隅の老人のミステリー読書雑感

ミステリーの読後感や、関連のドラマ・映画など。

1608.飢餓海峡

2016年03月10日 | サスペンス
飢餓海峡
読了日 2016/02/29
著 者 水上勉
出版社 新潮社
形 態 文庫
ページ数 (上)433
(下)419
発行日 1990/03/25
ISBN (上) 4-10-114124-X
(下) 4-10-114125-8

 

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らまいた種だから、自分で刈り取らなければならないのは、当たり前のことなのだが・・・・。
何の話かと言えば、僕の息子が入所している施設・ケアホームあけぼの荘を運営する、社会福祉法人薄光会の保護者・家族の会のうち、天羽支部で何かコミュニケーションを円滑にするための方策はないかと思い、会報を作ることを提案して始めた。
極々軽い気持ちで、初めて昨年7月にその第1号を保護者の皆さんに配布した。素人の作ったものにしては、まあまあの出来だと自画自賛の気分で、10月に配布する第2号もその余勢をかって作り上げた。
そして、今回来る3月13日の支部会に配布する、第3号に取り掛かったのだが、5カ月もある長い期間にもかかわらず、作成は遅々として進まず―長い期間がかえってまだ間があるという気持ちにさせたのか―間近になって焦りを募らせる始末だ。
昨日になってようやく最後の写真を撮り終えて、最後の1ページをプリントした。

 

 

問題は製本である。前2号より2ページ増えて、18ページとなったから、9枚の右端を糊付け圧着するという作業が待っている。こんなことは好きでもなければとても一人でできることではない、などと思いながらの作業を始める。
それでも3回目ともなると、必要な道具も分かり手際も多少良くなってきた。昨日午後から始めた作業は、本日ごぜn9時過ぎに終了する。ただいま最後の5冊を2枚の板にクランプで挟み、バイスで圧着してある。
最初の頃はノリは普通のアラビアの理を使ったが、2回目以降は念を入れて木工用のボンドを使っている。僕は誰にも聞かずにこの糊付けの製本を始めたのだが、先達てあるメーカーが出している取扱説明書が糊付け製本をしていることに、こんな製本が正式にあったのだと驚いた。
先行きもっと多くの製本が必要となったときには、そうした製本を行う業者を探してみようと思う。
まあ、そんなこんなでまいた種を借り終えることができた、という一仕事が終わったところである。

 

 

いこといつか読もう読もうと思いながら、手にすることができなかった作品だ。あまり長いことそう思っていたので、そのまま読まずに済ませてしまうのか?と、そんな思いも浮かんで自分でもよくわからなかった。
ところが、読むきっかけなどと言うものは、どこに転がっているか分からないものだ。先日しばらく行くことを控えていたBOOKOFF木更津店で、前回読んだ柚月裕子氏の「蟻の菜園」を衝動買いしたことを書いたが、単行本の棚から同書を引き抜いて、レジに向かう途中108円の文庫棚で、本書上下巻がきれいな状態で並んでいるのが目に入ったのだ。まるでここに在りますよと言わんばかりに。そんなことで僕は即座に両方を手にレジに向かったのである。
この上下巻は多分同じ読者に読まれて後、BOOKOFFへと買われたか、あるいはほかの古書店に売られたものが回り回って、BOOKOFFへと来て僕の手に入ったか?とにかく手放した読者はきれい好きか?あるいは本当に本が好きなのか、これほど新品同様のきれいな状態の文庫は珍しい。
そのような本を手にして読めることに、僕は幸せを感じるのだ。少し前にこれとは正反対の汚い本に接したことがあった。例え手放すにしても、あるいは古本であっても、丁寧に扱うのは読書人としての最低のマナーだと思う。

 

 

それが出来ない者に本を読む死角はない、とさえ僕は思っている。
あまりにもきれいな本に接したから、余分なことまで思い出してしまった。しかし、本を大事に扱う人を僕は尊敬する。こちらの心まで洗われるようで、気持ちよく読めるから内容までもが、一段と面白く読めるような気がするのだ。
ところで、僕はこの作品が東映で内田吐夢監督のもと、三国連太郎、伴淳三郎、高倉健氏らの競演で映画化された1965年映画館で見て以来、テレビでも何度か見てその都度、俳優各氏の熱演やその完成度の高さに感動してきた。映像化はテレビでも行われており、いくつかのドラマとなっていたから、もちろん僕も見ている。
本を読み始めて僕はわずかな記憶に残る、映画のモノクロの場面を思い起こしながら、原作の重厚ともいえる物語の語り口に魅せられていった。
作者の水上勉氏(このころは「みなかみつとむ」ではなく「みずかみつとむ」と名乗っていたらしい)は、ミステリー作家と言われることを好まなかったようだが、この作品を読んでいると、そうした作者の思いにもうなずける気がする。

なるほどミステリーの謎解きと言う観点からすれば、読者のそうした興味を引くことは少ないかもしれない。だが、この物語に登場する人物たちは、それぞれが現実の世界を生きているようだ。いろいろなキャラクターたちが、10年もの歳月を通して各々の生き様を見せて、あたかもドキュメンタリー風のドラマを見せてくれるのだ。

 

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