降版時間だ!原稿を早goo!

新聞編集者の、見た、行った、聞いた。
「降版時間」は新聞社整理部の一番イヤな言葉。

★活版では、こう組んだ(10)

2014年06月17日 | 新聞


【 きのう6月16日付の続きです。写真は、本文と関係ありません 】
新聞社で1990年代初頭まで行われていた、鉛活字を使った活版組み版( →いわゆる「ホット」。対して、コンピューター組み版編集CTSを「コールド」と呼んだ )。
活版大組みで、僕たち整理部はこう組んだ、忘れないうちに書き遺しておこう、の第10回。
*CTS=シー・ティー・エス。Computerized Type-setting System。
1960~80年代、朝日新聞社、日本経済新聞社の2社がそれぞれ独自に研究、米IBMと日本IBMが技術協力して開発した。
日本経済新聞社東京本社は1978年にアネックスを、朝日新聞社東京本社は1980年にネルソンをそれぞれ全面稼動した。
その時つくられたソフトの一部は、パソコンの文字訂正などに転用された。
*お断り=新聞社によって、作業の名称やシステムは異なります。


▼降版時間まで13分@とある新聞社の製作局大組み台
=登場人物は13日付、組み紙面イメージは14日付参照してくださいね (^O^)/

時間差があるとはいえ、各面それぞれ降版時間まで15分を切った大組み。
校閲直しゲラが大量に詰まっていたため、赤字処理(*1)で騒然としている製作局。
と、と、とにかく今は急いで組み上げねばならぬ!と僕たちはアタマ記事に14行3段の凸台を含め、
「24行で折ってくださいっ」
大組み・池さん「よしっ、ちょっと当たってみるな」
と言いながら、倍尺(*2)を鉛活字ゲラに当て、残り行数と右下2段ボックスを計算した。

▼急げっ降版時間まで12分だぞ!

大組み・池さん「...........おしっ、行けるっ。んじゃあ、24行で折るな。6ヤマ(*3)は何だい!」
整理・僕「ダブル・リーダーケイ6段!」
大組み・池さん「おっと、◯◯ちゃん(←僕のことね)ケイ切ってきてくんねーかな。
ちょうど切らしているんだ、ダブル点ケイ」
と言いながら、手は次から次と活字を掴み、大組みを急いだ。
「わ、わ、分かった。ケイ切ってくるっ」
と僕はケイ台(*4)に走った。
熟練の活版大組み者だと、1分かからず80行ぐらいはイッキに組めるから安心なのだが、問題は
「校閲直し=赤字処理」問題
だった。
今のままでは、赤字を直していないから
「未校」(みこう)
なのだ。
……………長くなったので、続く。


(*1)赤字処理=あかじしょり
この場合は、校閲の赤字記入ゲラを見て
①直すべき活字を棚から一本一本拾う文選さん
②文選が拾った直し用活字を、一本一本ハンコにさす植字&小組みさん
のこと。
鉛活字を「拾う」と「さす=直す」は違う作業者なのだ。

(*2)倍尺=ばいじゃく
各新聞社特注の編集用スケール。
55~33行間の行数もすぐ分かるように、各社で工夫を凝らした。
「倍」は編集・製作で使う新聞の基本単位。
現在も人事などの組みに使われている、1段15字組み時代の小さな扁平活字のタテが、
1倍=88ミルス=コンピューター組み版では11ミルスを1U(ユニットの略、ユー)=8U

(*3)6ヤマ=ろくやま
6段のヤマケイ、の意味。
ヤマは、ケイ上下に4倍ほどのアキがあり、
対して、アキがないケイを「仕切りケイ」と言った。

(*4)ケイ台=けいだい
リーダー、カスミ、無双、三柱・四柱、ウラ・オモテ、ハナ柄................など、各種ケイを二分・全角サイズで揃えていた台。小組みをつくる台のそばに設置していた。
僕たち整理が好きなケイを切るためにか、金属製カッターも置かれていた(→あのカッター、気をつけないと、けっこう危なかったんだよね……)。

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