福家警部補の再訪 | ||
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読 了 日 | 2009/06/22 | |
著 者 | 大倉崇裕 | |
出 版 社 | 東京創元社 | |
形 態 | 単行本 | |
ページ数 | 253 | |
発 行 日 | 2009/05/25 | |
ISBN | 978-488-02533-5 |
年ほど前に同じ東京創元社から刊行された「福家警部補の挨拶」に続くシリーズ。
本書は以前、町田暁雄氏からはもう少し前に出るようなことを聞いていたが、大分遅れたようだ。町田暁雄氏については前作のところで少し触れたが、「刑事コロンボ読本」という研究書を自費出版した方で、コロンボファンの間では著名な人物だ。(詳しくは刑事コロンボファンサイト「安葉巻の煙」http://www.clapstick.com/columbo/へ。因みにクラップ・スティックとは映画の撮影時に・・そんな余分なことは良いか!)
テレビドラマ「刑事コロンボ」でお馴染みとなった倒叙形式(最初に犯人の側から犯行の様子などを描く、ミステリーの形式)は、その後わが国でも三谷幸喜氏の「古畑任三郎」が人気を博して、すっかり定着した感がある。
だが、小説となると、古典的な名作を除き、現代ではそれほど見聞きしないところを見れば、あまり読者からは歓迎されていないということか?
二見書房から刑事コロンボのノヴェライズが旧シリーズのほか、新シリーズについても出ており、コロンボファンにはそこそこ歓迎されているらしく、僕も古くからの新書版(サラブレットブックと呼ばれる)や、文庫版を何冊か読んだが、残念ながらドラマほどの興奮は味わえないというのが本音だ。
そんなところへ打って出たのが大倉崇裕氏の「福家警部補の挨拶」だった。2006年にミステリーの老舗、東京創元社から刊行された同書を買い求めて読んだ僕は、倒叙ミステリーとしての面白さを十分に堪能した。(このシリーズ誕生には、前出の町田暁雄氏も協力者として関わっているようで、その辺のところもコロンボファンサイトで判るかもしれない。)
永作博美嬢の福家警部補
その推理小説としての価値は読者のみならず、当然のことのようにテレビ局も見逃さなかったようで、2009年正月の特別番組としてNHKで「オッカムの剃刀」がドラマ化された。主演の福家警部補には永作博美嬢が扮して、原作の味わいを損なうことなく表現していた。今や大ベテランとなった犯人役の草刈正雄氏を向こうに回して、飄々としながら追い詰めていく様は、原作のイメージそのままの小さい体ながら一歩も引けを取らず見事に福家警部補を演じた。
原作は短編連作だから、できればドラマもシリーズ化して欲しいと願うのは僕だけではないだろう?
て、今回は「歌声が消えた海」(刑事コロンボ第29作目の長尺エピソード)を思わせるような、豪華客船内で始まる。
旅行会社の企画による周遊航海で、午後5時に晴海埠頭を出航するはずだったマックス号は直前の警視庁の刑事たちによる船内捜索があって、大幅に遅れ、7時過ぎに出航した。その刑事たちの中に捜査に夢中で降りる時機を逸してしまったのは、何を隠そう福家警部補その人だ。
そして、タイミングよく??事件が巻き起こる。警備会社社長・原田が、過去の弱みを握る直己を船室で撲殺したのだ。鑑識も居らず指紋採取も出来ない状況の中で、彼女はどうやって真相に迫るのか? 以下、全部で4つの事件に関わる福家警部補の活躍が描かれる。
僕は、まだ読んでいないのだが、著者には「七度狐」とか、「三人目の幽霊」という著書があり、どちらも多分落語に材をとったストーリーだと思うが、そういったところから寄席芸などに詳しいのかと思っていた。
本書の3つ目のエピソードが漫才コンビの話もそうしたことで生まれたもので、ここで交わされる掛け合いの台詞なども著者の作だとばかり思っていたら、どうやら台本は本職の手によるもののようだ。
しかしながら、このエピソードは寂れ行く演芸場への思いが、オーナーと福家の間で交わされる場面で、訴えてくるものがあって僕は好きだ。ところで、このタイトルが「相棒」となっているが漫才コンビの話などでよく聞くのは「相方」と言う言葉だが、「相棒」と言うのが正しい言い方なのだろうか?(どっちでも良いか!)
気軽に読めるライト感覚のミステリーだが、と言って軽く考えてはいけない。きっちりと本格推理の王道を行くミステリーだ。ともあれ、これからもシリーズが続いていくことを切に願うものである。
# | タイトル | 発行月号 |
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1 | マックス号事件 | vol.19 2006年10月 |
2 | 失われた灯 | vol.21~22 2007年2~4月 |
3 | 相棒 | vol.24 2007年8月 |
4 | プロジェクトブルー | vol.26 2007年12月 |
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