隅の老人のミステリー読書雑感

ミステリーの読後感や、関連のドラマ・映画など。

0872.あどけない女優

2008年03月21日 | 短編集
あどけない女優
読了日 2008/3/8
著者 戸板康二
出版社 文藝春秋
形態 文庫
ページ数 285
発行日 1985/6/25
ISBN 4-16-729204-1

中村雅楽以外のミステリー短編集で、新劇界を舞台にしたものを集めてある。歌舞伎を初めとする演劇界については、精緻を極めている著者のことだから、こうしたストーリーはノンフィクションではないかと思われるようなリアル感があって興味深い。そうした僕のような読者をけん制するためか、著者はあとがきで、わざわざストーリーはすべて作者の創造したフィクションであることを断っている。

表題作ともなっている「あどけない女優」は、女優の山際貞枝が座長を勤める劇団“山羊座”の若手男優を巡る話しだ。その男優を好きになった貞枝の妹・時枝のために一肌脱ごうとする貞枝の思惑が思わぬところからひっくり返されるというストーリー。

1作目の「意外な幕切れ」もタイトル通り主人公の思惑が意外な結末を迎えるという展開で、舞台となっている新劇の世界も、普通の社会となんら変わることのなく発生する人間関係が、特殊な空間の中でどう派生していくかという面白さである。

 

収録作
(初出誌不明)
# タイトル
1 意外な幕切れ
2 鬼っ子
3 四月吉日
4 ぬき稽古
5 光の輪
6 脇役の万年筆
7 あどけない女優
8 ナンシーの老女
9 盗み聞き
10 内助の功




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