降版時間だ!原稿を早goo!

新聞編集者の、見た、行った、聞いた。
「降版時間」は新聞社整理部の一番イヤな言葉。

★ブラック新聞社?=「北海タイムス物語」を読む (106)

2016年05月25日 | 新聞/小説

(5月23日付の続きです。写真は、本文と関係ありません)

小説新潮に、増田俊也さん(50)の「北海タイムス物語」が連載されている。
僕は以前、北海タイムスと提携していた「日刊スポーツ北海道」に知人がいたので、札幌の北海タイムスに何回か行ったことがあった。
というわけで、増田さんの青春物語@新聞記者編ともいえる同小説に注目——の第106回。

【小説の時代設定と、主な登場人物】
バブルど真ん中! 1990(平成2)年4月中旬@北海タイムス札幌本社ビル。
▽僕=北海タイムス新入社員・野々村巡洋(ののむら・じゅんよう)。東京出身23歳、早大卒
▽秋馬(あきば)=同紙整理部員で、野々村の3年先輩。空手部出身
▽松田駿太(まつだ・しゅんた)=野々村と同期の北大中退24歳。柔道部出身。小説作者・増田さんの投影キャラと思われる
▽権藤(ごんどう)=整理部員

【 以下、小説新潮2016年1月号=連載④ 455~456ページから 】
たしかにそれではもたない。二日酔い❶で朝飯も抜いてきた。
それにしても朝十時前に出社して夜十一時って、十三時間も労働時間があるのか。
整理部は夕刊のとき、朝刊作業が始まるまでにみんなで昼飯食いに行く❷んだ。今日は東区役所の職員食堂に行く」
権藤さんと向かい合ってご飯を食べるなんて無理だ。誰もそれをわかってくれない❸のか。
「あの、実は用事が……」
「用事?」
「マンションの書類とか出さないといけないんで」
嘘をついた。
「じゃあ四時半前くらいまでには戻っておいでよ」
片手を上げ、松田さんも出ていった。
もうもうと上がる煙草の煙❹の向こうから地方部の人たちが怪訝そうに❶僕を見ている。泣いた新人だと噂しているのだろうか。ここにいるのは、もう限界だ。


❶二日酔い/怪訝そうに
新聞社校閲部の赤字要確認センサーが鳴るところ(たぶん)。
▽ふつかよい宿酔)→二日酔い
▽けげん怪訝)→けげん
( ● =漢字表にない音訓、△=漢字表にない字)
——だけど、著作物なのでこのままで行ってください。

❷整理部は夕刊のとき……昼飯食いに行く
1990年当時、北タイ紙に社員食堂はなかったようだ。
札幌・東区役所は北11条東7丁目で、北タイは(小説の設定では)地下鉄西11丁目駅近くにあった。
てか、朝刊編集が始まる前に整理部がゾロゾロ食事に出るのは、どこの社も同じなのだなぁ。

❸誰もそれをわかってくれない
なんとなく小説主人公の野々村くんに共感・共鳴しにくいのは、このあたりか。
関係ないけど、映画「大人は判ってくれない」(フランソワ・トリュフォー監督)は1959年、同「誰も知らない」(是枝裕和監督)は2004年。

❹もうもうと上がる煙草の煙
1990年当時の新聞社編集局は、全面喫煙可(新聞社によって異なるけど)。
会議では編集局長や局次長はスパスパ吸うし、部員の机の上にはアルミ製灰皿が常備してあったし。
(読売新聞出身の堂場瞬一さんは「新聞社で喫煙がうるさくなったのはここ15年ほど」と書いている。ちなみに、堂場さんも喫煙者)
編集局が全面禁煙になったのは、CTS端末やパソコンが本格導入された1993年以降かな。

————というわけで、続く。

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