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Narashino Geography ⑳ 世界のほとんどの地域に居住する人類と移動

2021-02-28 01:03:06 | 地理学

世界のほとんどの地域に居住する人類と移動

 1980年代の米国では地理教育の革新運動が進められました。地理教育ガイドライン(1984)では、「5大テーマ」として、位置と分布(空間)、場所、相互依存関係(環境)、相互作用(空間関係)を設定しました。これを基本に米国地理ナショナルスタンダード(1994)がまとめられ、1992年には国際地理教育憲章が出されました。また、ヨーロッパでは、国連の「持続可能な開発のための教育(ESD)」を受けて「ルツェルン宣言」(2008)が出され、地理教育改革がSDGs(エスディージーズ)に貢献すると位置づけられました。

(ESDやSDGs、ルツェルン宣言については、以下の投稿でも触れました)
Narashino Geography ⑬ 考える地理授業 - 住みたい習志野
Narashino Geography⑦ 地誌 - 住みたい習志野

欧米では一目おかれる「地理教員」

欧米では「地理」はメジャーな学問としてギリシア時代以降の伝統があります。ボクは経験したことがありませんが、ヨーロッパで「地理教員」と言うと一目置かれると言われています。

チョッと、地理業界的な話になりました。

人類の居住と移動
今回は人類の居住と移動をテーマにしたいと思います。南極大陸を除く、地球のほとんどの地域にヒトは居住しています。ヒトの起源はアフリカ大陸(諸説あり)で、約70000年ほど前にアフリカからユーラシアなどへと広がっていきました。

大航海時代にはヨーロッパを中心にした貿易がアジアとの間で盛んになりました。それ以前にはシルクロードやインド洋から地中海へとアラビアの商人(ムスリム商人)が活躍しました。

現在では貿易は当たり前のこととして日常になっています。皆さんの食卓に並ぶ食品の原産地はどこでしょう。国内で生産されている卵や牛肉も、海外から輸入されたトウモロコシなどを飼料としていることがほとんどです。

農産物の輸入が世界の水資源(バーチャルウォーター)を奪っている

農産物の輸入は海外の水を利用して栽培された作物や肉などを輸入することです。この隠れた水利用はバーチャルウォーター(仮想水)と呼ばれ、発展途上国などでは大きな問題となっています。


肉食が地球環境を破壊している

また肉食は、地球環境に大きなストレスとなります。牛肉1㌔を生産するためには穀物が11㌔が必要です。穀物生産と肉牛が飲む水を合わせると1㌔の牛肉生産に20000㍑(20㌧)の水が必要です。ステーキ1枚の肉(200㌘)には4㌧の水が消費されるということですね。
肉食と環境破壊の驚くべき意外な関係 - 国際環境NGOグリーンピース
肉食をやめると地球が救われる|あなたが地球のためにできること

 

ニクソン・ショックで、ブレトンウッズ体制(固定相場制)から変動相場制に変わった国際金融

貿易は農産物だけでなく、さまざまな工業製品の移動としても行われています。日本は国際貿易で経済発展をしてきた国です。

国際貿易は現物のやりとりですが、決済は国際金融で行われ、為替相場の影響も受けます。

日本円の価値が上がって円高になると、輸出企業は不利になりますが、輸入では安く買うことができ、消費者にはありがたいことになります。円安になるとその逆です。

世界の基軸通貨は米国のドルですが、ボクが高校生の頃は1㌦=360円の固定相場でした。今と比べると大変なドル高・円安でした。しかし、この為替構造のおかげで高度経済成長期の日本はさまざまな工業製品を欧米などに大量に輸出することができました。

日本の敗戦前の1944年に、戦後の国際金融態勢について米国を中心にして協議が行われ、国際金融秩序としてブレトンウッズ協定が結ばれ、米ドルを機軸とするブレトンウッズ体制が成立しました。


しかし、この固定相場制はドル安が基調となっているため、米国の輸出貿易には不利でした。そのため、1971年にドルショックという、米国の金保有に裏付けられていた、金1オンス=35㌦という交換制度を当時のニクソン大統領が突然打ち切りました。(だから「ドルショック」は「ニクソン・ショック」とも呼ばれます)

ブレトンウッズ体制の終結は米国の保有する金の減少とインフレ(物価上昇・通貨価値減少)による米国経済の低迷によるものでした。その後、各国は変動相場に移行していきました。現在は1米㌦が、日本円105円前後です。

現在は為替相場や株式相場もコンピュータ内のサイバー空間で莫大な取引が行われています。毎日、とてつもないお金(500兆円、ボクの概算)がサイバー空間で取引され、ボクたちの生活に影響を与えています。

資本主義の再評価が最近の地理学のトレンド

最近の地理学では、産業革命以降の資本主義の再評価がトレンドです。東西冷戦が終了し、冷静に資本主義が欧米では論じられるようになりました。
岩波書店の「思想」(20212月号)は「採掘採取 ロジスティクス批判地理学の最前線」を特集しています。マルクスの「資本論」のバージョンアップと言えるでしょう。マルクスの「搾取」という概念が拡大され、「国際貿易」をロジスティクスという概念に置き換えて論じられています。



欧米ではマルクスの「経済学批判要綱(グルントリッセ)Grundrisse der Kritik der politischen Ökonomie」という著作の共同体論、アソシエーション(協働組織)論などが再評価されていますが、

この「思想」誌の論文では、マルクスの「搾取」「収奪」や「原始的蓄積」という概念を「(ごっそりまるごと奪っていく)採掘(extracción/extraction)」という言葉で表現したり、「ロジスティクス(国際貿易或いは資本による過酷な流通支配)」に対する「対抗ロジスティクス(ストライキや占拠など労働者による流通の取り戻し)」という考え方を示したりしています。フランスのミシェル・フーコーなどをバックボーンに新しい世界観が提示されていて、とても刺激的です。(近)

 

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