菅義偉首相が、アメリカのトランプ大統領と初めての電話会談を行った。25分ほどの会談だったが、トランプ大統領は「24時間中いつでも電話をして欲しい」と応答、安倍晋三前首相と変わらず親密な日米関係を続ける意向を示したようだ。
菅首相は自ら公言してはばからないように、「叩き上げから今の地位を築いた」とのことなので、あらゆる点で人との付き合い方に長けているのだろう。
それが、外交関係にも生かすことができるか。トランプ大統領との電話会議に続き、オーストラリアのモリソン首相とも20分ほど電話会談をしたが、これからいっそう、その力が試される。
安倍前首相は、地球を俯瞰する外交と称して、歴代首相の中でも最も多くの国を訪れた。その成果については具体的に明確でなく、現段階では、「最も多くの国を訪問した首相」程度の評価しかできない。
安倍前首相外交のもう一つの特徴は、トランプ米大統領、プーチン露大統領との個人的な親密さを売り物にした。
しかし、外交関係で個人的な親密度がどの程度国益に適うのかは明確ではない。
事実、トランプ大統領は遠慮会釈もなくどんどん日本へ様々な要求を突き付けてくるし、プーチン大統領は、北方領土返還について、これまで積み重ねてきた条件より後退した内容に終わっている。
歴史的に見ても、首脳同士の個人的な付き合いが、外交に上手く生かされた例は無いとは言えないが、本来、外交における首脳の個人的な付き合い以前に、すべて国益が優先することを肝に命じなければならない。
むしろ、安部・トランプ関係のように、余り親密度に重点を置くと、相手に就き入るスキを与える結果に陥り易い。
安倍氏と、トランプ氏の実際の親密度がどの程度だったかは分からないが、トランプ大統領は商取引上でディールの達人と言われ、商取引に慣れていないと思われる安倍首相とは役者が違い過ぎた。
その点を考えると、むしろ「叩き上げ」で政治、経済、社会の面で幾多の取引を重ねてきた菅首相の方が、例えばトランプ大統領との政治的な取引を交わす面で、日本の国益に適った結論を導き出すような気がする。
外交が苦手と言われている菅首相だが、安倍前首相が辿った個人的首脳外交の失敗を繰り返すことはないだろう。「関連:9月20日」