Simplex's Memo

鉄道と本の話題を中心に、気の向くまま綴ります。

しなの鉄道の積極策。

2005-06-29 07:11:55 | 鉄道(地方・専用線など)
長野新幹線開業に伴い、JR東日本から分離された信越本線軽井沢・篠ノ井間が第三セクター鉄道「しなの鉄道」に生まれ変わって8年近くになる。

分離当初から赤字が続いていたが、減損会計の導入、長野県から借入金を資本金に振り替える増資を受け、昨年度決算では営業収益を計上することができた。

営業収益が何とか出せるようになった、しなの鉄道が打ってきた手は、「貨物ターミナルの整備」。
第三セクター鉄道の関連事業は、遊休不動産を活用した駐車場や旅行代理店が多い。
勿論、しなの鉄道も駐車場業等の関連事業を営んでおり、その例外ではない。

しかし、今回の話は関連事業ではなく、本来の鉄道事業を更に拡大して収益の向上を目指すという。
しかも、その貨物ターミナルの整備は行政ではなく、当のしなの鉄道が行うというから驚くほかはない。

「しなの鉄道小諸に貨物ターミナル 新たな収益へ申請」(信濃毎日新聞、6/28)

記事の要旨は次のとおり。
・貨物ターミナルは小諸駅の遊休地に整備する。
・貨物ターミナルで荷物を積み、JR中央東線経由で関東方面へ、JR中央西線経由で名古屋方面へ出荷し、物流の拠点とする。
・JR貨物からの線路使用料を得ることで、営業収益の確保を確固たるものにしたい。
・国交省が現状の自動車輸送に代わる二酸化炭素の排出削減のため募集していた物流システムのモデル事業として採択されることを目指す。採択は来年度以降の見通し。
・現在は、JR貨物、沿線自治体及び関係業者などと勉強会を開き、コストや輸送時間の優位性を調べ、需要を探っている段階にある。
・しなの鉄道が新幹線の長野以北の整備に伴い経営分離されるJR信越線の受け皿となることも視野に、信越線で直江津港と結ぶ物流拠点とすることも模索する。

「自動車から環境に優しい鉄道へ」というモーダル・シフトの必要性が叫ばれて久しいが、実際はどうかと言われると何とも心もとないというのが正直なところである。
やはり自動車輸送の運賃が決定的に安い、というのが決定的な理由(過当競争による運賃のダンピングと少ない給料で加重労働に従事する運転手がその基盤となっていることを忘れてはならないと思う)になっているが、今回のような事例が増えれば、中規模な貨物ターミナルの再評価に繋がっていくのではないだろうか。
ただし、最大の問題は貨物ターミナルの整備に引き合うような安定的な荷主が見つかるかどうかが焦点になってくるだろう。
貨物ターミナルだけ整備しておいて、荷主は来ないという「机上の空論」だけは願い下げにして欲しいものである。行政時代のハコモノ主義は通用しない事は忘れてはならないと思う。

話は変わって、しなの鉄道の「第一次経営五カ年計画」を見ると、「必要にして最小限の設備投資」として「朝晩の快速ライナーとして使用している老朽車両」の更新が挙げられている。
具体的には169系の事を指していると思われるが、現状の4編成12両を5編成10両に更新して維持費を削減しつつ運行本数の増加を目指すという。

鉄道ファン的には「更新」が何を意味するかということが気にかかる。
「必要にして最小限の設備投資」という言葉から見て車両の新製は現実的ではない。
では、他社からの車両譲渡ではどうか。
まず頭に浮かぶのが現在主力になっている115系をJR東日本から譲受するという案。これだと運用も共通化できるし、乗務員の習熟の手間はかからない。しかし、169系よりは車齢は若いとはいえ、既に老朽車両であることに変わりはない。
JR以外でまとまった数の譲渡が見込めるというと、譲渡が始まった東急8000系列が頭に浮かぶ。
実際、長野電鉄へ8500系が譲渡されるようなので、現実味はあるかもしれない。
更にステンレス車体であるため、車体の塗装費が削減できる。

問題は、片側4扉、ロングシート、しかもトイレなしという仕様が果たしてしなの鉄道に適合するかという点だが、譲渡第一号となった伊豆急行の事例を見ると片側4扉は無理としても後の2点は対策がなされて譲渡されているから、さほど気にすることはないかもしれない。

それにしても、数年前は営団地下鉄東西線5000系が譲渡されるという噂を聞いたこともあるので、169系の代替車両探しは相当長期にわたって続けられているのだなと思う。
ただ、5年間の中期経営計画で「更新」が謳われている以上、何らかの動きがあると見るのが自然な話であるため、今後の状況を見ていく必要がある。
場合によっては、我々が思っているよりも早い時期に営業線上を走る「原形を止める直流急行形電車」の系譜が完全に絶えることになるのだから(注 富士急行へ行った「フジサン特急」こと元「パノラマエクスプレスアルプス」については、大幅に手が加えられているため、対象から除外)。

追記:
しなの鉄道のHPを見ていたら「マルス売ります」の告知がまだ載っていた。
相当前から載っているが、どうも買い手がつかないらしく、25万円の売値が15万円に変更されていた。
値下げされたものの、本当に買う人は出てくるのだろうか。



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