今日から消費税のインボイス(適格請求書)制度が導入された。インボイスは、免税事業者は発行できない。
インボイス制度導入を巡っては、これまで納税を免除されてきた年間売上高1,000万円以下の小規模事業者への影響が指摘されている。
事業者は、免税事業者と取引した場合、インボイスの発行が無く、そのため受け取った消費税から支払った分の消費税が引けず、その分をそっくり負担しなければならない。
具体的には、売上分に掛る消費税2万円について、仕入先からのインボイスで1万円の証明があれば2万円−1万円で残り1万円を納税すればよい。支払った消費税1万円を足して丁度2万円になる。
しかし、仕入先からインボイスが発行されないと2万円−0円で2万円を納税しなければならない。支払った消費税1万円を足すと3万円になり1万円は持ち出しとなる。
そのため、免税事業者は、取引先から外されたり、値引きを迫られる可能性が生じる恐れがあり、死活問題になっている。
財務省によると、9月15日時点の暫定値で約300万の課税事業者のうち、約97%の292万事業者がインボイス発行事業者の登録を申請、従来免税で制度への登録が必要になると政府が見込む約160万の事業者も、111万事業者が申請したと推計している。
公正取引委員会によると、既にインボイス導入に関連して消費税相当額を取引価格から値引くと一方的に通告した発注事業者に、独占禁止法違反(優越的地位の乱用)の疑いがあるとして注意した事例が9月27日時点で35件あった。
インボイス制度は、いわゆる消費税制の先端を行く欧州などでは以前から導入されているが、果たして小規模事業者が多い日本に馴染むのか疑問がある。
フリーランスや小規模事業者からなる団体が財務省や国税庁、公正取引委員会に対して、インボイス制度の中止・延期を求めるおよそ36万人分の署名を提出した。
アニメーターなどへのアンケート(有効回答数969人)では、「収入が減ると思う」が77%、「廃業するかもしれない」との回答は全体の27%に上っている。
現行の消費税は、10%と8%になっていて、インボイスでその点を明示することなどの理由もあり、あるていどのインターバルを取って今回実施になったが、内容が複雑で分り難さもある。
政府は、さらに経過処置などの説明に努め、この制度のソフトランディングに務めないと、大きな社会問題になりかねない。