一昨日まで5回に分けて書いてきた「愛・地球博」訪問記。
二回目となる訪問の目的の一つに「IMTSの撮影・乗車」があった。
まず「IMTS」(Intelligent Multi-mode Transit System)とは何だろうか。
自分でも「IMTS」については「無人バスシステム」、「バスから進化した新交通システム」といった程度の認識しか持っていないことに気が付いた。
そこで、開発元のトヨタの「IMTS公式ホームページ」を見てみることにする。
その中にある「技術資料」(pdf)でIMTSのコンセプトを次のように整理している。
・「軌道系交通システム」と「バスシステム」を融合したデュアルモード走行が可能な中距離中量交通システム
同じく「技術資料」ではIMTSの特徴を次のように整理している。( )は管理人追加コメント。
・低廉な導入コストを達成するためにレールなし、架線なし、簡素な信号管制といった少ない地上設備による車両主体のシステムを構築
(軌道系交通システムでコストを押し上げるのは軌道や架線、信号設備といった地上設備であるため、これらを省略し、車両主体の自動運転・信号保安システムで代替することで導入コストを削減)
・安価な運行費用を達成するために無人運転を実施(運転要員の人件費削減)
・変動する需要に対応するために、非連結な列車構成を採用
(ハード的に連結を行わず、ソフト的な連結を行うことで連結・解結の手間と要員を省略可能とし、柔軟な対応が可能)
・面的サービスを達成するためのデュアルモード走行
(一般道は運転手が運転、専用軌道部は無人運転を行うものの、前者では自由な路線設定が可能、後者では専用軌道を走ることで定時性・速達性が確保可能、また隊列走行による輸送力確保が可能)
・従来の新交通システムと異なり、道路に磁気マーカーを埋設した軌道となっているため汎用性に富む(道路としても使用可能)
これらIMTSの特徴を列挙してみるとデュアルモード走行については、JR北海道が開発を進める「デュアル・モード・ビークル」と、レールが不要になるという点では三井物産が輸入代理店となっている「ゴムタイヤ式トラム」とそれぞれ共通している点がある。
しかし、これらは鉄道車両からの発展であるため、線路や信号システムについては、どうしても鉄道のシステムに束縛されてしまうきらいがある。
対してIMTSは自動車から軌道系へのアプローチであるため、「鉄道」というシステムの呪縛から解放され、軌道・信号系が大胆に省略されている点が既存の新交通システムと異なっていると思う。
IMTSの導入を検討する際にデュアル・モード・ビークルやゴムタイヤ式トラムと競合するかというと、どちらかというとゴムタイヤ式トラムと競合するのではないかという気がしている。
デュアル・モード・ビークルは線路と道路を行き来する形でデュアルモード走行を行う前提がある以上、「レール」の使用が必要になる。
また、現在開発が進められているタイプはいずれもマイクロバスがベースであるため、輸送力が小さい。このため都市近郊での輸送需要に対応できずに支障を来す懸念がある。
このため、JR北海道では過疎路線での使用を前提に開発を進めている。
従って、IMTSとデュアル・モード・ビークルは同じ「デュアルモード」性を有しているものの、その前提が異なることや輸送需要への適応力等が異なるから、実際に競合する可能性は少ないのではないだろうか。
対して、ゴムタイヤ式トラムと比較した場合はどうだろうか。
IMTS公式サイトを見ると、IMTSの導入が想定されているのは中小都市ではないかと思われる。
それはゴムタイヤ式トラムを含めたLRTが得意とする場所であり、真っ向からぶつかるのではないだろうか。
鉄軌道式LRTが既存の鉄道線との直通を図ることで乗り換えなしで広域移動の可能性を有するのに対して、線路に直通できないゴムタイヤ式トラムはどうしても都市内の移動に限定されてしまう可能性が高い。
さらに導入コストを考えると、ゴムタイヤ式トラムは鉄軌道式LRTより線路敷設コストは下がるとはいえ、案内軌道や架線の敷設といったコストは依然として必要になる。
ただし、架線が不要なディーゼル式ないし燃料電池式のタイプが実用化されれば架線の敷設が不要になるため、状況は変わってくるかもしれない。
対してIMTSでは少なくとも線路の敷設コストは不要、せいぜい磁気マーカの埋設費用程度の地上設備投資で済む。
限られた資料の範囲内で考えると、IMTSの方がゴムタイヤ式トラムに較べて費用面では有利に思える。
しかも、架線がないため専用軌道部を離れて自由に幹線道路とも行き来ができるという点を忘れてはならない。
技術的な話はこれぐらいにして、次の疑問はIMTSの専用軌道部は「鉄道」と呼べるのか。
結論を言うと、IMTSは鉄道事業法の許可を得て営業運転を行っている。
「2005年愛知万博/IMTS『愛・地球博線』にかかる鉄道事業の許可について」(2003.7.8 中部運輸局記者発表資料)
行政は少なくともIMTSの専用軌道部については「鉄道」と判断していることになるが、まだ疑わしいと思っている方はこの画像を見て欲しい。
看板には「線路」と書いてある。
たとえそれが、ちょっと見には道路にしか見えなくても、「線路」は「線路」だ。
画像はEXPOドーム駅付近のものだが、画像中央部のポイントを無くしてしまえば、傍目には道路にしか見えない。
これを「線路」たらしめているのは、中心線に埋設された磁気マーカと低いガード壁のみである。
技術的・行政面の話はこれぐらいにして、次はIMTSに乗るにはどうすれば良いか。
これについては、三つの方法がある。
・「愛・地球博」長久手会場へ行く。今回の乗車対象でもある。大型CNGバスのIMTSが期間限定で走っている。
・「淡路ファームパーク イングランドの丘」へ行く。小型バスのIMTSが走っている。
・東京お台場「メガウェブ」へ行く。
「e-com RIDE」として電気自動車のIMTSが走っている。
こう書き出してみると、「愛・地球博」が最初のIMTS導入事例でないことに気づく。
車両のデザインが未来的な事と露出度が圧倒的に多いため、つい錯覚してしまう。
いつも通りに前置きが長くなってしまったが、次は「愛・地球博」長久手会場の乗車体験記について書いていくことにしたい。
無料ホームページ
二回目となる訪問の目的の一つに「IMTSの撮影・乗車」があった。
まず「IMTS」(Intelligent Multi-mode Transit System)とは何だろうか。
自分でも「IMTS」については「無人バスシステム」、「バスから進化した新交通システム」といった程度の認識しか持っていないことに気が付いた。
そこで、開発元のトヨタの「IMTS公式ホームページ」を見てみることにする。
その中にある「技術資料」(pdf)でIMTSのコンセプトを次のように整理している。
・「軌道系交通システム」と「バスシステム」を融合したデュアルモード走行が可能な中距離中量交通システム
同じく「技術資料」ではIMTSの特徴を次のように整理している。( )は管理人追加コメント。
・低廉な導入コストを達成するためにレールなし、架線なし、簡素な信号管制といった少ない地上設備による車両主体のシステムを構築
(軌道系交通システムでコストを押し上げるのは軌道や架線、信号設備といった地上設備であるため、これらを省略し、車両主体の自動運転・信号保安システムで代替することで導入コストを削減)
・安価な運行費用を達成するために無人運転を実施(運転要員の人件費削減)
・変動する需要に対応するために、非連結な列車構成を採用
(ハード的に連結を行わず、ソフト的な連結を行うことで連結・解結の手間と要員を省略可能とし、柔軟な対応が可能)
・面的サービスを達成するためのデュアルモード走行
(一般道は運転手が運転、専用軌道部は無人運転を行うものの、前者では自由な路線設定が可能、後者では専用軌道を走ることで定時性・速達性が確保可能、また隊列走行による輸送力確保が可能)
・従来の新交通システムと異なり、道路に磁気マーカーを埋設した軌道となっているため汎用性に富む(道路としても使用可能)
これらIMTSの特徴を列挙してみるとデュアルモード走行については、JR北海道が開発を進める「デュアル・モード・ビークル」と、レールが不要になるという点では三井物産が輸入代理店となっている「ゴムタイヤ式トラム」とそれぞれ共通している点がある。
しかし、これらは鉄道車両からの発展であるため、線路や信号システムについては、どうしても鉄道のシステムに束縛されてしまうきらいがある。
対してIMTSは自動車から軌道系へのアプローチであるため、「鉄道」というシステムの呪縛から解放され、軌道・信号系が大胆に省略されている点が既存の新交通システムと異なっていると思う。
IMTSの導入を検討する際にデュアル・モード・ビークルやゴムタイヤ式トラムと競合するかというと、どちらかというとゴムタイヤ式トラムと競合するのではないかという気がしている。
デュアル・モード・ビークルは線路と道路を行き来する形でデュアルモード走行を行う前提がある以上、「レール」の使用が必要になる。
また、現在開発が進められているタイプはいずれもマイクロバスがベースであるため、輸送力が小さい。このため都市近郊での輸送需要に対応できずに支障を来す懸念がある。
このため、JR北海道では過疎路線での使用を前提に開発を進めている。
従って、IMTSとデュアル・モード・ビークルは同じ「デュアルモード」性を有しているものの、その前提が異なることや輸送需要への適応力等が異なるから、実際に競合する可能性は少ないのではないだろうか。
対して、ゴムタイヤ式トラムと比較した場合はどうだろうか。
IMTS公式サイトを見ると、IMTSの導入が想定されているのは中小都市ではないかと思われる。
それはゴムタイヤ式トラムを含めたLRTが得意とする場所であり、真っ向からぶつかるのではないだろうか。
鉄軌道式LRTが既存の鉄道線との直通を図ることで乗り換えなしで広域移動の可能性を有するのに対して、線路に直通できないゴムタイヤ式トラムはどうしても都市内の移動に限定されてしまう可能性が高い。
さらに導入コストを考えると、ゴムタイヤ式トラムは鉄軌道式LRTより線路敷設コストは下がるとはいえ、案内軌道や架線の敷設といったコストは依然として必要になる。
ただし、架線が不要なディーゼル式ないし燃料電池式のタイプが実用化されれば架線の敷設が不要になるため、状況は変わってくるかもしれない。
対してIMTSでは少なくとも線路の敷設コストは不要、せいぜい磁気マーカの埋設費用程度の地上設備投資で済む。
限られた資料の範囲内で考えると、IMTSの方がゴムタイヤ式トラムに較べて費用面では有利に思える。
しかも、架線がないため専用軌道部を離れて自由に幹線道路とも行き来ができるという点を忘れてはならない。
技術的な話はこれぐらいにして、次の疑問はIMTSの専用軌道部は「鉄道」と呼べるのか。
結論を言うと、IMTSは鉄道事業法の許可を得て営業運転を行っている。
「2005年愛知万博/IMTS『愛・地球博線』にかかる鉄道事業の許可について」(2003.7.8 中部運輸局記者発表資料)
行政は少なくともIMTSの専用軌道部については「鉄道」と判断していることになるが、まだ疑わしいと思っている方はこの画像を見て欲しい。
看板には「線路」と書いてある。
たとえそれが、ちょっと見には道路にしか見えなくても、「線路」は「線路」だ。
画像はEXPOドーム駅付近のものだが、画像中央部のポイントを無くしてしまえば、傍目には道路にしか見えない。
これを「線路」たらしめているのは、中心線に埋設された磁気マーカと低いガード壁のみである。
技術的・行政面の話はこれぐらいにして、次はIMTSに乗るにはどうすれば良いか。
これについては、三つの方法がある。
・「愛・地球博」長久手会場へ行く。今回の乗車対象でもある。大型CNGバスのIMTSが期間限定で走っている。
・「淡路ファームパーク イングランドの丘」へ行く。小型バスのIMTSが走っている。
・東京お台場「メガウェブ」へ行く。
「e-com RIDE」として電気自動車のIMTSが走っている。
こう書き出してみると、「愛・地球博」が最初のIMTS導入事例でないことに気づく。
車両のデザインが未来的な事と露出度が圧倒的に多いため、つい錯覚してしまう。
いつも通りに前置きが長くなってしまったが、次は「愛・地球博」長久手会場の乗車体験記について書いていくことにしたい。
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