Simplex's Memo

鉄道と本の話題を中心に、気の向くまま綴ります。

日立電鉄「復活運動」の現状。

2005-09-19 04:42:05 | 鉄道(地方・専用線など)
鮎川・城北太田間を結んでいた日立電鉄が廃止されてもう半年が過ぎようとしている。
この日立電鉄の施設を活用して鉄道の復活を求める運動を地元の高校生が始めた事を以前紹介したが、その現状が地元紙に紹介されていた。

復活運動の内容は次の二点。
・岡山電気軌道(わかやま電鐵)への経営継承が決まった南海貴志川線の事例をモデルケースとした鉄道事業者の募集。
・公共交通のあり方や通学の足の確保を行政などに働き掛ける。

今回、常陽新聞に掲載された記事の要旨は次のとおり。
・日立市~常陸太田市間の鉄道の復活をもとめる高校生徒会連絡会」(以下「連絡会」)は6月10日から今月10日まで鉄道事業者となる事を希望する個人ないし事業者を高校のホームページで募集したが、応募者はいなかった。
・鉄道事業者の公募と同時に復活した場合の路線名称も募集していたが、こちらは「日立太田線」に決まり、愛称は「光圀線」とした。連絡会では線路が復活した場合、この名称の使用を検討してもらう。
・連絡会は鉄道事業者公募期間中、常陸太田市から線路撤去後の跡地利用をどうするか、検討が始まっている旨の説明を受けている。また、連絡会は市側に電鉄線が走っていた事を記念するモニュメントの設置を提案している。

実際に茨城県立佐竹高等学校の該当ページを見ると、もう少し詳しく現状がまとめられていた。
先の記事と重複する箇所を除いて整理すると、次のようになる。
・常陸太田市と日立市に「日立電鉄線の廃線に関するアンケート」結果と要望書を提出し両市長との懇談を求めたが、前者との懇談はできたものの、鉄道の復活については「公的支援はできない」、廃線に伴って発生した問題の実態調査については「市として調査しない」とのことだった。
後者に至っては代行バスのダイヤ見直しを含めて改善を求めていく文書が届いたのみ。
・常陸太田市担当者から都市計画マスタープランについて話を聞く機会があったが、JR常陸太田駅と常北太田駅を一体化し、駅前周辺も含め整備する計画があったことがわかったという。

最初に話を聞いた時から、実現性は低い事はわかっていた。
それでも心情的には応援したいと思っていたが、新聞記事を見る限りは結局相手にされなかったと考えれば良いのだろう。
そもそも旧日立電鉄沿線の高校生が線路の復活を求めて運動を始めたのは、代替バスの使い勝手が電車時代に比べてあまりに悪い事が契機になっている。

そもそも通学生の声を聞いて早急に手当がなされていれば、実現する可能性が低い復活運動へ打って出ることはなかっただろうにと思わずにはいられない。
仮に事業者側が自ら意図しなかったにしても、現在のユーザーである通学生、そして将来も利用してくれる可能性のある人たちを切り捨ててしまっているようでは、公共交通としての担い手としての資格が果たしてあるのだろうか。

行政の側も日立市は言うに及ばず、常陸太田市も現状を淡々と受け入れているという感は拭えない。
結局、大人の側は誰も公共交通の事は真剣に考えておらず、ユーザーである高校生が一番切実に問題を認識し、行動したということだろうか。
そんな事を漠然と思ってしまった。


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2 コメント

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なさけない大人たち (けいすけ)
2005-10-26 15:06:30
TBありがとうございました。

どの大人も同じでしょうね。交通安全基本計画の公聴会の時だって、霞ヶ関の官僚たる「エライ」大人も、子供達の立場に立って考えようとの発想は微塵だにありませんでした。「今時の若者」とか「公共心の欠如」とか言える大人なんて、日本にはいないのかもしれませんね。
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Re:なさけない大人たち (Simplex)
2005-10-26 20:28:20
けいすけさん、ご無沙汰しています。



貴ブログの交通安全基本計画公聴会の件は拝見しておりました。

戦後60年が過ぎ、「自由」が強調される余り、守るべき「道徳」や「礼節」が忘れ去られている事を痛感します。



官僚に「安全に歩く事が出来る道路を作るか、ひいては国をどう作るか」という発想はなく、安全装備がコストに跳ね返る事を嫌う「自動車業界」を窺っているようにしか思えませんでした。

その結果が一定数の「交通事故死」を許容する交通安全基本計画に結びついているのだろうなぁと捉えています。



話は変わるのですが、現在医療制度改革の議論が進んでいます。主な論点として、高齢者医療の問題はクローズアップされても、小児医療の問題が露出する機会は格段に少ないです。

小児科医が都市部に偏在し、その反面で地方では子供を安心して医者に診せられない地域が増えています。そんな状況下では「少子化」もやむを得ないのかと考えています。



最近のニュースに接していて気になるのが「今だけ良ければ」という風潮。

子供ですら「消費者」として捉えるのは、果たして「子供のため」と言えるのか。

あらゆる意味で子供達をここまで蔑ろにしている国もないのではないか、そんな事を思います。



追伸:

当ブログのBookmarkに貴ブログのアドレスを追加させていただきました。

今後もよろしくお願いします。
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