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隅の老人のミステリー読書雑感

ミステリーの読後感や、関連のドラマ・映画など。

1698.ソマリアの海賊

2017年01月23日 | サスペンス
ソマリアの海賊
読了日 2017/01/23
著 者 望月諒子
出版社 幻冬舎
形 態 単行本
ページ数 409
発行日 2014/07/25
ISBN 978-4-344-02606-3

 

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メリカ第45代大統領にトランプ氏が就任した。しかし、多数の支持を得て選挙で指名されたトランプ氏に対して、多数の反対デモが広がるなど、まったく理解できないことだ。そうしたデモに参加する人々は、トランプ氏を支持しない人たちなのだろうが、自由と民主主義の大国の現状だとは思えないような現象だ。
なぜこのような反対派の人々がいるのに、トランプ氏が当選したのか?そんな単純な疑問を持つのは、アメリカの現状を知らない僕だけか?
といったようなことはさておき、昨日は大相撲の14日目に横綱・白鵬関が、貴ノ岩関に負けたことで、優勝を決めていた大関・稀勢の里関の千秋楽の一番に、多くのファンが湧いた。相手はもちろん大きな壁ともいえる、横綱・白鵬関で、この一番に勝つか負けるかはその評価を大きく左右するものだが、一方的ともいえる白鵬関の攻撃に対して、受け身となった稀勢の里関だが、すでに優勝を手に入れていた彼は落ち着いて白鵬関を下したのだった。
稀勢の里関は昨年の年間最多勝に輝いたことに加え、今初場所の優勝は横綱昇進へ大きく前進した。
待ちに待った優勝とともに、先代貴乃花の長男である若乃花の横綱昇進依頼19年ぶりとなる、日本人力士の横綱昇進を色濃くした話題は、しばらく相撲ファンを喜びの渦に巻き込むはずだ。何はともあれ、今日の稀勢の里関、おめでとうございます。

 

 

少し間を開けながら望月諒子氏の作品を続けて読んできた。多分今刊行されている著者の作品はこれで最後だと思う。一人の作家の作品を集中的に読むと、作者の作品の傾向とか、ストーリー組み立ての共通点のようなものが、少しわかる(ような気がするが、僕のお粗末な理解力だから、あまり当てにはならない)。
読み始めて間もなくイアン・ノースウィッグなる人物が登場して、どこかで聞いたことのあるような気がしたら、なんと「大絵画展」、「フェルメールの憂鬱」でも活躍する大泥棒だ。いや、今や彼はその騙りと泥棒稼業で財をなし、貴族の称号まで手に入れるという偉業?を成し遂げた人物だ。
ストーリーの発端はタイトルとは関わりのない、日本の発展著しい自動車メーカー・舘岡自動車工業の社長である舘岡竹蔵が、会社設立50周年を祝う席上で発表する挨拶原稿を手書きしたことに始まる。出来上がったその手書き原稿は封筒に入れられて、総務部員の長沼秋男に預けられた。
長沼は大事なものを預かった責任の重さを感じて、無くしでもしたらどうしようとばかりに、あちこち隠し場所を考えた末、社用車として使っているGPS付きのピックアップトラックのグローボックスの中にある、金庫にしまった。
それがそもそもの間違いで、その後とんでもないアクシデントを招くことになるのだ。

 

 

の後ピックアップトラックはへこみを治すために修理に出されたのだが、長沼は社長の原稿を出すため修理工場から車を返させると、違う車が返ってきた。GPSを探ると車はなんと水産加工会社のエカワット・ナヴァという船上だった。車の取り返しを命じられたのが、入年目の倉木京平だったが、彼が船にたどり着くやそのまま彼を乗せたまま船は出向してしまった。
そこから倉木京平のスリルとサスペンスの連続する冒険?が始まる。全く言葉も通じない、風俗も習慣も違う国で、そうした環境にもめげずに何とかやっていく彼の前向きな生き方に、関心もするがまだまだ我々の知らない国や地域があって、法律もないところがあるなどということは想像もしてなかったことだ。
中東地域での内戦のニュースが、毎日のようにテレビで報道されており、それを対岸の火事としか受け止めていない我々も、もしかしたらこのストーリーの主人公のような窮地に追い込まれることが、全くないとは言い切れない現状に、ちょっと背筋が寒くなるのだ。
だが、こうした未知の国の事情など、いろいろとデータを確認しながらストーリーに組み込んで、小説としての面白さや、知識として提供できる作家という仕事に、僕はますます尊敬の念を大きくする。

 

 

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1696.ブラック・ヴィーナス 投資の女神

2017年01月18日 | サスペンス
ブラック・ヴィーナス
投資の女神
読了日 2017/01/18
著 者 城山真一
出版社 宝島社
形 態 単行本
ページ数 389
発行日 2016/01/22
ISBN 978-4-8002-5033-9

 

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えきれないほどの文学賞があって、それはミステリーに限らずラブ・ストーリーやホラー、あるいはSF、冒険小説などなど、今や作家はこうしたどれかを受賞しないとデビューするチャンスがないようだ。
僕はこの読書記録を始めた17年前は、それほど多くのミステリー文学賞はなかったから、江戸川乱歩賞やその後制定されたサントリーミステリー大賞など、受賞作を読書の指針としていたことがあった。もっともその江戸川乱歩賞にしても、僕がミステリーに興味を持ち始めた後からできたものだった。
近頃僕が一番興味を惹かれているのが、宝島社の「このミステリーがすごい!」大賞だ。この賞の受賞作家には多くの読者の支持を得ている作家も多く、そんな読者の一人である僕も、海堂尊氏や中山七里し、あるいは柚月裕子氏のファンとなった。
まあ、そんなことでこのミス大賞をチェックしていたら、本書ともう1冊「神の値段」の2冊が目についた。幸いにして、木更津市立図書館に蔵書があったので、早速行って借りてきたのが、実際は少し前のことで12月初めではなかったか。

 

 

このところ読書は順調に推移していて、まだこのブログにアップしていないが読み終わっている本が10冊近くある。というのは好きな作家のシリーズを読んだからで、そうした読みやすい本ばかりを読むというのは、どうかなという気もあるが、若い頃のように有り余る時間があるわけではないので、仕方がないという気もあるのだ。
誰にとやかく言われることではないから、誰かにそんなことを言ってもらいたい気もあるが、残念ながらこんな年寄りの繰り言を読んで、意見を言う人はないだろう。
早いものでこの前始まったばかりだと思っていたら、大相撲も残すところ今日を含めて5日となった。横綱・白鵬関の思いがけない2敗が、他の力士にどう影響するのかが、この後の興味深いところだが、今場所は横綱・日馬富士関及び横綱・鶴竜関の途中休場や照ノ富士関の6敗など、嵐の初場所といった具合だ。多くのファンが望む日本人力士の横綱昇格だが、今日のところ1敗の大関・稀勢の里関の優勝がその一番の近道か?

 

 

表紙のイラストが本書のメインキャラクターだが、本文に書かれているのと顔の形がわずかに異なる箇所があるが、読み進むうちにイメージするのはこの姿かたちになる。
ストーリーは資金繰りに困った企業のトップなどが、黒女神と呼ばれる人物に助けを求めるというシチュエーションだが、その辺もネタバレにつながるとも思えるから、あまり詳しくは書けない。 デイトレーダーとしての活躍で依頼人を救う黒女神こと二礼茜。ひょんなことから彼女の助手となった百瀬良太は、彼女に付いてともに活動するのだが、彼女がどのようにデイトレードで資金を運用するのかを探ろうとするも、その実態は簡単にはわからない。
しかし次第に彼女の人間関係が大きく彼女の才能を形作っていたことが、解明されていく・・・・。
トレーダー関連のミステリーは、昔幸田真音氏の作品で、そのスリルにとんだストーリーを楽しんだが、本書はそれとはまた異なる展開で、スケールの大きな成り行きを示す。

 

 

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1694.田崎教授の死を巡る桜子准教授の考察

2017年01月13日 | サスペンス
田崎教授の死を巡る
桜子准教授の考察
読了日 2017/01/13
著 者 望月諒子
出版社 集英社
形 態 文庫
ページ数 253
発行日 2014/04/25
ISBN 4-08-745182-5

 

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朝は11時半まで寝ていた。昨夜下痢と嘔吐に見舞われたため、大事をとって7時ごろには布団に入ったのだが、9時過ぎに歯磨きをしなかったことに気付いて、起きだして10分ほどかけて歯を磨き、またすぐに寝た。悪いものを食べた記憶はないのだが、いつもの軽い夕食をと時刻である6時ごろになって、腹部の膨満感があり微かに嘔吐感が生じた。
尾籠な話だが、トイレでは水のような便が出て、そのあと我慢できない嘔吐感により、吐いた。
僕が薄などと言ったことはここ10年以上、いやもっと長い間なかったことだから、驚いて早いこと寝てしまおうと思ったのだ。
めったにないことが起こると、気弱になって寝付くまでの間に、このまま死んでしまっても良いかな、なんて思ったりするが、人間そう簡単に死ぬわけもなく、朝はいつものように6時の目覚ましで目覚めたが、めったにないことだからと、少しゆっくりと寝ることにした。11時半に起きて、もう朝食ではなく昼食になっていたが、軽く食事をとってからコーヒーを飲む。朝食をとらなかったから、薬の服用はせず血圧を測るも、割と低い数値で安定している。昨夜の状態が嘘のようだ。

 

 

昨日はキッチンの水道の蛇口が壊れて、何かの折に頼りにしている大工さんに、頼んだらそうした修理の職人さんが来て、きれいな蛇口に取り換えてくれた。我が家のキッチンも風呂場も、水道の蛇口はカミさんがリウマチを患ってから、指先に力が入らないため上下式のハンドルにしている。
キッチンの水栓は毎日朝昼晩と使うものだから、痛みも早いのだろう。左右に動かす部分の根元から取れてしまったのだ。普段何気なく使っているものが壊れると、その有難さを改めて知るという具合で、わずか半日の不便さが堪えた。
今日は少し暖かくなったような気がする。僕の部屋は日が当たると暖房が不要なほどで、こうした晴天が続いて欲しいとつくづく思う。しかし、昔から夏は暑く、冬は寒くないと、消費の循環も悪くなり景気が良くならないと言われている。少しくらいの寒さや暑さには我慢できるような、体力を備えることが庶民の務めか?

 

 

前ほかの作家のところで、作家はいろいろと作品のジャンルを変えて、多くの読者を獲得することに苦心をしているのだろう。とまあ、そんな意味のことを書いたが、このところ飛び飛びではあるが僕は望月諒子氏の作品にほれ込んで、読み続けてきた。
現在刊行されている著者の作品は本書を除けば、あと2冊くらいだろう。
この作品は今のところ立志舘大学、大学院の桃沢桜子准教授を主人公とした、シリーズ2巻が刊行されており、本書はその第1巻だ。タイトルからして、僕は大学を舞台とした勝井謎解きストーリー化と思っていたら、まあ見方によれば軽いといえないこともないが、今まで読んだ著者の作品からは想像していなかった類の小説で、途中まで読んでいて少し驚いた。
大学内のドラマは従来少なからず読んできたが、本書の主人公である桜子准教授の、「あるがままを受け入れて」といった態度が、少なくない大学院生たちを招き寄せて和やかな雰囲気さえ漂わせている。

そんな大学の玄関口ロビーに、ある朝田崎教授が死体となって発見されたのだ。大学院の桜子准教授の研究室やその周辺を舞台として、彼らの日常を描きながら、マンションも買った、車も買った、足らないものは男だけ。そんな桜子准教授42歳の推理が煮詰まっていく過程が面白い。

 

 

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1688.ドールマン

2017年01月01日 | サスペンス
ドールマン
THE DOLL
読 了 日 2017/01/01
著  者 テイラー・スティーヴンス
訳  者 北沢あかね
出 版 社 講談社
形  態 文庫2巻組
ページ数 374/394
発 行 日 2014/07/15
ISBN 上巻978-4-06-277880-0
下巻978-4-06-277881-7

 

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年明けましておめでとうございます。

暮れから続く穏やかなそして比較的暖かな日が続いて、今日も元日にふさわしい、正月らしい朝を迎えた。毎年、一年がいい年になるよう願っているが、僕の場合は格別いい年というわけではなく、平凡でも良いので変わらぬ日常が過ぎていくようにとの願いだ。
今日は息子が入所している「ケアホームあけぼの荘」へ向かって、9時前に家を出て10時少し前に着いたが生憎出かけてしまったようで、連れ出すことは出来なく、仕方がないので息子とのドライブは明日にすることに。あらかじめ暮れの内に連絡しておけばよかったのだが、うっかりしていた。
カミさんが具合が悪くなってからは、息子を帰宅させて泊まらせることができなくなっており、寂しい思いをさせているのではないかと思っているが、当人にしてみればさほど気にしている様子はないようだ。

 

 

今年は日帰りで施設に帰すということで、カミさんの許可が下りたから明日は一度帰宅して、お茶でも飲んでからどこか遊園地へでも、繰り出すことにしよう。
彼が入所している福祉施設を運営するのは、社会福祉法人薄光会と言って、昭和50年代の後半に設立された法人で、わが子の将来を憂えた親たちが自ら立ち上げたもので、最重度の知的障害者を優先的に受け入れて、介護・支援をしている。
何代か理事長も変わって、現在は設立間もなく入社した職員がその任に当たっている。 法人のコンセプトである「(障害者と)共に生きる」の思想が、働く職員に行きわたっており、時折聞かれる施設職員の障碍者に対するいじめや虐待は皆無だ。施設利用者(障害者)の保護者・家族の組織である「保護者・家族の会」も、年4回ほど本部あるいは核施設に集い、施設及びお互いのコミュニケーションを図っている。
今年も障害者がつつがなく1年を過ごせるよう、願うばかりだ。

 

 

々覗いてみるAmazonのサイトにはマイページがあって、そこには僕が過去に買った本やその他諸々に関する情報が満載されている。いわゆるおすすめ品の一覧だ。
その中でいつも興味深く見るのは言わずと知れた本のお勧めで、たまにまだ僕の知らなかった読みたくなる本がある。本書もそこで見つけた。早速木更津市立図書館を検索したが、なかった。まあ蔵書がなければリクエストするまでだ。リクエストカードを書いて提出したのは、一か月くらい前だったろうか?
12月1日に図書館から「用意できました」のメールが届いた。毎日メールはチェックしているのだが、うっかり見逃していたらしく、3日になってメールを見て行って借りてきた。発行日は一昨年だから2年前か、その間いろいろと新刊の情報は見ていたのだが、本書には気づかなかった。
著者の処女作である前作「インフォメーショニスト」を年前に読んで、そのハードなストーリーはもちろんのこと、何より主人公・ヴァネッサ・マイケル・マンローという情報収集家(インフォメーショニスト)の魅力にひかれた。文字通り衝撃的なデビューを飾った著書から、シリーズ化されるといいのに、と思ったくらいだ。
そんな著者の新作でシリーズ作品だというから、僕がリクエストしたのは当然と言える。
本作は前作をさらに過激にしたような、と言ってもすでに前作の内容はほとんど覚えていないが、窮地に追い込まれたマンローの言動は予測を許さないハードなアクションを示していく。

 

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1685.腐葉土

2016年12月23日 | サスペンス
腐葉土
読了日 2016/12/23
著 者 望月諒子
出版社 集英社
形 態 文庫
ページ数 559
発行日 2013/04/25
ISBN 4-08-745060-6

 

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日の新潟県糸魚川の火事は、昨夜半にどうやら鎮火したようだが、強風にあおられた火は140棟にも及ぶ延焼を拡大して、混みあった木造家屋の集落を燃やし尽くした。
毎年どこかでくれも押し詰まった時期に、こうした火事が発生するような気がする。被害にあった人たちには気の毒としか言いようがない。関東地方と違い、日本海に面し大陸からの寒気を直に被る地方は、寒さも一段と厳しい中、焼け出された多くの被害者たちのことを思うと、僕は東京大空襲で焼け出された子供の頃を嫌でも思い出す。
すべてをなくした状態に、子供心にも情けない思いを抱いたことを。そして隣組にあった比較的大きな会社から、炊き出しのおにぎりをもらって食べたことも、焼夷弾で焼け野原になった景色とともに、鮮明に残っている。横道にそれた。
不幸中の幸いと言えるかどうか、この大火に死者が出なかったことだけが、唯一よかったといえることだろう。

 

 

今のところ本書が木部美智子シリーズ最終作らしいが、4作目の木部美智子シリーズはこれまでで一番長いストーリーだ。発行日からもわかるように、3作目からかなり時間をおいて書かれたもののようだが、作風は前3作を踏襲しながらも、一人の女性の戦後の時代をしぶとく生き抜き、資産家となった波乱の生涯を描く。
しかし、事件はその女性が老人ホームで殺害されるという幕開きだ。彼女の血筋は仇一人の孫である成年だけだが、その孫はしょっちゅう金をせびりにホームに表れて、多分著者はデビュー作を発表するまでにたくさんの作品を書いていたのではないかと思われる。
それはまさにデビュー作に登場した、重要人物である来生恭子は、望月諒子そのものではないかと思わせるのだ。
デビュー作の中で来生恭子という作家を目指す女性は、原稿用紙1万枚もの作品を書いたということだが、著者も長編の作品を数作書いていたのではないだろうか?そんなことを思いながら読んでいると、少なくも現在刊行されている作品は全部読んでみたいという欲求が湧いてくる。僕は今月初めに読んだ「フェルメールの憂鬱」から、ほぼ続けざまに本作で5作品を読んでおり、この後にも4作ほど予定している。

 

 

し前までは読書の傾向として、広く浅くを目指していたから、一人の作者の作品を続けて読むことは出来るだけ控えていたのだ。しかし、いつまで読み続けることができるかということを考えると、好きな作家の本を思い切り楽しむことも悪くはないという考え方に傾いてきた。
ブログにはかなりの間をあけて書いているが、実のところ読書そのものは順調に進んで、この後8冊ほどを読み終わっている。それなのにブログへの投稿が遅れているのは、なかなか文章を思いつかないからだ。
別にしゃれた記事を書こうと思っているわけではないのだが、時には一つの記事に5日も6日も掛かってしまい、嫌になって気の向くのを待つという具合だ。誰のためのブログではないが、一人でも二人でも読んでくれる読者がいるうちは、あまり気ままな態度はよくない、そう思いつつも書けないことにはどうしようもない。
読んで下さっている方には申し訳ないが、気長にお待ちいただくようお願いします。

 

 

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1684.呪い人形

2016年12月21日 | サスペンス
呪い人形
読了日 2016/12/21
著 者 望月諒子
出版社 集英社
形 態 文庫
ページ数 474
発行日 2004/08/25
ISBN 4-08-747730-4

 

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日も今日も晴れて比較的あたたかな気候で、出かけるにも抵抗がなくありがたい。昨日はカミさんが近くのホームセンター・ケーヨーD2に行きたいというので午後1時過ぎに車で出かけた。国道16号沿いの店は旧道沿い(木更津市請西)にあった記念すべき1号店を閉鎖した後に、西側の潮見地区に新設された店舗だ。
元々戦後の財閥解体などの影響を受けた、三菱商事を脱サラした永井氏が京大の後輩である岡本氏とともに立ち上げた京葉産業という、石油卸業が母体の会社だ。だが、昭和48年に起こった第1次オイルショックがもとで、当時アメリカで爆発的な店舗展開で、多くの顧客を獲得していた業態であるホーム・インプルーブメントへと、戦略の大転換を図ったのである。
石油卸業を始めたのち木更津市請西に土地を求めて、三井石油販売の支援の下、直営の木更津SS(サービスステーション)を建てたのだが、道路の分断で道路を挟んだ向かいの土地が空いた。その土地にケーヨーホームセンター一号店・木更津店をオープンしたのは、昭和49年のことである。 時流に乗った店舗展開は企業の業績を押し上げて、昭和59年12月に東証2部に上場、同63年には第1部に上場するといった発展を見せて、社名も株式会社ケーヨーと改めた。

話が大分それた。昔勤めていた会社のこととなると、つい夢中になってしまう。そうしたこととは全くかかわりなく、カミさんの買い物は小鳥の餌だ。1-2年ほど前のこととなるが、我が家の庭の百日紅や梅の枝に小鳥が舞い込むので、米粒をまいたところ雀が数羽来て、ついばむようになった。
その姿が可愛くてついにはホームセンターで小鳥の餌を買って、撒くようになったのである。今では餌係は娘に引き継がれた、多い時には50羽ほどが集団でやってくるようになって、餌時には大賑わいを見せている。
我が家は、元は山だったところが開発された住宅地で、以前はたくさんの種類の鳥たちが来たが、周辺の森や林も近年開発が進み、近頃は少なくなった。そうした中、人里でしか活動できない雀たちは、たまに来るヒヨドリなどはなわばりを主張するかのごとき、冷たい目?の集団で見つめるものだから、めったに来なくなってしまった。

 

 

今日は年賀状を出してきた。1昨年までは早くにデザインを考えて、干支のイラストを描いて、年賀状を作ってきたが、このところそうした気力も薄れて、おざなりの賀状になっている。
昔まだ60歳にもなっていなかった頃に、僕は息子の入所している福祉施設の、保護者会の会長を務めていたことがある。まだその頃は辛うじてサラリーマン現役だったから、役目柄保護者全員に年賀状を出していた。
多い時にはそうした人とは別に友人知人や、会社の上役、同僚と100枚ほどを出していたこともあった。そんな名残というわけでもないが、今でも60枚ほどの年賀状のやり取りを続けている。
先述のとおりだんだん歳をとって、いろいろと日常の些事が億劫となり、ついつい年一回の年賀状についても、面倒な気になっている。普段行き来のない人たちとの微かな交流なのに、そうしたことにもあまり意義を感じなくなっているのは、情けないことだ。
本格的な冬を感じさせる寒い日が何日か続き、出不精になっていたが、今日は穏やかで温かくなった。寒くなると必然的に朝の血圧も高くなって、だからと言って取り立てて具合が悪くなるわけではないものの、やはり寒さは老人を縮こませるのだ。

ほんの2-300m先の郵便局までの往復さえ、時として1-2度の息継ぎを必要とすることもあり、そんなこともこの頃は持病の一つと考えて、当たり前のこととなっている。

 

 

書は前にも書いたが、望月諒子氏のデビュー作から続いている、木部美智子というフリーのルポライターが活躍するシリーズ作品の第3作だ。
医療ミスで大学病院を追われた若い医師が、死んだ患者が怪しげな宗教家だったことから、医療ミスが殺人だったのではないかとの容疑をかけられることとなる。再就職した地方の病院で彼は、またもや患者の死に立ち会うことになり、疑いの目はますます彼を不利な状況に陥れる。
そんな中、呪殺を売り物にする老婆が、裏社会の評判となって依頼人が殺到するのだが・・・・。 ストーリーの複雑さも、行き着く先の見えなさも、だれが事件の真相を解き明かすのか、といったことさえも容易に見せない面白さはシリーズ共通のところで、小説の面白さを追求したという著者の面目躍如。

 

 

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1683.殺人者

2016年12月16日 | サスペンス
殺人者
読了日 2016/12/16
著 者 望月諒子
出版社 集英社
形 態 文庫
ページ数 403
発行日 2004/06/25
ISBN 4-08-747713-4

 

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日今日のテレビのニュースは、来日したロシアの大統領・プーチン氏一色の状態が続いた、という感じだ。
平和条約、経済協力そして北方領土と、解決すべき多くの問題はどう進展するのか?そうした期待を抱かせた二日間に亘る首脳会談だったが、なかなか一挙に進まないのが二国間の国際問題だ。
しかし、大統領の訪日を機会に重要な問題解決に向けての、出発点を確認できたことは、何にしても喜ばしいことだろう。ニュースを見聞きしても僕には詳しいことは理解できないことも多いが、今後の二国間の経済協力が、お互いの国の経済発展の基礎になることを期待したい。
もう一つ大きく取り上げられたのは、東京都知事・小池氏のオリンピック・バレー会場の決定についてだった。当初の予定通り有明アリーナに決定したことを聞いて、流石の小池氏も五輪組織委員会や、競技団体に負けてしまったのかと、ちょっぴりストレスを覚える結果だ。

 

 

話は変わる。テレビや新聞で大きく取り上げられているのが、高齢者の車の運転に関する課題だ。毎日のようにどこかで起こっている高齢者による自動車事故は、高齢者社会における重要な問題だ。超高齢者社会と言われる現状は、他人事ではなく誰しもが考えるべきことなのだろう。
先日のテレビで自動車免許取得者の年齢が上がるほど、身体能力などの自覚に乏しくなっている、という統計が示された。改正道路交通法では、高齢者による事故防止の一環として、免許更新の際の認知症に関する検査などを厳密に行うことが盛り込まれているようだが、身体能力の測定なども必要となるのではないか?
制度の改革に伴う費用の増大が懸念されるが、事故による社会的な損失を考えれば、ある程度の費用の増大はやむを得ないのではないかと考える。有識者の討論などを見聞きしていると、万全だと思える方策はなかなか見つからないが、運転者の自覚に待つことには限界のあることが、今日の大きな課題だ。偉そうなことを言うつもりでは決してない。僕も当事者の一人として、身体能力や気持ちの持ち方など、改めるべくこうした諸問題について考えたり、反省したりする毎日なのだ。

 

 

て、好きなように読もうと方針を変えたから、というわけでもないが前回読んだ著者のデビュー作を面白く読んだので、シリーズ第2作を続けて読もうと思って、市原市の図書館で借りてきたことは前回の終わりで書いた通り。
主人公であるフリーのルポライター・木部美智子の活躍を描くデビュー作「神の手」は、「デビュー作にはその作家のすべてが盛り込まれている」、と言った(言い回しは確かでないが意味は間違っていないと思う)作家がいる。読書記録を付けるようになってから、僕もいくつものデビュー作を読んでいるが、言いにつけ悪いにつけそうしたことを感じることは多い。
望月諒子氏の作品は光文社主宰の「日本ミステリー文学大賞新人賞」を受賞した「大絵画展」が初めて読んだ作品だから、よく知っているとは言えないのだが、内容も文体も異なる印象で、なるほどこれが望月諒子氏の本領なのか!と言ったような強烈ともいえる読み応えを感じたのだ。

そうしたことから第2作である本書や、続く第3作及びシリーズではあるが、大分年を隔てて書かれた第4作を続けて読もうと思ったのだ。
僕は惚れっぽいというのか、一つ気に入った作品を読むと、特にそれがシリーズであるときなど、全部を読みたくなる。多分それは僕に限らず読書好きの人なら、共通した気持ではないだろうか。 特別に気負った感じではない語り口で進むストーリーが、次第に謎の部分に光を当てるところに、僕は胸をワクワクさせながら読み進む。過去と現在が行き来する事件の根源が明らかになる展開は、思わず背筋を寒からしめる。

 

 

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1682.神の手

2016年12月09日 | サスペンス
神の手
読了日 2016/12/09
著 者 望月諒子
出版社 集英社
形 態 文庫
ページ数 407
発行日 2004/04/25
ISBN 4-08-747691-X

 

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回しばらくぶりに著者の作品に触れて、手元にあった著者の処女作を読もうという気になった。この文庫は多分2013年に読んだ「大絵画展」の面白さに、著者の他の作品も読んでみたい、と思っていた時にBOOKOFFの文庫棚で見かけて買ったものだと思う。
買ってしまうと安心して、読むのが後回しになるのはいつものことで、何かきっかけがあるまで手にしないのは僕の悪い癖だ。前回その「大絵画展」のシリーズともいえる「フェルメールの憂鬱」を読んで、しばらくぶりに著者の作品の面白さに出会い、これを機会にしばらく著者の作品を読み続けてみよう、そんな気になったのだ。
この「神の手」というタイトルは、他の作家の作品にもあって、例えば古くはアメリカのメディカル・サスペンスの大家・ロビン・クック氏の作品には、神の手を持つかのように手術をこなす医師が登場する。国内作品では今年2月に読んだ久坂部羊氏の同じタイトル「神の手」文庫上下巻があり、同様に医師の話だ。
だが、本書は“神の手”を持つのは医師ではなく、作家を目指す女性のことである。

 

 

この作品は2001年に電子出版という形で刊行されて、異例の大ヒットを飛ばした末に、集英社文庫となって再び読者の評判を勝ち得たということらしい。前述のとおりここには1万枚もの原稿をものにした、まさに神の手と呼ばれるにふさわしい女性が登場?するのだが、“幻の女”のごとく関係者の話の中に出てくるだけだ。
というようなことを書くと、限りなくネタ晴らしに近づくので…、発端は文芸誌「新文芸」の編集長・三村が、広瀬という医師からの電話で、忘れかけていた、いや忘れようとしていた過去を思い起こされる。
電話の要件は「高岡真紀という女性を知りませんか?」というものだった。三村は初めて聞く名前だが、その女性が書いたという作品のタイトルに、突然過去に引き戻されたのである。彼女・高岡真紀が来生恭子というペンネームで書いたというその「緑色の猿」は、三村にとって忘れようにも忘れられない作品で、冒頭からの文章はそらんじていたほどだった。

 

 

う何日か前に読み終わっている本の、内容明細については忘れつつあるが、著者・望月諒子氏の作家としての才能を、嫌というほど味わったデビュー作だった、ということはきっちり脳に刻み込まれた。
ここに登場?する女性はあたかも著者自身を投影するかのようだとは、解説氏の言葉だがストーリー展開や、巧みな文章表現などから、そうしたことも納得させられる。そして、単純な僕はまたしてもこの作家の作品を全部読んでみたいなどと思うのだ。
たまたま本文庫は手元にあったが、これを読んで主人公木部美智子が登場するシリーズ作品は、この後3冊あって続けて読むために、市原市立図書館の分館である姉崎公民館図書室で、その3冊を借りてきた。木更津の図書館にはなかったからだ。

 

 

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1626.パレートの誤算

2016年05月13日 | サスペンス
パレートの誤算
読了日 2016/05/13
著 者 柚月裕子
出版社 祥伝社
形 態 単行本
ページ数 337
発行日 2015/10/20
ISBN 978-4-396-63449-0

 

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レートなどと言う言葉から、会社勤めをしている頃を思い起こす。30歳からの15年間勤めていた会社は、石油卸業を主としていた中小企業から、石油ショックを機にホームセンター業へと転換、時流に乗り東証一部上場企業へと発展した。
コスト意識の高い会社だったが、社員教育には惜しげもなく投資をして、優秀な幹部社員を育てた。脱サラのトップが起こした会社とは思えないほどの、先進的な風土を漂わせて所属していた、コンサルタントグループからも高い評価を得ていた。
そうした外部での教育も定例的に行っていたが、それ以外にも業界で名高い企業コンサルタントを招いての、社内教育も頻繁に開催していた。そんな中で特に重視されたのが、経営数字のセミナーだった。
一般的には二八の法則などともいわれているが、世のすべての事柄の重要な部分は全体の2割で賄われているというやつだ。店舗の商品もその例に漏れず、売り上げの分析によってそうした傾向がわかるということで、実際に行われたのがABC分析である。その結果をグラフで著したものが俗にパレート図(パレートはイタリアの経済学者の名)と呼ばれている。

 

 

本書は地方の市役所社会福祉課に勤務する職員の物語だ。生活保護受給者の家庭を見回るケースワーカーを仕事とする男女の職員が、遭遇する事件を巡り様々な課題が浮き彫りになる。二人の先輩でベテランのケースワーカーが、担当する地区のアパートを訪問中に、火災が発生して焼け跡から彼は遺体となって発見された。しかも遺体は焼死ではなく、火事の発生前に死亡していたらしい。
古い木造アパートには5人の受給者が住んでいたが、そのうちの一人と連絡が取れなくなっていた。
彼の腕には一介の公務員の給与では買えないような高価な腕時計が。生活保護を生きる糧とする受給者の中には、不正な手段を使って受給する者もいて、ケースワーカーの訪問監視だけでは見分けのつかないケースもあって、そうした不正受給を水際で食い止めようとする、若い新米のケースワーカーたちの奮闘は、意外な事実を突き止めていくのだが・・・・。

 

 

イトルの「パレートの誤算」とは、事件を担当する刑事の口から発せられた、「働きアリの法則」と言う言葉の、「いくら頑張っても不正な受給者はいなくならない」と、頑張る若いケースワーカーのやる気を損ねる言葉だが、分析結果を表すパレート図には現れない現象を目指す彼らの努力が示されているのか?

一昨日HDDを送ったデータ復旧センターから、荷物が届いて分析を始めた旨のメールが届いた。データ障害の状況を調査するためには、5日ほどかかるということだ。調査の結果を待って復旧の可能性に来たするしかない。
一方、マイクロソフトのSky Driveに以前、多少のバックアップを取っていたことを思い出して、問い合わせると、今は名称も変わったが利用可能らしい。後ほど先方からアクセス方法を電話してくるので、そちらにもわずかな期待が持てる状況だ。
しかし、データ管理にもう少し慎重にならないと。反省ばかりでは仕方がないが・・・・。

 

 

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1622.嫌な女

2016年04月25日 | サスペンス
嫌な女
読了日 2016/04/25
著 者 桂望実
出版社 光文社
形 態 文庫
ページ数 476
発行日 2013/05/20
ISBN 978-4-334-76576-7

 

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週の金曜日(4月22日)は、診察予定日で病院に行ってきた。血圧の高い状態が続いていたが、この1カ月ほどは薬の効果か、比較的安定した数値が経緯していた。だが、少しの運動で―例えば数百メートルの歩行でも、腰が痛くなると同時に息切れがして、胸が圧迫異されるような痛みを感じる。
そうした状況をドクターに訴えると、狭心症の疑いもあるから、一度君津中央病院で診察を受けてくださいと言われる。そして今回は2種類の薬が追加で処方された。診察後、紹介状をもらい帰宅、君津中央病院に予約の電話をする。
予約受付は4月27日の午前10時に指定された。そこでどのような診断が下されるか、わずかに不安もあるが、何しろ疲れるという以外自覚症状が何もないというのが、不思議な気もする。2年前の2階からの階段を、転げ落ちた時の後遺症か、そんな思いも起こさせる。
まあ、いずれにしても加齢による様々な症状(だろうと思う)は如何ともし難い。

 

 

前の回と同様でドラマ化されたことで興味を持って読んだ。ブログのタイトル「隅の老人のミステリー読書雑感」から外れることが少しずつ多くなっているようだ。読みたいミステリーは山ほどあるのに、ミステリーとも思えない本を読むのは、やはり話題に遅れないためか?
最近は他人との付き合いも多くなく、世間の話題から遅れようが外れようが、一向にかまわないのに、なぜか後れを取ってはいけないような気分になるのは小市民の一人だからだろう。
小市民でいることを命題にする主人公の作品もあったようだが、僕もこの歳になって(今年11月の誕生日が来ると77歳だ)いまさら名を上げようといった気力もなく(いや、もともと無かったか)、平平凡凡な暮らしに満足し、幸せを感じている。

 

 

HK,BSプレミアムによる6回にわたる連続ドラマは、録画したがこの原作を読んでから観ようと思って、まだブルーレイディスクに録画したものは観ていない。
さて僕はこの原作を読み始める前は、タイトルから女の底意地の悪い戦いをイメージして、嫌な予感を抱いていたのだが、読んでみてその僕の予想が良い方に外れて、誠に淡々とした?筋運びに次第に引き込まれていったのだ。
石田徹子と言う新進の弁護士と、その遠い親戚である小谷夏子という二人の女性が主人公。
女性弁護士を引き受けてくれる弁護士事務所のない中、大学時代のゼミの教授の口利きで、ようやく萩原弁護士事務所にイソ弁として落ち着くことができた。そんな石田徹子の許に小谷夏子からの依頼が舞い込む。
幼い頃の苦く嫌な思いのある相手、小谷夏子からの依頼は結婚詐欺事件から始まって、いろいろな詐欺事件に巻き込まれる。その詐欺師がなんろ小谷夏子なのだった。だが、そんな小谷夏子と関わっているうちに、石田徹子はだんだん彼女に惹かれていることに気づくのだ。人に喜びを与える魅力を持つ夏子に付き合って、年寄りになるまでの長い長い人生のドラマである。
詐欺師とその後始末をする弁護士の物語は、時に感動を呼び涙を誘われることもあり、最後まで気を抜けないほどに面白く読める。

 

 

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1608.飢餓海峡

2016年03月10日 | サスペンス
飢餓海峡
読了日 2016/02/29
著 者 水上勉
出版社 新潮社
形 態 文庫
ページ数 (上)433
(下)419
発行日 1990/03/25
ISBN (上) 4-10-114124-X
(下) 4-10-114125-8

 

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らまいた種だから、自分で刈り取らなければならないのは、当たり前のことなのだが・・・・。
何の話かと言えば、僕の息子が入所している施設・ケアホームあけぼの荘を運営する、社会福祉法人薄光会の保護者・家族の会のうち、天羽支部で何かコミュニケーションを円滑にするための方策はないかと思い、会報を作ることを提案して始めた。
極々軽い気持ちで、初めて昨年7月にその第1号を保護者の皆さんに配布した。素人の作ったものにしては、まあまあの出来だと自画自賛の気分で、10月に配布する第2号もその余勢をかって作り上げた。
そして、今回来る3月13日の支部会に配布する、第3号に取り掛かったのだが、5カ月もある長い期間にもかかわらず、作成は遅々として進まず―長い期間がかえってまだ間があるという気持ちにさせたのか―間近になって焦りを募らせる始末だ。
昨日になってようやく最後の写真を撮り終えて、最後の1ページをプリントした。

 

 

問題は製本である。前2号より2ページ増えて、18ページとなったから、9枚の右端を糊付け圧着するという作業が待っている。こんなことは好きでもなければとても一人でできることではない、などと思いながらの作業を始める。
それでも3回目ともなると、必要な道具も分かり手際も多少良くなってきた。昨日午後から始めた作業は、本日ごぜn9時過ぎに終了する。ただいま最後の5冊を2枚の板にクランプで挟み、バイスで圧着してある。
最初の頃はノリは普通のアラビアの理を使ったが、2回目以降は念を入れて木工用のボンドを使っている。僕は誰にも聞かずにこの糊付けの製本を始めたのだが、先達てあるメーカーが出している取扱説明書が糊付け製本をしていることに、こんな製本が正式にあったのだと驚いた。
先行きもっと多くの製本が必要となったときには、そうした製本を行う業者を探してみようと思う。
まあ、そんなこんなでまいた種を借り終えることができた、という一仕事が終わったところである。

 

 

いこといつか読もう読もうと思いながら、手にすることができなかった作品だ。あまり長いことそう思っていたので、そのまま読まずに済ませてしまうのか?と、そんな思いも浮かんで自分でもよくわからなかった。
ところが、読むきっかけなどと言うものは、どこに転がっているか分からないものだ。先日しばらく行くことを控えていたBOOKOFF木更津店で、前回読んだ柚月裕子氏の「蟻の菜園」を衝動買いしたことを書いたが、単行本の棚から同書を引き抜いて、レジに向かう途中108円の文庫棚で、本書上下巻がきれいな状態で並んでいるのが目に入ったのだ。まるでここに在りますよと言わんばかりに。そんなことで僕は即座に両方を手にレジに向かったのである。
この上下巻は多分同じ読者に読まれて後、BOOKOFFへと買われたか、あるいはほかの古書店に売られたものが回り回って、BOOKOFFへと来て僕の手に入ったか?とにかく手放した読者はきれい好きか?あるいは本当に本が好きなのか、これほど新品同様のきれいな状態の文庫は珍しい。
そのような本を手にして読めることに、僕は幸せを感じるのだ。少し前にこれとは正反対の汚い本に接したことがあった。例え手放すにしても、あるいは古本であっても、丁寧に扱うのは読書人としての最低のマナーだと思う。

 

 

それが出来ない者に本を読む死角はない、とさえ僕は思っている。
あまりにもきれいな本に接したから、余分なことまで思い出してしまった。しかし、本を大事に扱う人を僕は尊敬する。こちらの心まで洗われるようで、気持ちよく読めるから内容までもが、一段と面白く読めるような気がするのだ。
ところで、僕はこの作品が東映で内田吐夢監督のもと、三国連太郎、伴淳三郎、高倉健氏らの競演で映画化された1965年映画館で見て以来、テレビでも何度か見てその都度、俳優各氏の熱演やその完成度の高さに感動してきた。映像化はテレビでも行われており、いくつかのドラマとなっていたから、もちろん僕も見ている。
本を読み始めて僕はわずかな記憶に残る、映画のモノクロの場面を思い起こしながら、原作の重厚ともいえる物語の語り口に魅せられていった。
作者の水上勉氏(このころは「みなかみつとむ」ではなく「みずかみつとむ」と名乗っていたらしい)は、ミステリー作家と言われることを好まなかったようだが、この作品を読んでいると、そうした作者の思いにもうなずける気がする。

なるほどミステリーの謎解きと言う観点からすれば、読者のそうした興味を引くことは少ないかもしれない。だが、この物語に登場する人物たちは、それぞれが現実の世界を生きているようだ。いろいろなキャラクターたちが、10年もの歳月を通して各々の生き様を見せて、あたかもドキュメンタリー風のドラマを見せてくれるのだ。

 

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1607.蟻の菜園

2016年03月07日 | サスペンス
蟻の菜園
読了日 2016/02/22
著 者 柚月裕子
出版社 宝島社
形 態 単行本
ページ数 372
発行日 2014/08/15
ISBN 978-4-8002-3064-5

 

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日しばらく行ってなかった木更津市内のBOOKOFFで、本書を見かけてつい衝動買いをした。それについては前にも書いたが、僕のまるで子供みたいに少し金を持てば、使わなければならないような気になって、予定外の出費をしてしまうのはどうしようもない悪い癖だ。
まあ、それでも今回は間をおかずに読んだから、良いようなものだが時には、そうして買い込んだ本を読まずに積んでおくのがもう一つの悪い癖で、ため込んだ本は現在200冊?否300冊かな?
これから先しばらくは本の心配をせずに済むということで、それほど深刻になっているわけではないのだが・・・・。

 

 

著者の作品に惹かれるのは、佐方貞人という検事の活躍によってだ。「最後の証人」をはじめ、「検事の本懐」、「検事の死命」と続いた裁判小説に、この作者の作品は見逃せない、と僕に思わせてしまったのだ。
だが、本書はそうしたシリーズからは外れて、現実の事件をモデルにしたクライムストーリーだ。
大分世間を騒がせた事件を思い起こさせる展開が、思わぬ結末を導くのはやはりこの作者の得意とするところらしく、フィクションとしての面白さを味わうことができるのだ。
出来れば著者の作品は全作読みたいと思うのだが、僕にすれば裁判ドラマをもっと書いて欲しい。法曹界とは無縁の著者が、面白い裁判ドラマを描けることに尊敬の念を抱くのは、小杉健治氏と同様でもっともっとその才能を発揮してもらいたいものだ。
それにしても、好きな作家が次々と作品を発表し続けることに、大いなる喜びを感じている。まだまだ自分では読むべき過去の名作ミステリーが、山ほどあることも忘れさせるような、新たな傑作が出てくるから、健康な体で長生きできるよう祈るしかない。

 

 

の日曜(3月13日)に開催される、天羽支部会(僕の息子がお世話になっている施設利用者の保護者家族の会合)に、配布予定の会報の制作にここ何日か追われている。前回の昨年10月4日から間が空いたせいか、のんびりし過ぎて間際になって慌てている始末なのだ。
それでも、合間合間に少しずつではあるが、いろいろ事業所の職員に依頼したり、脚を運んだりしておいたから、どうやら期日までには間に合いそうだ。昔と違って少しずつではあるが、障碍者への認知度が高まって、世間の人たちの障碍者に対する見方が、温かくなってきたような昨今当事者である我々も、わが子への接し方を変化させなければならないような気がしている。
会報はそんなことへの、僅かながらの手助けとなれるようの思いを込めている。

 

 

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1602.図書館員

2016年02月21日 | サスペンス

タイトルorTitle

図書館員
THE LIBRARIAN
読 了 日 2016/02/10
著  者 ラリー・バインハート
Larry Beinhart
訳  者 真崎義博
出 版 社 早川書房
形  態 文庫2巻組
ページ数 280/283
発 行 日 2007/05/25
ISBN 978-4-15-076704-4
978-4-15-076705-1

 

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回書いたように、先週の水曜日(2月18日)は息子の入所している、福祉施設の保護者・家族の打ち合わせがあって、富津市の太陽(ひ)のしずく(生活介護事業所だが、社会福祉法人薄光会の本部を包括している)に行ってきた。僕の都合で午後からにしてもらったので、会合は1時半から始まった。
僕が所属しているのは、天羽支部と言ってケアホームの入所者の保護者・家族と、在宅介護で太陽(ひ)のしずくの利用者の保護者・家族の集まりである。支部の会合は毎事業年度ごとに4回開催されて、法人本部からの報告事項や、支部独自の催しなどの計画や、報告が行われる。次回は3月13日の日曜日に、平成27年度最後の支部会が開催されるので、その事前の打ち合わせである。
支部長、副支部長、会計、会計監査担当が出席するのだが、僕はそれらのどの役でもないけれど、昨年7月から発行している会報の制作を担当しているので参加しているというわけだ。 今度の支部会の会合で発行する会報はようやくの第3号、どうやら3号廃刊にはならなくて済みそうだが、一回ごとに難しくなる感じだ。細かいところでは、施設職員の手助けをお願いしているが、利用者のイベントに関する写真をとっても、こちらが目指す方向とはかかわりのないものが多く、多くの写真から記事に沿った写真を選ぶだけでも一仕事である。

 

 

それでも3月13日号の内容はどうやらほぼ埋まって、無事に発刊できそうだ。以前にも書いた覚えがあるが、僕の息子が昭和60年に入所した豊岡光生園(社会福祉法人薄光会の最初の入所施設)では、開園当初から職員たちが「園だより」と名付けた広報紙を定期的に発行して、保護者・家族に配布していた。記事は当時理事長だった鈴木栄氏をはじめ、職員たちの利用者に対する思いなどが寄せられて、職員の真摯な記事や手書きの暖かさは、利用者を預けている保護者たちを安心させるとともに、わが子らの元気な様子を知ることができた。
その後法人全体の広報誌として名称も「きらめき」と変わったが、古くからの保護者である僕などは、昔の手書きの「園だより」を時々懐かしく思い起こしている。
僕が天羽支部の会報を作ろうとしたのも、そうした以前の広報誌の雰囲気に、できるだけ近づけようとする思いもあったのだ。可能な限り長く続けるつもりだが、それにはもっと大勢の人たちを巻き込んでいく必要がありそうだ。

 

 

純な僕は、こういうタイトルについつい惹かれて、多分面白いのではないかと期待をもってしまうのだ。
いつもそういう勘みたいなものが当たって、面白い本に出合えればこんな楽しいことはないのだが、残念ながら往々にしてそれは外れる。
まあ、一読者に過ぎない僕だから、そうしたことは当然とも思えるが、まれに思い通りの面白い本に出合った時は、自分の選択眼に誇らしさを感じるのだ。だが、本書はどこかで書評を見たか聞いたか、詳しいことは思い出せないが、ただ単にタイトルに引かれて買ったものではない。
それでも面白かったことは間違いなく、どういう経緯かはともかくとして、面白く読めた本に出合えた幸せを感じている。こうした翻訳作品を読むと、世界を相手にしたスケールの大きな作品は、やはり英語圏の方が人々に受け入れられやすいのかと、わが国の作品がなかなか世界に向かって浸透していかない?ことを半ば不条理のように感じてしまうのは僕だけだろうか?

ところで、原題がTHE LIBRARIANとなっているから、リブラリアンかと思っていたら、ライブラリアンと発音するようだ。CSのAxnミステリーで、毎月放送されている「リブラリアンの書庫」という講談社の広報番組がある。毎回見ている僕は図書がライブラリイだから、図書に関する仕事をする人―例えば司書など―をリブラリアンと呼ぶのを当たり前のように感じていた。
本の内容とはあまり関わりのないことだが、ちょっと気になって辞書を引いてみた。

 

 

多方面で活躍する著者らしく、この作品は大学の図書館員・デヴィッド・ゴールドバーグを主人公とした、スパイ小説とも取れるサスペンスストーリーだ。
大学の経済事情から、やむなく解雇した女性・エレイナから、その後見つかったアルバイトを都合で、2-3日休まなければならないので、その間代わりに行ってもらえないだろうか、と言う依頼をデヴィッドじゃ承知した。アルバイト先が事業で成功した財閥の運営する図書館だったからだ。
だがそれが元で、、彼は大統領選挙に絡む陰謀に巻き込まれることになる。身に覚えのないことで、司法省をはじめ警察から指名手配されることになる。そうしたストーリーの展開は、身の置き場のなくなった主人公とともに、こちらまでその恐怖を味わうことになるのだ。

 

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1600.狼よ、はなやかに翔べ

2016年02月15日 | サスペンス

                                            

狼よ、はなやかに翔べ
読 了 日 2016/01/24
著  者 藤原審爾
出 版 社 角川書店
形  態 文庫
ページ数 252
発 行 日 1982/01/10
書肆番号 0193-125721-0946(0)

 

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検の予約をしてあったので、9時半過ぎに車をオートバックスに持って行った。一日で終わるから、代車は申し込まなかったので、帰り道は歩きメデスだ。だが、最近は少し歩いただけでも、疲れたり息切れを感じるようになって、たった1kmの道を途中何度も立ち止まって息を整える始末だ。
昨年11月半ばに起こった突然の腰の痛みに、ギックリ腰かと驚いたことがあったが、その後遺症なのか?仰向けに寝た時に背中の左側の一ケ所が、痛むことが続いていたり、気にはなっているが、専門医を訪ねるのがなんとなく億劫で、そのままになっている。
息切れや疲れは年相応の症状だろう、そんな考えや面倒なことを先延ばしにする癖も相まって、そのうち何とかなるだろう、などというバカな思いも・・・・。血圧の不安定も、そうしたことに関わりがあるのだろうかと、思いは乱れる。次回の通院は26日だから、その際にはいろいろドクターに相談してみよう。

 

 

国際的なブックナンバー、いわゆるISBNが採用されていない時代の本だから、相当前に買った本だとは言えないのが、僕の積ン読本の面白いところだ。いやいや、別に面白くもないが、こうした古い本も時として、BOOKOFFの棚にある。いや、これはBOOKOFFではない古書店で買ったものだったか?
そんな益体もないことで頭を悩ますことはない。しかし、人はなぜどうでもいいことにこだわるのだろうと、時々僕は自分のことをそう思う。僕はしょっちゅう目的と手段を取り違えて、手段が目的になってしまうことがあるのだ。
例えば、少し前に毎日飲むコーヒーについて書いた。できるだけおいしいコーヒーを飲むために、400g入りのコーヒー粉を買ってきて、それを1杯分ずつジッパー付きの小袋に入れて、それを20袋くらいにまとめてさらに少し大きめの袋に入れてから、冷凍庫に保存しておく。
小さなポリ袋は何度か使ううちに劣化するので、新しい福利に変えるのだが、今使っている袋は何年か前に旭化成で生産中止となっていて、同様のサイズの袋が探してもないので困った。同じ幅の袋は縦の長さが長いのである。そこで僕はポリ袋用のシーラーを買って、適当なところをシーラーで圧着して切りそろえたのだ。
と、そんな馬鹿なことにわずかな額とは言いながら、金や神経を使うのが僕の全くの悪い癖なのだ。

 

 

調に読書が進めていたら、この1600冊目は昨年11月2日以前に終わっていたはずなのだが、前にも書いたように昨年の一時期、長いこと休んでいたから、今頃になってしまった。
記念すべき?1600冊目は動物小説となった。僕はタイトルからハードボイルドをイメージしてしたのだが、タイトルそのものの狼の生き様を描いた表題作をはじめ、下表のように4篇からなる動物を主役とする短編集だ。人のうかがい知れない動物たちの本能や生態が、克明に描かれて動物によるハードボイルドともいえるストーリーに、感銘を受ける。

 

収録作
# タイトル
1 狼よ、はなやかに翔べ
2 黒豹よ、魔神のごとく襲え
3 赤い人喰熊
4 山犬たちが吠える雪夜

 

 

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1595.希望

2016年01月31日 | サスペンス
希望
読了日 2016/01/09
著 者 永井するみ
出版社 文藝春秋
形 態 単行本
ページ数 525
発行日 2003/12/15
ISBN 4-16-322450-5

 

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圧が不安定な状態なので、毎朝、食事の前に血圧を測り薬を飲む、と言う状態がかれこれ2か月以上続いている。ところがうちのカミさんは、もう20年も前からリウマチの発症で、おまけに軽い糖尿の気(け)があって、毎日朝昼晩の食事前に、6~7種類の薬を飲んだり、インシュリンの注入をしたりと、涙ぐましい努力をしている。それに比べれば僕の場合など児戯に等しいようなものだ。
そんなカミさんが、従来使っている血圧計の、使い勝手が悪くなったので、新しいものを買いたいというから、28日に車でかかりつけの病院の薬局に連れて行った。ところが薬局では血圧計は取り寄せになってしまったということだった。薬局員の「ヤマダ電機でも扱ってますよ」とのアドバイスで、ヤマダ電機に行って陳列されたものを2-3試してみる。しかしどれも彼女の気に入るものがなく、すぐ近くのケーヨーD2に行ってみる。
そこで、ようやく気に入ったものを見つけて、買う。気に入った理由の一つに安かったということもあるのだ。カミさんは昨年8月の誕生日で80歳となったが、彼女の経済観念は衰えることはない。これで健康面も良いなら言うこと無しなのだが、そううまくいかないのが世の常だ。

 

 

僕の方は翌29日に予約してあった病院の循環器内科に行く。9時半の予約だったから、9時過ぎにつくように車で家を出る。昨日までの好天が嘘のような、どんよりと曇った空から小雨がぱらついている。金曜日の午前中なのに、病院は思いのほかすいている。
予約票と診察券を受付に渡してから、院内に設置された血圧計で、血圧を測る。これは言われなくとも暗黙のうちに行う通例の作業だ。171/100という数値はいつもより高めだ。9時半を少し過ぎたころ名前を呼ばれて、 診察室に入る。今までとは違うドクターの問診を受ける。既往症について聞かれるが、過去に重い病気に罹ったことはなく、強いて挙げるとすれば20代前半に虫垂炎の手術をしたくらいだ。
そこで、「もう一度尿検査を詳しくする」と言うことで、採尿する。薬も従来のものと異なるものが2種類処方された。次回はおおよそ1か月後の2月26日に受診と言うことで、予約票が渡された。薬局で処方された薬を受け取り、帰途に就く。

僕の場合は、生活に不便をきたすような自覚症状もないので、気を付けると言っても、どうすればいいのか判らず、いつも通り好き勝手にしているのだが、あまり気にしすぎるのもストレスの元だから、のんびりと構えている。

 

 

きな作家を増やしていくと、残された時間に限りのある僕にとって、読み切れなくて心残りを余儀なくされる。そんな思いも湧くのだが、たくさんの本を読んでいると、どうしても比例して好きな作家は増えていく。
永井するみ氏の作品も初めて読んだ(「枯れ蔵」新潮社刊)時から好きになって、本書で13冊目となる。他にアンソロジーの短編を2編読んでいるから、好きな作家の上位と言っていいだろう。著者の作品の傾向は多岐に亘っているが、今まで読んだ作品からの印象は、クライムストーリーのスペシャリストと言うのが僕の中での評価だ。
本書はだいぶ前に買った本で、例によって僕の気まぐれから積ン読本の1冊となっていた。2段組み525ページは今の文庫なら、上下2巻組となるような長編ストーリーだ。現実の世界では日常茶飯のように起きる犯罪事件だが、まれにはそうした犯罪に対して、喝采を送る、あるいは傾倒していく人間もいるようだ。 自らが罪を犯すことなく、罪を犯した人間に思いを寄せるばかりでなく、その罪びとにさらなる罪を重ねさせようとする者もいるということが、広い世の中には居るのかもしれない。

 

 

と言ったことを考えさせるのが本書の内容なのだ。僕はこの世がすべて理屈通りに動いているとは思わないが、本を読む都度いろいろと複雑な性格の登場人物に出会って、僕の知らないところではそうした人物が入り乱れて、事件が発生していることも当たり前に思うのはどうしてか。
本書は少年犯罪の加害者とその保護者、事件発生とその後の彼らの生活の変化など、さまざまな角度から描写されて、少々胸の痛む内容だが著者の語り口は、読みやすくストーリーの中に誘い込まれる感じだ。
長い物語は全体として暗い話だから、あまり売れなかったのではないかと、余分なことを思わせる。少年院から出て、帰宅する少年を待っている母親の、彼にどう対処していいのかわからなく、カウンセラーに通う状況が描かれる。そうした母親の優柔不断さが、犯罪を犯した少年にどう影響するのかなど、先行きの展開に引かれながら、読み進める。だが、意外な終局に心を乱される感じで、そこで初めてタイトルの意味も分かるのだが・・・・。

 

 

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