森岡 周のブログ

脳の講座や講演スケジュールなど・・・

平成21年度四条畷学園大学同窓会総会

2009年11月06日 07時21分36秒 | 過去ログ
平成21年度四条畷学園大学同窓会総会
日 時: 平成21年11月8日(日) 10:30~12:00
場 所: 四条畷学園大学
テーマ:神経科学の発展に基づいたリハビリテーションの展開
講 師:森岡 周(畿央大学)


「省みること」の勧め

2009年11月06日 00時12分49秒 | 過去ログ
沈黙のあとのブログである。
1週間ぶりとなった。
とりわけ、どうしたことではなかったが
1週間あいたのである。

金曜日は岡山で教育学の講義。
意欲と学習をテーマにして、
教育の姿を考える場とした。
アナログ脳への回帰が私の教育論のテーマであるが
なぜ、意欲をもたらせるのかについて解説した。

昼間と夜間を比べると、
若さがゆえに、昼間の学生は
我が身と感じていない。
身体がないのである。
身体を感じることができれば
おそらくアナログ脳の回帰を身から感じることができるが
18歳の脳ではその意味が理解できないようにも思える。

日曜より東京でコース開催。
私は「リハビリテーションのための脳・神経科学」
と題してシステム脳と身体の意味、
そして脳―脊髄―筋の機能解離現象
ならびに脳の痙性に対する関与について
2000年以降の神経科学の知見をもとに話した。
注意、運動制御に基づく脊髄神経介在ニューロンの可塑性について話した。

夜は講師で懇親会であったが
あまりの寒さのために早くの帰還であった。
翌日のふぶくような天候であるが、

コースは淡々といや、結構起伏をもらたしながら続いた。
最終講義で「脳のなかの身体を治療する」と題して
運動学習プロセス、
運動学習のために必要なコピー情報について話し、
最終的にはS1の階層性に基づいた治療介入と
S2の上、下の構造に基づいた治療介入、
そして上頭頂小葉、下頭頂小葉の機能に基づいた治療介入のバリエーションを話した。

神経科学がわかっていれば治療介入に多様性が生まれる。
その戦略を手続きとして持つことは知識に裏付けられた技術である。
それこそが、科学に裏付けられた臨床介入である。

翌日は、実技中心に行うが、
そのことを反映しながら観ているセラピストは何人いただろうか???

出力しようと思えば、解釈脳が相対的に不十分になる。
セラピストの脳も同じであるようだ。

質問はhow toに関するものがほとんどであった?
すなわち、aphasiaにはどうするのか?とか、
Dementiaにはどうするのか?など。
How toは思考を妨げる悪の根源のようにも思えた。
セラピストは自分のセラピーを省みることからスタートしなければならない。
そうすれば、how toから脱却できるはずである。

マニュアルに対してはすべてを反対しないが(それはルールを考えれば必要な場合がある)、
How toはどうしても好きになれない。
自己が他者によっていかようにも揺らいでしまう。

あとはこういうロジックがあった?
運動イメージによってcontractureの防止ができるのですか?
それは経験則かエビデンスがあるのか?と。
「どちらもある」と答えた。
この問いの投げ方は、経験則では導入せず、
エビデンスでは導入するという暗黙の文脈を示している。
研究論文は受動的な情報にすぎない。
それを能動的な情報にするためには、
自分の身体、すなわち経験が必要なのだ。
その経験は、完全なる論理だけでは動かず、
警戒指標というべき、感情によって動かされる。
その感情は一人称の意識であり、
私自身の志向性になる。
すなわち主観的な世界である。

科学とは主観でもあるのである。

感情とは価値基準でもある。
先の質問の文脈は、結局はその主観が内在している。
人間とはそういうものである。

質問の応答では半ばキレぎみであったが
それはご理解願いたい。
脳の情報処理過程をトップダウン、ボトムアップの両者から説明したにも関わらず、
あるいは能動的意識・注意から説明したにもかかわらず、
結果としては、自らの経験を度外視し、
ボトムアップ情報ばかり求めてくるからである。

自らの脳の志向性を理解することから
患者のことを理解することができるのではないか?

自己を知ることを意識してもらいたいものだ。

水曜日に大学に帰り着いた。
あまりの寒さに東京でコートを買った。
日曜日に奈良で買ったばかりなのに・・・


大学に戻り、学部セミ生の卒論予行を聞き
いくつかサジェストした。

今日はコミュニケーション心理学では、
一次聴覚野での聞き取りと、
連合野でのことばの学習は
脳の働き方からしてシステムが異なることを
シナプス過剰形成、刈り込み現象から説明した。

それから非言語的コミュニケーションに入った。
情動を使うことは、相手の情動を読み取るためには必要であることを説明した。
これはそのあとの人間発達学にも共通した内容になった。

その後、会議を行い、
ゼミ生発表の最終調整をして、帰宅した。
院生の木くんにも協力してもらった。
彼の卒論は荷重学習に関する内容だったらしいが、
そのフィードバックは視覚および数字の両者ともに効果があったという。
正常脳を対象にしているから、結局は下頭頂小葉で統合されるからだ。
それが損傷脳では当てはまる場合と当てはまらない場合について
神経科学から説明した。
角回の構造と機能、そして損傷による病態を理解していれば、
その解釈の多様性が生まれる。
そして右角回、左角回の機能の違いを理解していても、
さらに深い洞察が可能になる。
荷重訓練にはもっと細分化したかかわりが必要である。
神経科学がそれを教えてくれる。


今日は結構早めの帰宅であるが、どうも昨日より調子が悪い。
変な病気でないことを願うばかりだ。

明日・明後日は4年ゼミ生の晴れ舞台。
卒業研究発表会。
感情を躍動させてほしい。

今自分がここにあるのは卒論発表会があったからかもしれない。