降版時間だ!原稿を早goo!

新聞編集者の、見た、行った、聞いた。
「降版時間」は新聞社整理部の一番イヤな言葉。

★『紙つなげ!』で思い出した❶

2014年07月13日 | 新聞/小説

『エンジェルフライト/国際霊柩送還士』で2012年第10回集英社・開高健ノンフィクション賞を受賞した、佐々涼子さん(46)の最新刊を読んでいる。

『紙つなげ!彼らが本の紙を造っている/再生・日本製紙(にっぽんせいし)石巻工場』(早川書房、本体1,500円)=写真
2011年3月11日。
三方から大津波にのまれ、瓦礫の山と化した同石巻工場。
誰もが再稼働不能と見たが、わずか半年で奇跡の復興を遂げた同工場の、3.11以後を追ったノンフィクション。
悪夢の大震災後、被災地ではたくさんあった事実の一つなんだろうけれど、
ページをめくるごとに................活字が滲んだ、泣けた。
ちなみに、同書で使用されている本文用紙は、日本製紙石巻工場でつくられたものだから、感動も一入なのだ。


........と、佐々さんの新刊を買い、タイトルで思い出した。
「紙つなげ!」という言葉に、僕は、ある記憶があるのだ。
(以下、佐々さんの本とはまったく関係ありませーん)。
僕が、活版時代の新聞社地下印刷工場の凸輪転機で見たこと、です。

とある新聞社、とある夜。
整理部の僕は大ゲラを持ち、編集局から地下の輪転に走っていた。
「どぁ~、えらいこっちゃでぇ~、えらいこっちゃでぇ~」(←関西人じゃないけど、笑)
「なんで、校閲さん、気づかねーんだあ~、シリ切れ(*1)じゃん!」(←人のせいにしちゃいけませんねぇ)

ハァハァ言いながら分厚い金属製遮音ドアをあけた僕は、輪転の当夜デスクを探した。
だだっ広い地下の凸輪転機印刷工場。
当時は横置き型で(現在は縦・垂直型)、印刷を始めようと唸りをあげている。
ウオ~ン、ウオ~ン、ウオ~ン、ウオ~ン(爆音)。
僕に気づいた輪転機の当夜デスクが声をあげている。
「!.......どーしたぁ.........?」
僕は、輪転機の爆音に負けず
「◯版は.............もう、刷りはじ...........めて、ま、す、かぁ?」
輪転機デスク
「!................まだ、だぁ!」
僕は大ゲラを見せ、大声を張り上げながら
「ケズって(*2)..........ケズってください!」

この時、突然、ウオ~ンウオ~ンゥォ~ンヒュゥーン...............と輪転機の回転が小さくなった。
「◯号機、か、紙切れです!」
と若い工員が叫んだ。
当時、でっかいトイレットペーパーのような新聞用紙の巨大巻取(ジャンボリール)は、なぜか途中で「切れる」ことがたびたびあって、印刷時間ロス・用紙ロスが社全体で問題になっていた。

慌てた輪転デスクは、僕のことはほっといて(←まだ刷りはじめていないし、ケズリだし)紙庫に走りだし
「◯号機の紙をつなげ!紙をつないでおけ!」
と叫んだ。

................ということを、佐々さんの新刊タイトルを見て思い出してしまった
(←長々と書いたオチが、以上でございます....... m(__)mスミマセン )。

話は戻る。
日本製紙石巻工場は、日本の出版用紙の約4割を生産している。
もし再稼働できていなかったら、今ごろ
................長くなったので、続く。

(*1)シリ切れ=しりきれ
大組み中、整理部面担が記事の途中段落で切ったままにしていること。
例えば、
「全体の残高は約1兆8000億円と横ばい圏が続いている。過去
に発行したCBが満期となり償還されたり
.........」
の「圏が続いている。」で整理部が記事を止めて、「過去」以下を〝預かり〟にすること。
大組み者は事故を防ぐ意味から、記事を切った箇所をゲタ(■■)にしなくてはならなかったが。

(*2)ケズって=けずって
降版してしまった後の、紙型どりした鉛版を先の尖った金属棒状でチョイチョイと
〝ひっかいて=削って〟
誤字・間違い部分を見えなくしてしまうこと。
*1の場合では、「過去」2文字を削った。

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