まれることだ」


      七変化おのが心のうらおもて     季 己