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Narashino Geography 28 多文化共生と異文化理解

2021-05-02 18:40:56 | 地理学

多文化共生と異文化理解

地理教育の目標の一つが「異文化理解」

地理教育の目標の一つが「異文化理解」です。自らの地域・文化を知るだけでなく、世界のさまざまな地域や文化についても理解することがたいせつです。


自分の国と違う文化を受け止める「力」
しかし、これは世界各地の知識をクイズの答えのように覚えることではありません。自らと違う文化について、受容的に受け止める「力」を付ける「態度」の育成が必要です。間違っても「日本に生まれてよかった」というような単純な結論に至ることを目的にしているわけではありません。

正しく他文化を知ることが第一歩

異文化理解の基礎となるのは自文化以外の多様な文化を受容する「態度」と言えます。これは自己の文化を捨てて、他文化に「同化」するということではありません。まずは、正しく他文化を知ることが第一歩です。正しく知り、受け止めることがスタートラインになります。そして、そのような文化がどのような構造を持っているのかを考え、その文化の本質を理解できるように努力します。

日本のことも、実はわかっていない

そもそも日本について、ボクたちは十分理解しているでしょうか。人は当たり前と思っていることについては、理解が深まらない傾向があります。それは理解を深めるための「問い」がないからです。

「日本の領域は世界第6位の大きな国」って知ってた?

例えば、よく「日本は狭い島国」といわれますが、「日本の領域は世界第6位の大きな国」と聞くとどうでしょう。

世界6位の面積を持つ海洋国家JAPAN - 日本探偵業協会 (jda-tokyo.jp)



日本の国土面積は約380万平方㌔で世界約200カ国中で第62位です。しかし、海洋領域(排他的経済水域447平方㌔)も含めると約830万平方㌔で世界第6位です。陸地面積は大きくありませんが、それでも世界の大半の国は日本より小さい国です。よく言われる「日本」のイメージとは違う姿が現実です。多くの日本に暮らす人々は「日本は小さい」と思い込んでいるのではないでしょうか。似たことは他にもあるので、いろいろな問いを立てて、日本の「再理解」を深めていただければと思います。
つまり、身近な事柄については「知っているつもり」で思考停止に陥っていることが多いということです。物事を考えずに単純な知識として記憶するだけでは、リアルな世界や地域の理解に結びつくとは限らないということです。

人はだいたい2歳で「見えないものが存在すること」「見えなくなっても消滅しない」を「認識」し、自分の世界を獲得する

さまざまな情報を記憶するだけでは、「理解」とは言えません。情報の先にある、本当の世界を浮かび上がらせることができるような「認識」が重要ということです。ピアジェの発達心理学では、「見えないものが存在すること」を認識できることを2歳児の課題としています。1歳児は、目に見えるものが世界の全存在と認識しています。ですから親が見えなくなることはとても不安に感じることです。それが、2歳になると「見えなくなっても、消滅しないこと」を認識できるようになっていきます。このようにして、人は自分の世界を獲得していきます。
(ピアジェの発達段階理論)

こうして、自分が生きている世界とは違う世界が存在することを受容するようになる

このように見通しのよい世界認識ができるようになると、リアルな地域、世界の理解が進み、さらに自分が生きている世界とは違う世界が存在することを受容することができるのだと思います。

「僕が跳びはねる理由」という映画が示す多様性の世界

先日、「僕が跳びはねる理由」という自閉症の子どもたちのドキュメンタリを観ました。

(原作は、君津市の東田直樹さんが自身の自閉症の症状や思いをつづり、世界的ベストセラーになったエッセー)

 

自閉症の作家・東田直樹さんエッセー原作の映画「僕が跳びはねる理由」公開へ:東京新聞 TOKYO Web

作家の東田直樹さん(28)=千葉県君津市出身=が、自身の自閉症の症状や日常の思いをつづり、世界でベストセラーとなったエッセーを原作にし...

東京新聞 TOKYO Web

 

 

自閉症は個々にユニークで、標準タイプでは理解できない多様性があります。ある意味、最も身近なダイバーシティ(多様性)の問題といえそうです。以前は「アスペルガー症候群」という言葉が流行したことがありました。ある種のブームとなって、かえって自閉症の理解を妨げるので、「自閉症スペクトラム」と広い範囲の自閉症を指す名前に変わりました。

話を聞いてみると、なんだか納得してしまうし、「跳びはねる」理由も理解できる

東田さんの本には、こんな質疑応答が載っています。

じっとしていられないのはなぜですか?

 一般には、静かにきちんとしている状態が、落ち着いている状態だと思われていますが、中にはとても苦労して座っている人も存在することを知って欲しいです。本来、動いていること自体が、自分にとっては自然で楽なことなのに、無理やり強制されて縛られているような感じです。

跳びはねるのはなぜですか?
 思い通りにならないときだけでなく、嬉(うれ)しいときにも僕は跳びはねます。今の僕にとって、それは感情を自分の中で整理するためのものだと思います。たとえて言うのなら、こんな感じです。
「大事にしている気持ち」という静かな水面に、石を投げられて波紋が広がります。波紋はなかなか静まらないから、いらいらして自分でかきまぜてしまう。すると、ますます水面は揺れるので、何とかしなければと、今度は跳びはねて上下に揺らしてしまうのです。
 跳びはねることの理由には、手足の位置がわかることによって、自分の存在が実感できること。空に向かって気持ちが開くことなどもあります。
 空に向かって気持ちを開きたくなるのは、人では僕の気持ちを受け止めきれないと思っているからです。

(「自閉症の僕が跳びはねる理由2」より)

 

「そうだよな。そんな気持ちになる時、あるよね」と、なんだか納得して著者に共感してしまうのはボクだけでしょうか?

多様な世界を受け入れることができる「態度形成」、新たな偏見や差別を許さないことが、異文化理解の基本となり、そこから「共生社会」が実現できる

世界や社会は多様で、さまざまな様子が見られます。それらを正しく知ることは大切ですが、限界があります。ですから、多様な世界を受け入れることができる「態度形成」が重要になります。一人ひとりが、反差別や人権尊重の基本を身に付けて、アンテナを高くして誠実に生きることが重要です。新たな偏見や差別を許さないことが、異文化理解の基本となり、そこから「共生社会」が実現できるでしょう。

 

 

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