こぶた部屋の住人

訪問看護師で、妻で、母で、嫁です。
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麻薬を使いたくない理由。

2009-08-12 23:08:12 | 訪問看護、緩和ケア
緩和ケアでは、癌性疼痛に対して、最初は非麻薬性鎮痛剤から始まって、徐々に麻薬や、麻薬の補助剤を使うようになります。

今の麻薬は、徐々に効いて長く持続するものから、早く効いて早く排泄されるものまでいろいろです。
それだけ、効果的なものあがたくさんあるのですが、「麻薬」という言葉で、強い拒否反応を示す方は、少なからずいらっしゃいます。

痛くなくて、穏やかに自宅で過ごせるようにと、ドクターが処方してくれても、使わないで我慢していたりする方もいます。

ご高齢の方の中には、「麻薬は最後の手段」「麻薬を使ったら最期、すぐに死んでしまう」などと、昔のイメージで決めつけている方も多いようです。
きっと、何十年も前は痛みで転げまわって、最終的に麻薬を使って亡くなるケースが多かったのでしょうね。

でも、今は格段と医療は進歩しているし、麻薬製剤は上手に使えば、無駄な体力や気力を消耗することなく、返ってよい時間を長く過ごすことができるのですが・・

でも、若い方は皆さん自分でもよく調べていて、ある程度は理解されている方が多いのですが、それでもやっぱり躊躇されることがあります。

IVHのルートに空気が入ってどうにもならないと、緊急訪問したときに、その方はぽろぽろ泣いていました。
「どうしたの?」
「痛いの。すごく痛くて、痛くて・・・」
「お薬飲んだ?」「飲んだ。オプソ」
「何㎎?」「15・・」
「20mg飲まないの?麻薬、使うのいや?」
「便秘になるから・・・おなかがパンパンになると苦しいから」
「便秘はお薬でコントロールできるから、今はその痛みをとらない?」
「うん・・のこりの5mg飲む。」

たった5mgでも、減らそうとするんですね。
「便秘は、お薬の飲み方と水分を取ることで解消できるよ。」
「お水のむと、尿を出すのが辛いから、なるべく飲まないようにしてた。」
「お水を取りこんで便を軟らかくするお薬だから、大丈夫だよ。」

耳を傾けると、思い込みで悪循環に陥っていることも。

ルートのエアを抜いて、「ポンプは止まってしまっても大丈夫、あわてなくても、空気は身体に入ったりしないからね。OFFにして、ルートの留め具を絞めておけば絶対平気。あわてないであとからゆっくり電話を頂戴ね。」
「そうなんだ。自分で何とかしようとしたけど、わからなくなって,パニックになって、すごく痛くなってしまったの。」
「そう、今は?」「もう痛くない。」「よかったね。やっぱりお薬ちゃんと飲んで、笑って過ごしたほうがよくない?」「うん。そうする」

そんな会話もありました。

でも、「目を閉じるのが怖い。薬を使うと、眠くなって目を閉じるともう二度と目があかないような気がする」
そういう思いの方も多くいらっしゃいます。
「そのまま、あっちへ引きずりこまれる・・」と。

きっとそうなんでしょう。
怖いですよね。眠る事が怖いなんてどんなに辛いことでしょうか・・
どんなにいい薬でも、どんなに説明しても、その恐怖はずっとあるのだと思います。

せめて、その怖さを聞きたいとおもいます。
何もできない私たちですが、傍にいることで、ほっとしてもらえるかもしれなし・・
少しでも、穏やかに過ごしてもらえますように。