(ブログ読者の投稿です)
人の不幸に目を向ける時
10月1日の毎日新聞朝刊13面の≪発言≫“人の不幸に目を向ける時”に、目が止まりました。
筆者は河合祥一郎さん。「このたびシェークスピアの<リア王>を新たに訳して発見があった」という書き出しになっています。
これまで読み飛ばしていたらしいセリフの重要性に改めて気づいたとあります。
リア王がこれまでの権威を失った嵐の中で「風よ 吹け」と、自然の厳しさにむち打たれながら「ああ、わしはこれまで気づいてこなかった。虚栄よ、薬にしろ。惨めな者たちが感じているものをおまえも感じろ。そうして余分なものを振るい落として貧乏人に与えれば、天に正義を示すことになろう」と述懐するセリフです。
河合さんはこう記しています。「シェークスピアは惨めな者たちが感じているものを、社会全体が知るべきだと言っているのではないか。そして困ったときほど人は助け合わなければならない。しかし、その重要性に気づくのは自分自身がつらい目に遭った時だ」と。
習志野市役所の非正規公務員が、こんなひどい扱いを受けていたとは!
ひどい抜粋で申し訳ありません。この記事が目に止まる前、私はあるチラシを見ていました。
それは市役所職員の労働組合「ユニオン習志野」が配布していたもので、そこには“非正規公務員 新制度で年収減”という読売新聞の記事が載っており、会計年度任用職員(非正規公務員)の待遇について書かれていました。
「会計年度任用制度」で今年から待遇が少し良くなるはずだった
「非正規」という言葉が目新しくなくなった昨今ですが、「同じ仕事をしていても、非正規公務員の給料は正規公務員の半分以下」、というひどい格差があることは、私もつい最近まで知りませんでした。あまりに低賃金のため、非正規公務員は「官製ワーキングプア」と呼ばれているそうです。
「同一労働同一賃金」と言われているのに、お役所にこんな格差があるのはおかしい、という声が全国的に広がったため、今年から非正規公務員は「会計年度任用職員」と呼ぶことにし、待遇も改善することになったそうです。
ところが習志野市では、逆にフルタイムの人をパートにし、月1〜2万も給料を減らしてしまった
ところが習志野市役所は、こういう流れとはまるで反対のことをやっています。今までフルタイム(7時間45分)で働いていた非正規職員の約半分の人たちの勤務時間を45分削って7時間のパートタイムにしてしまった。そのため、月収が1〜2万円減ってしまった。「フルタイムなら退職金が出るけど、パートにしてしまえば退職金を出さなくてすむから」ということのようです。仕事は今までと何も変わらないので「7時間」では仕事が終わらず、皆さん困っているそうです。7時間45分でやっていた仕事を7時間でやれ、というのが、土台無理な話ですね。
ちなみに、総務省は「非正規の処遇改善のための制度だから、フルタイムをパートにしてはダメ」と言っているのに、習志野市は従わないそうです。これでは格差を縮めるどころか、ますます格差を広げるだけです。
同じ仕事をしているのなら「同一労働同一賃金」にすべき
同じ職務を与えられ、同じようにこなしても、正規、非正規では収入はもちろん、待遇は雲泥の差です。正規職員に与えられる保障も、非正規職員には与えられません。
どの会社や組織でも、人を雇えば、その人の生活を保障しなければなりません。民間ならそれは契約書に明記されています。
正規職員ではどうしても足りなくなった時に臨時で雇う、という建て前だったのに、今は市役所職員の半数近くを非正規職員が占めています。「安上がり」に人を雇えるからです。
しかし、同じ仕事をやっているなら「同一労働同一賃金」であるべきではないでしょうか。
パートだから、非正規だから、と振り分け、その人たちの人格までも下に見る。
その人たちが体調をくずせば別の人を探せばいいとしか考えない。
でもそういう方たちがいるお陰で、会社も、役所も回っているんです。
独善は、他者の不幸に目を閉ざす
河合さんは最後にこう言います。「差別の言葉を消しても、差別意識が消えない限り、何の進展もない。差別は自分を守ろうとする“小さな正義”(独善)から起こる。独善は、他者の不幸に目を閉ざす。独善は広まると社会的迫害が怒る。今こそ、そのことをしっかり認識し、“助け合うことを忘れ”ないようにすべき時なのではないか。
これは、今、ここで生活している私たち市民一人ひとりに向けられたメッセージではないでしょうか。市役所の非正規職員の方たちへのひどい扱いに「目を閉ざす」べきではないですね。
役所の上の方でふんぞり返っている方たちは是非「リア王」をお読みください。
Y.T(本大久保在住)
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