福岡市が2012年8月に始めたネット上の行政区「カワイイ区」事業が3月末で終了する。地元メディアは市の発表を受けて、高島宗一郎市長や担当部課長を取材し、夕方のローカルニュースで一斉に報道した。
本人や担当者のコメントは概ね、「シティプロモーションのあり方は、どうあるべきかを考えないと。事業費1,000万円は高いと言われれば確かにそうだが、 岡山の1億円、香川の5000万円に比べると安いのではないか」というものだった。
これを受けてか、事前収録か、某局は、ご丁寧に福岡市と両都市のプロモーション予算を比較したフリップまで用意し、市民に街頭インタビューを行っていた。
しかし、事業が始まった経緯や陰で暗躍した利害関係者には一切触れていないし、報道もしてない。だから、費用面だけを見せられれば、市民が下す結論は自ずと想像がつく。
福岡市から別に「事業」をもらっているからか。高島市長に飼いならされているのか。地元メディアは自社にとって都合の悪い報道はせず、市民を世論操作しているように感じてならない。また、福岡市が「事実」を公表しているかにも、疑問がある。
そもそもカワイイ区の発端は、確固としたコンセプトがあったわけではない。高島市長が篠田麻里子と会談した時、「橋下大阪市長が区長を募集しているから、私も区長になりたい」との「思いつき」に、市長がKBC九州朝日放送の局アナ時代からの飲み友達で、市の顧問にむかい入れた後山泰一氏(現在は顧問を退任)が食いついただけである。
福岡市は事業を始めた経緯について、篠田麻里子側から市の秘書課に「高島市長に会いたい」との連絡(いわゆる営業の申し出)があり、会談をブッキング。そこで、「ファッションで福岡を盛り上げたい」との話からカワイイ区が実現したと説明している。
しかし、後山氏は13年1月の「財団法人九州経済調査協会」主催の講演『福岡市に見るシティプロモーションのいまーカワイイ区の先にあるもの』で、先の篠田麻里子の要望について、「冗談で、カワイクなれるし、福岡の女の人達カワイイし、カワイクなれるカワイイ区でいいんじゃないですかっていう会話があった」と、語っている。
この講演では「ファッションで福岡を盛り上げたい」などという市側のような説明は、一切出てきていない。つまり、市は後付けの理由を勝手に作り、正当な手続きを踏んで予算執行され、事業化されたごとく取り繕っているように思えてならない。
また、福岡市はカワイイ区をシティプロモに活用する上で、「市の認知度が低い」からと答えている。その根拠として民間会社に委託した「都市認知度調査」を挙げている。
認知度調査は、12年12月に市が委託した「戦略的広報に関する調査」で、公募、審査によって福岡市内の「マーケティング専門会社」に選定された。
この企業が「首都圏在住者などの福岡市に対する認知度」と「市民の意識」を調べたのだが、内容は「3ヶ月という短い期間」「インターネット上の調査」だけである。
40項目ほどの質問で、アプローチが可能な対象者に対し、首都圏、福岡市、九州圏で合わせて1,500サンプル、市民の意識調査では市内で1,500サンプルを収集。しかし、この程度の調査で、そもそもプロモーションする材料が得られるとは思えない。
調査会社との契約料は600万円もかかっている。この程度のものに600万円もかかるのか。甚だ疑問である。これも市民の血税なのである。
後山氏は自らの講演で「福岡のことをみんな知ってるっていう前提のもとにプロモーションとかしてないかな。そういうまず仮説的に自分達は違うんじゃないかなと思った」「福岡って場所を、地図上で指せた人って何人ぐらいいらっしゃると思いますか。…実は福岡って場所を指せた人は30%なんですね」 と語っている。
では、福岡よりはるかに有名なパリやニューヨークの位置を正確にわかる人間がどれほどいると言うのか。こうしたコメントを見ても、最初から意味のない調査結果をあげ、「福岡市の認知度が低い」との情報操作を仕掛けたのではないか。
つまり、最初から「福岡にはシティプロモーションが必要だ」との結論ありきで動いてるふしが見られるのだ。
事業が始まって、市のHPにサイトにはカワイイとは、「容姿だけではなく、感情表現が豊か、明るく人なつっこい、いきいきと輝いている、情に厚いなど、考え方、話し方、振る舞いすべての要素に用いられるもので、人をいとおしい気持ちにさせるすべての魅力・センス」と言い訳じみたものが書かれている。
これを読むと、市民には何が言いたいかわからない。結局、市民に配慮した「文言」は何の役にも立たず、一部の市民から「カワイイ区は女性差別」の抗議を受け、篠田麻里子区長はわずか半年で退任するという笑えないオチがついた。
一部の篠田ファンからは、ブログで福岡市の怠慢を糾弾する書き込みがあった。だが、事業の経緯を見ると、政令指定都市として税金を使ってまで「やること」ことなのか。この辺を議論しなければ、シティプロモーションという言葉だけで、何の実効性もない。
シティプロモーションなんてものは、市民がいろんな情報発信することであって、東京のタレントを使ったから達成できるわけではない。ネットのアクセス数が認知度の向上につながるということにも、飛躍があるし、無理がある。
クリック回数が増えたからといって、情報を得たと言い切ること自体がまやかしだ。それが本当に正確、信憑性があると言うなら、どれほどの情報が把握されているかの目安も、きちんと提示すべきである。
篠田麻里子に代わって2代目区長に就任したカナダ人のミカエラ・ブレスウェートは、「福岡を紹介するブログのアクセス数が40万件以上あった」という触れ込みで、区長に選定された。ここでも多くの疑惑が持ち上がっている。
選定は業者を決める選定委員会においての「提案競技評価」。いわゆるプレゼンによるコンペで5社の中から1社が選ばれている。 業務を約1,000万円で委託されたのは、広告代理店「BBDO J WEST」だった。
選定委員となった二名の職員は、広報戦略課の課長と総務企画局企画調整部の部長。両名は13年11月に催された後山氏の結婚披露宴に招待されている。 経済観光局文化国際・コンテンツ部の部長も出席しているが、こちらは部下の課長が選定委員になっている。
後山氏は福岡パルコがオープンする時に、BBDO J WESTとフリーペーパー制作の仕事をしている。この代理店とは懇意の間柄だ。同氏はこの時期には、カワイイ区以外では10件の事業コンペで、選考もしくは選定委員に就いているのだ。
当時、後山氏自身が経営する会社の登記簿には、「広告代理業」の記載があった。つまり、同業者が同業者選びに関わるという「癒着」以外の何でもないのである。それでなくても、市の事業に関わる利害関係者が後山氏周辺にはあまりに多過ぎる。
さらにBBDO J WESTとの契約では、「ミカエラ・ブレスウェートが区長業務以外に、福岡でイベントなどの事業に参画すれば、その都度、ギャラが発生する」とのオプションまでついている。
ブレスウェートが福岡に来ただけで、BBDO J WESTと所属する東京の「吉田事務所」には黙っていても、カネが入るという裏取引まで行われていたのだ。これは市議会である会派の議員が追及して発覚した。
福岡市はこうした契約内容があることを公表していなかったし、事業終了のニュースでもメディア各社は少しも触れていない。区長業務以外の「地方営業」にまで、税金が使われることを知ったのなら、市民感情だって変わってくるはずである。
地元メディアはこうした数々の利害、思惑、疑惑を一切報道していない。それどころか、都合の良い要素のみを挙げて、市民に対し情報操作を仕掛けている。
こうなると、高島市長への取材における質問も、市長の答えもあらかじめ用意されていたのではないか。メディアの体を成さず、高島市長に飼いならされているとしか思えないのである。
そもそも論として、「カワイイ区」と「ファッションで福岡を盛り上げたい」が連動するはずがない。タレントが、あるいはメディアがどれほどファッションをわかっているのか。まずそこがおかしい。
さらに事業と言っても、サイトをつくり、あとはイベントを開催する程度のものだ。地元ファッションにアプローチするといっても、大型商業施設止まりだ。そんなことで、プロモーションにつながるはずはない。
タレントによっては、契約上、郊外のショッピングセンターのイベントは、断る輩もいる。何様のつもりかと言うことだ。福岡のファッションを盛り上げるのは、地元ファッション事業者とお客であって、代理店でもなければ、タレントでもない。
こうした事業が次々に生まれてくるのは、利害関係者が「タレント市長」に対して、何でも事業を仕掛けて予算措置、行政後ろ盾による芸能人へのオファー、事業獲得を画策しているのが、手に取るようにわかる。
カワイイ区は年度末の3月31日までは継続される。14日からは「ファッションウィーク福岡2015」が実施されるが、 福岡アジアファッション拠点推進会議の企画運営委員長は、企画コンペのオリエンテーションで代理店を前に、ずっと「カワイイ区との連動」を呼びかけていた。
当然、利害関係者はお仲間だろうから、こうした裏事情をご存知の上で、堂々と発言していたということになる。この御仁にも何らかのメリットがあるのでは、疑われても仕方ない。
昨年からファッションウィークの事業者に選定された代理店の「H」は、自社のアカウントにはならないカワイイ区で、最後にサプライズを用意しているのだろうか。
どちらにしても今月末でカワイイ区は終了する。これまで経緯を見ると、すでに水面下で別の事業計画が動いているだろう。その予算獲得に向け、高島市長の周辺で利害関係者が蠢いているのは、想像に難くない。
本人や担当者のコメントは概ね、「シティプロモーションのあり方は、どうあるべきかを考えないと。事業費1,000万円は高いと言われれば確かにそうだが、 岡山の1億円、香川の5000万円に比べると安いのではないか」というものだった。
これを受けてか、事前収録か、某局は、ご丁寧に福岡市と両都市のプロモーション予算を比較したフリップまで用意し、市民に街頭インタビューを行っていた。
しかし、事業が始まった経緯や陰で暗躍した利害関係者には一切触れていないし、報道もしてない。だから、費用面だけを見せられれば、市民が下す結論は自ずと想像がつく。
福岡市から別に「事業」をもらっているからか。高島市長に飼いならされているのか。地元メディアは自社にとって都合の悪い報道はせず、市民を世論操作しているように感じてならない。また、福岡市が「事実」を公表しているかにも、疑問がある。
そもそもカワイイ区の発端は、確固としたコンセプトがあったわけではない。高島市長が篠田麻里子と会談した時、「橋下大阪市長が区長を募集しているから、私も区長になりたい」との「思いつき」に、市長がKBC九州朝日放送の局アナ時代からの飲み友達で、市の顧問にむかい入れた後山泰一氏(現在は顧問を退任)が食いついただけである。
福岡市は事業を始めた経緯について、篠田麻里子側から市の秘書課に「高島市長に会いたい」との連絡(いわゆる営業の申し出)があり、会談をブッキング。そこで、「ファッションで福岡を盛り上げたい」との話からカワイイ区が実現したと説明している。
しかし、後山氏は13年1月の「財団法人九州経済調査協会」主催の講演『福岡市に見るシティプロモーションのいまーカワイイ区の先にあるもの』で、先の篠田麻里子の要望について、「冗談で、カワイクなれるし、福岡の女の人達カワイイし、カワイクなれるカワイイ区でいいんじゃないですかっていう会話があった」と、語っている。
この講演では「ファッションで福岡を盛り上げたい」などという市側のような説明は、一切出てきていない。つまり、市は後付けの理由を勝手に作り、正当な手続きを踏んで予算執行され、事業化されたごとく取り繕っているように思えてならない。
また、福岡市はカワイイ区をシティプロモに活用する上で、「市の認知度が低い」からと答えている。その根拠として民間会社に委託した「都市認知度調査」を挙げている。
認知度調査は、12年12月に市が委託した「戦略的広報に関する調査」で、公募、審査によって福岡市内の「マーケティング専門会社」に選定された。
この企業が「首都圏在住者などの福岡市に対する認知度」と「市民の意識」を調べたのだが、内容は「3ヶ月という短い期間」「インターネット上の調査」だけである。
40項目ほどの質問で、アプローチが可能な対象者に対し、首都圏、福岡市、九州圏で合わせて1,500サンプル、市民の意識調査では市内で1,500サンプルを収集。しかし、この程度の調査で、そもそもプロモーションする材料が得られるとは思えない。
調査会社との契約料は600万円もかかっている。この程度のものに600万円もかかるのか。甚だ疑問である。これも市民の血税なのである。
後山氏は自らの講演で「福岡のことをみんな知ってるっていう前提のもとにプロモーションとかしてないかな。そういうまず仮説的に自分達は違うんじゃないかなと思った」「福岡って場所を、地図上で指せた人って何人ぐらいいらっしゃると思いますか。…実は福岡って場所を指せた人は30%なんですね」 と語っている。
では、福岡よりはるかに有名なパリやニューヨークの位置を正確にわかる人間がどれほどいると言うのか。こうしたコメントを見ても、最初から意味のない調査結果をあげ、「福岡市の認知度が低い」との情報操作を仕掛けたのではないか。
つまり、最初から「福岡にはシティプロモーションが必要だ」との結論ありきで動いてるふしが見られるのだ。
事業が始まって、市のHPにサイトにはカワイイとは、「容姿だけではなく、感情表現が豊か、明るく人なつっこい、いきいきと輝いている、情に厚いなど、考え方、話し方、振る舞いすべての要素に用いられるもので、人をいとおしい気持ちにさせるすべての魅力・センス」と言い訳じみたものが書かれている。
これを読むと、市民には何が言いたいかわからない。結局、市民に配慮した「文言」は何の役にも立たず、一部の市民から「カワイイ区は女性差別」の抗議を受け、篠田麻里子区長はわずか半年で退任するという笑えないオチがついた。
一部の篠田ファンからは、ブログで福岡市の怠慢を糾弾する書き込みがあった。だが、事業の経緯を見ると、政令指定都市として税金を使ってまで「やること」ことなのか。この辺を議論しなければ、シティプロモーションという言葉だけで、何の実効性もない。
シティプロモーションなんてものは、市民がいろんな情報発信することであって、東京のタレントを使ったから達成できるわけではない。ネットのアクセス数が認知度の向上につながるということにも、飛躍があるし、無理がある。
クリック回数が増えたからといって、情報を得たと言い切ること自体がまやかしだ。それが本当に正確、信憑性があると言うなら、どれほどの情報が把握されているかの目安も、きちんと提示すべきである。
篠田麻里子に代わって2代目区長に就任したカナダ人のミカエラ・ブレスウェートは、「福岡を紹介するブログのアクセス数が40万件以上あった」という触れ込みで、区長に選定された。ここでも多くの疑惑が持ち上がっている。
選定は業者を決める選定委員会においての「提案競技評価」。いわゆるプレゼンによるコンペで5社の中から1社が選ばれている。 業務を約1,000万円で委託されたのは、広告代理店「BBDO J WEST」だった。
選定委員となった二名の職員は、広報戦略課の課長と総務企画局企画調整部の部長。両名は13年11月に催された後山氏の結婚披露宴に招待されている。 経済観光局文化国際・コンテンツ部の部長も出席しているが、こちらは部下の課長が選定委員になっている。
後山氏は福岡パルコがオープンする時に、BBDO J WESTとフリーペーパー制作の仕事をしている。この代理店とは懇意の間柄だ。同氏はこの時期には、カワイイ区以外では10件の事業コンペで、選考もしくは選定委員に就いているのだ。
当時、後山氏自身が経営する会社の登記簿には、「広告代理業」の記載があった。つまり、同業者が同業者選びに関わるという「癒着」以外の何でもないのである。それでなくても、市の事業に関わる利害関係者が後山氏周辺にはあまりに多過ぎる。
さらにBBDO J WESTとの契約では、「ミカエラ・ブレスウェートが区長業務以外に、福岡でイベントなどの事業に参画すれば、その都度、ギャラが発生する」とのオプションまでついている。
ブレスウェートが福岡に来ただけで、BBDO J WESTと所属する東京の「吉田事務所」には黙っていても、カネが入るという裏取引まで行われていたのだ。これは市議会である会派の議員が追及して発覚した。
福岡市はこうした契約内容があることを公表していなかったし、事業終了のニュースでもメディア各社は少しも触れていない。区長業務以外の「地方営業」にまで、税金が使われることを知ったのなら、市民感情だって変わってくるはずである。
地元メディアはこうした数々の利害、思惑、疑惑を一切報道していない。それどころか、都合の良い要素のみを挙げて、市民に対し情報操作を仕掛けている。
こうなると、高島市長への取材における質問も、市長の答えもあらかじめ用意されていたのではないか。メディアの体を成さず、高島市長に飼いならされているとしか思えないのである。
そもそも論として、「カワイイ区」と「ファッションで福岡を盛り上げたい」が連動するはずがない。タレントが、あるいはメディアがどれほどファッションをわかっているのか。まずそこがおかしい。
さらに事業と言っても、サイトをつくり、あとはイベントを開催する程度のものだ。地元ファッションにアプローチするといっても、大型商業施設止まりだ。そんなことで、プロモーションにつながるはずはない。
タレントによっては、契約上、郊外のショッピングセンターのイベントは、断る輩もいる。何様のつもりかと言うことだ。福岡のファッションを盛り上げるのは、地元ファッション事業者とお客であって、代理店でもなければ、タレントでもない。
こうした事業が次々に生まれてくるのは、利害関係者が「タレント市長」に対して、何でも事業を仕掛けて予算措置、行政後ろ盾による芸能人へのオファー、事業獲得を画策しているのが、手に取るようにわかる。
カワイイ区は年度末の3月31日までは継続される。14日からは「ファッションウィーク福岡2015」が実施されるが、 福岡アジアファッション拠点推進会議の企画運営委員長は、企画コンペのオリエンテーションで代理店を前に、ずっと「カワイイ区との連動」を呼びかけていた。
当然、利害関係者はお仲間だろうから、こうした裏事情をご存知の上で、堂々と発言していたということになる。この御仁にも何らかのメリットがあるのでは、疑われても仕方ない。
昨年からファッションウィークの事業者に選定された代理店の「H」は、自社のアカウントにはならないカワイイ区で、最後にサプライズを用意しているのだろうか。
どちらにしても今月末でカワイイ区は終了する。これまで経緯を見ると、すでに水面下で別の事業計画が動いているだろう。その予算獲得に向け、高島市長の周辺で利害関係者が蠢いているのは、想像に難くない。