降版時間だ!原稿を早goo!

新聞編集者の、見た、行った、聞いた。
「降版時間」は新聞社整理部の一番イヤな言葉。

★『トリダシ』の新聞社を読む (63)

2015年11月21日 | 新聞

( 11月19日付の続きです )

スポーツ新聞の舞台裏を活写した、本城雅人さん(49)の新刊小説『トリダシ』(文藝春秋、本体1,750円)=写真
同小説は、
「四の五の言ってねぇで、とりあえずニュース出せ!」
を口癖にしている、東西スポーツ野球部デスク・鳥飼義伸(とりかい・よしのぶ=44歳)が主人公の連作集。
第4話「裏取り」から、新聞社編集局や同整理部に関係する描写に注目してみた。


( 193ページから )
「しかし今回の誤報で露崎が飛ぶかと思ったら、まさか自分が飛ばされるとは思わなかった❶よ」
「聞いたよ。大阪だってな。❷だけど社会部で良かったじゃねえか。おまえに経済は似合わねえよ」
「ああ、また事件を追えるのが唯一の救いだ」
大阪社会部次長の内示が出た。おそらく三年は帰ってこられないだろう。次長の肩書き❸は付いているが、大阪には大阪の順番がある。❹これで同期で最初に部長になる道は途絶えたに等しい。
「鳥飼、おまえの言う通りだったよ」
「言う通りって、なにがだよ」
「飛ばされた時、真っ先に味方の顔をして近寄ってきたヤツが、飛ばした張本人だと言ってたじゃないか。経済部長から異動を告げられたら、すぐに露崎が飛んできて『俺は反対したんだが、大阪のテコ入れのためにおまえを出すって局長が聞かなくてな』と言われたよ」
「露崎は気が小せえからな。おまえに恨まれる前に言い訳をしておきたかったんだろ」



❶今回の誤報で……飛ばされるとは思わなかった
共同ピーポのアナウンスが流れるなか、次第に部員が出社しはじめ、騒がしくなってきている東西スポーツ編集局。
スクープと誤報に関わったデスク2人が呟いているシーン。
湯上記者は、局次長を「露崎」と言い捨てている。対する鳥飼デスクの、ぞんざいだが温かみある受け答えがいい。

ちなみに「誤報」は、本城作品の中ではキーワード(と思う)。
次作長編『ミッドナイト・ジャーナル』(講談社から来年2月発売予定)は、ある新聞社の誤報から始まる。買わなきゃ!

❷大阪だってな
東西新聞の規模は不明だけど、湯上記者は入社以来東京本社勤務だったようだ。
一から取材ルートをつくらなきゃならないので大変かもしれないけど、
裏表のない湯上記者なら、すぐ東京に戻れるって!(←僕が言っても仕方ないけど)

❸肩書き
新聞用字用語集「記者ハンドブック」では、
かたがき=肩書
に表記統一(つまり「き」トル)とあるけど著作物だからOK(何が言いたい?)。

❹大阪には大阪の順番がある
同じ新聞社とはいえ、それぞれの本社には人事の順番があるということ。あるあるある。
まぁ~、各本社で人脈を広げられると思えば、いいんじゃないの、湯上記者。

第4話「裏取り」編は終了。

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