Straight Travel

日々読む本についての感想です。
特に好きな村上春樹さん、柴田元幸さんの著書についてなど。

「リヴァイアサン」ポール・オースター著(柴田元幸訳)新潮社

2005-07-21 | 柴田元幸
「リヴァイアサン」ポール・オースター著(柴田元幸訳)新潮社を読みました。
一人の男が道端で自作の爆弾が暴発し、死亡します。
アメリカ各地の自由の女神像を爆破し続けた「自由の怪人」であることに、主人公は気付きます。
そして、それが自分の親友サックスであることも。
サックスはなぜそのような行為にいたったのか。
主人公とサックスの家族や友人をからめながらその経緯があかされていきます。

これは主人公が時系列に物事を進めていく小説ではなく、複数の人物がそれぞれの行動や考え方、誤解をもからめながら物事を描いた作品。
自覚している自分、演じている自分、人から見られている自分、密接にかかわってくる他人。
世界(の認識)は決してひとつではないということが強く感じられます。
同著者の「ムーンパレス」には「物語におわりというものはない。好むと好まざるとにかかわらず物語は続いていく」という意味の文章がありましたが、同じ事を思いました。

サックスが非常階段から転落してからの心境の変化は正直私にはあまり理解できませんでした。
彼にとっての切実な理念・哲学があってやがてファントムオブリバティに至ったのだということはわかるのですが・・・。

この作品に登場する芸術家マリアはフランスのソフィ・カルがモデルになっているそうです。
色によるダイエット、見知らぬ他人を尾行した記録など、芸術というか遊びというかとにかく風変わりで面白い女性です。
この作品で一番印象に残った人物でした。




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