Straight Travel

日々読む本についての感想です。
特に好きな村上春樹さん、柴田元幸さんの著書についてなど。

「ものぐさ精神分析」岸田秀著(中央公論社)

2006-04-17 | 柴田元幸
「ものぐさ精神分析」岸田秀著(中央公論社)を読みました。
柴田元幸さんが学生時代に多大な影響を受けたという作品。
「人間は本能の壊れた動物である」フロイドの精神分析を出発点に、人間精神の深奥をえぐり、現代社会の矛盾を衝きます。
ユニークな理論体系を構築した岸田流「唯幻論」の集大成。
雑誌に寄稿した文章をまとめたもので、歴史や性、人間、心理学、自己について著者が語ります。

一番印象的だったのは、「自己嫌悪」についての論述。
「人にひきずられてやむなく」「あのときの自分はどうかしていた」とあとから自己嫌悪にかられる人は、決してその悪癖を治せない。
自己嫌悪という感情が自分への免罪符となるからだ。
自己嫌悪にかられる人は、実は嫌悪すべき自分こそが真の欲望をむきだしにした自分自身であり、あとから嫌悪している自分は「そうでありたい自分」「人にこう見られたい自分」という架空の自分だということに気づいていない。

う~ん・・・そのとおり、耳が痛い。

そのほかにも「子に恩をうる親」「人は幻想に性衝動を感じている」「心理学者は
いんちきばかり」などうむむとうなる論がめじろおし。
心理学の本ですが、実例が多く一気に読んでしまう本でした。
解説は伊丹十三さん。