3月5日、22日に開催される福岡アジアコレクション(FACo)の記者発表が福岡商工会議所で行われた。
主催者側は、ショーに参加する地元のメーカー・卸、個人デザイナーが14ブランドと発表した。しかし、集客とショーの尺を埋めるためにアズールバイマウジー、ヴィッキーなどのNBも12ブランド(マリエッタは地元メーカー、ダブルハートは地元通販企業)も登場する。
FACoは福岡県や福岡市、商工会議所などから支援を受けているため、どうしても「福岡」「地元」を強調するが、観客を呼ぶには全国的な人気ブランドに頼らざるを得ない。そこがプロデュースに当たるRKB毎日放送の能力の限界を示す。
一方、FACoを主催する福岡アジアファッション拠点推進会議の企画運営委員長は、昨年8月の福岡ファッションフォーラムで、推進会議の活動についてファッションだけでなく、「食やコンテンツ制作と連携」もあると公言した。
フォーラムにゲスト主演していた地元芸能事務所ジョブ・ネット所属のLinQは、地元企業のいろんなキャンペーンに参画する。また、ゲームソフト「妖怪ウォッチ」が大ヒットし、数々の賞に輝いたレベルファイブは、地元のコンテンツ制作会社だ。
現状、レベルファイブは別としても、LinQが今年のFACoに出演する。このことを考えると、企画運営委員長、FACoプロデューサーの意図は、だいたい想像がつく。
つまり、実質のRKB毎日放送の自社「事業」であるFACoを「ファッションのみに限定して」いては、予算の出所がジリ貧になるからだ。いや、もうなっているからだ。
会場の福岡国際センターのキャパは限られる。いくらスーパーアリーナ席が完売しても、チケット収入はこれ以上増やせない。前年度の観客をメルマガなどで囲い込むとしても、気移りの激しいF1層を確実にリピートさせることは容易ではない。
それは出演するタレントの顔ぶれを見てもわかる。蛯原友里や押切もえは2月28日の東京ガールズコレクションに出演したため、この時期の地方営業は余裕だろう。昨年、レコード大賞の新人賞に輝いた西内まりやは、地元に凱旋するという大義がある。
ただ、筧美和子はテラスハウス以降、タレントとしての立ち位置が明確でないし、モデル体型ではないことは多くが知っていることだ。事務所に無理矢理ねじ込まれたか、それとも予算の都合でそうなったのかと言っても、過言ではない。
言い換えれば、タレントしか打つ手がないローカル放送、FACoプロデューサーの事情が垣間見える。だから、スポンサーを確保できないと、自社の利益は出せなくなるのだ。
一昨年は、福岡市が財源にしている福岡競艇の元締め、「ボートレース振興会」をFACoのスポンサーに付けていた。ファッションとギャンブル。それだけを見ても、すでに何の接点もない。
イベントには10代の未成年者も来場するのに、競艇がスポンサーとは恐れ入る。Jリーグでさえ、酒類メーカーやパチンコ産業などのスポンサードは、レギュレーション上で厳格化されているのに。
この辺がRKB毎日放送の凡庸プロデューサーぶりを露呈するが、あっさりスポンサーが外されているところを見ても、営業の迷走ぶりが窺い知れる。
今年は持ち帰り弁当のホットモットを展開するプレナス、結婚式場ノートルダムマリノアを運営する愛グループ、美容整形のヴェリテクリニック福岡院などが、地元企業としてスポンサーについている。
プレナスは代理店の「H」の大口スポンサーでもある。RKB毎日放送を系列傘下に置くTBSはここ数年、DからHに急接近している。考え過ぎかもしれないが、Hが系列放送局の事業にスポンサー確保に動くことは、無きにしも有らずだ。
愛グループはこれから婚礼期を迎える層と観客がリンクする。名簿を入手することは、法的に厳しいが、婚礼予備軍に社名やブランドをアピールすることはできる。
ただ、同社の婚礼組数は延べ550組程度。700組というダントツの実績、企業としての人気度ではアイ・ケイ・ケイに大きく水をあけられている。とすれば、FACoなんかスポンサードより、別のマーケティング手法を考えた方がいいのかもしれない。
明暗を分けるのは、スポンサーの常連だったHRKとストーンマーケットだ。
地場化粧品メーカーのHRKはスポンサーを降りている。こちらも同社のターゲットとリンクするが、年商は12年9月期の80億9,800万円から13年9月期で77億6,000万円とダウン。協賛しても何のメリットもないことがはっきりしたということだろう。
ストーンマーケットはスポンサーを継続するが、年商は2年連続で下降している。14年3月期は売上高約73億円で、営業利益はわずか1%台の7,464万円。有利子負債は33億円にも達する。とても客寄せ興行を支援するほど、余裕があるとは思えない。
こうしたスポンサー事情を考えると、FACoを継続するには、行政ほかの資金的後ろ盾が欠かせないことが明白だ。でも、名目は公金が拠出される「ファッション事業」で有りながら、7回目を迎えても「地元ファッション産業へのリターン」はほとんどない。
商工会議所の関係者から漏れ伝わってくる話では、推進会議自体の「経費削減」が言われているようだ。個々の事業が何の効果も無いのだから、当然である。
先日、RKB毎日放送は早朝ニュースをパブ枠にして、改めてFACoの記者会見を報道した。モデル2名とLinQが推進会議の会長を務める末吉紀雄福岡商工会議所会頭を囲んだVTRを流しながら、「九州最大のファッションイベント」を強調した。
九州最大という「ブランド力」を上げないと、安定したスポンサーを確保できず、イベントの継続はままならない。だが、毎年、目紛しく変わるところを見ると、スポンサーにとってはいかにメリットがなく、マーケティング効果が薄いということがわかる。
今回、LinQを出演させるのは、地元タレントでギャラの安さもあるが、JA福岡の苺「あまおう」のキャンペーンに参画していたこともあるだろう。これは企画運営委員長がいう「食」との連携にも合致する。
その裏には大手、中堅、地場を問わず新規スポンサーの確保したい、また行政にも経済以外の部局にまでの予算獲得の道を拡げたいと、なりふり構わぬFACoプロデューサーの思惑が透けて見える。
実際にイベントを仕切るのは、神戸コレクションをプロデュースし、このほどニューヨークコレクションに「東京ランウェイ」で参加したアイグリッツだ。同社が企画する「神戸コレクション」には大阪毎日放送、兵庫県、神戸市が協賛している。
企画運営委員長がクールジャパン・フクオカ、福岡の知名度向上、集客促進とご託宣を並べたところで、 イベントフォーマットはアイグリッツに頼らざるを得ず、所詮、FACoは神戸コレクションのコピーに過ぎない。
RKB毎日放送の役割と言えば、行政とスポンサーとの顔つなぎでしかないだろう。
イベント資金を拠出する福岡商工会議所は、一連の事業の大義を地元ファッション産業の振興としているが、真の狙いは若年のファッション事業者、商店経営者などから「組合員を募集する」ことに他ならない。
現時点では、その両方とも達成していないと言える。ファッションウィーク福岡を含め稚拙な企画内容、客寄せ興行が続く限り、組合員の募集なんて永遠に無理だろう。
いよいよイベントさえできれば良いイベントであることが鮮明になった。地元ファッションの振興なんて、当初から絵空事に過ぎない。言い換えれば、FACoは先が見えてきたということである。
主催者側は、ショーに参加する地元のメーカー・卸、個人デザイナーが14ブランドと発表した。しかし、集客とショーの尺を埋めるためにアズールバイマウジー、ヴィッキーなどのNBも12ブランド(マリエッタは地元メーカー、ダブルハートは地元通販企業)も登場する。
FACoは福岡県や福岡市、商工会議所などから支援を受けているため、どうしても「福岡」「地元」を強調するが、観客を呼ぶには全国的な人気ブランドに頼らざるを得ない。そこがプロデュースに当たるRKB毎日放送の能力の限界を示す。
一方、FACoを主催する福岡アジアファッション拠点推進会議の企画運営委員長は、昨年8月の福岡ファッションフォーラムで、推進会議の活動についてファッションだけでなく、「食やコンテンツ制作と連携」もあると公言した。
フォーラムにゲスト主演していた地元芸能事務所ジョブ・ネット所属のLinQは、地元企業のいろんなキャンペーンに参画する。また、ゲームソフト「妖怪ウォッチ」が大ヒットし、数々の賞に輝いたレベルファイブは、地元のコンテンツ制作会社だ。
現状、レベルファイブは別としても、LinQが今年のFACoに出演する。このことを考えると、企画運営委員長、FACoプロデューサーの意図は、だいたい想像がつく。
つまり、実質のRKB毎日放送の自社「事業」であるFACoを「ファッションのみに限定して」いては、予算の出所がジリ貧になるからだ。いや、もうなっているからだ。
会場の福岡国際センターのキャパは限られる。いくらスーパーアリーナ席が完売しても、チケット収入はこれ以上増やせない。前年度の観客をメルマガなどで囲い込むとしても、気移りの激しいF1層を確実にリピートさせることは容易ではない。
それは出演するタレントの顔ぶれを見てもわかる。蛯原友里や押切もえは2月28日の東京ガールズコレクションに出演したため、この時期の地方営業は余裕だろう。昨年、レコード大賞の新人賞に輝いた西内まりやは、地元に凱旋するという大義がある。
ただ、筧美和子はテラスハウス以降、タレントとしての立ち位置が明確でないし、モデル体型ではないことは多くが知っていることだ。事務所に無理矢理ねじ込まれたか、それとも予算の都合でそうなったのかと言っても、過言ではない。
言い換えれば、タレントしか打つ手がないローカル放送、FACoプロデューサーの事情が垣間見える。だから、スポンサーを確保できないと、自社の利益は出せなくなるのだ。
一昨年は、福岡市が財源にしている福岡競艇の元締め、「ボートレース振興会」をFACoのスポンサーに付けていた。ファッションとギャンブル。それだけを見ても、すでに何の接点もない。
イベントには10代の未成年者も来場するのに、競艇がスポンサーとは恐れ入る。Jリーグでさえ、酒類メーカーやパチンコ産業などのスポンサードは、レギュレーション上で厳格化されているのに。
この辺がRKB毎日放送の凡庸プロデューサーぶりを露呈するが、あっさりスポンサーが外されているところを見ても、営業の迷走ぶりが窺い知れる。
今年は持ち帰り弁当のホットモットを展開するプレナス、結婚式場ノートルダムマリノアを運営する愛グループ、美容整形のヴェリテクリニック福岡院などが、地元企業としてスポンサーについている。
プレナスは代理店の「H」の大口スポンサーでもある。RKB毎日放送を系列傘下に置くTBSはここ数年、DからHに急接近している。考え過ぎかもしれないが、Hが系列放送局の事業にスポンサー確保に動くことは、無きにしも有らずだ。
愛グループはこれから婚礼期を迎える層と観客がリンクする。名簿を入手することは、法的に厳しいが、婚礼予備軍に社名やブランドをアピールすることはできる。
ただ、同社の婚礼組数は延べ550組程度。700組というダントツの実績、企業としての人気度ではアイ・ケイ・ケイに大きく水をあけられている。とすれば、FACoなんかスポンサードより、別のマーケティング手法を考えた方がいいのかもしれない。
明暗を分けるのは、スポンサーの常連だったHRKとストーンマーケットだ。
地場化粧品メーカーのHRKはスポンサーを降りている。こちらも同社のターゲットとリンクするが、年商は12年9月期の80億9,800万円から13年9月期で77億6,000万円とダウン。協賛しても何のメリットもないことがはっきりしたということだろう。
ストーンマーケットはスポンサーを継続するが、年商は2年連続で下降している。14年3月期は売上高約73億円で、営業利益はわずか1%台の7,464万円。有利子負債は33億円にも達する。とても客寄せ興行を支援するほど、余裕があるとは思えない。
こうしたスポンサー事情を考えると、FACoを継続するには、行政ほかの資金的後ろ盾が欠かせないことが明白だ。でも、名目は公金が拠出される「ファッション事業」で有りながら、7回目を迎えても「地元ファッション産業へのリターン」はほとんどない。
商工会議所の関係者から漏れ伝わってくる話では、推進会議自体の「経費削減」が言われているようだ。個々の事業が何の効果も無いのだから、当然である。
先日、RKB毎日放送は早朝ニュースをパブ枠にして、改めてFACoの記者会見を報道した。モデル2名とLinQが推進会議の会長を務める末吉紀雄福岡商工会議所会頭を囲んだVTRを流しながら、「九州最大のファッションイベント」を強調した。
九州最大という「ブランド力」を上げないと、安定したスポンサーを確保できず、イベントの継続はままならない。だが、毎年、目紛しく変わるところを見ると、スポンサーにとってはいかにメリットがなく、マーケティング効果が薄いということがわかる。
今回、LinQを出演させるのは、地元タレントでギャラの安さもあるが、JA福岡の苺「あまおう」のキャンペーンに参画していたこともあるだろう。これは企画運営委員長がいう「食」との連携にも合致する。
その裏には大手、中堅、地場を問わず新規スポンサーの確保したい、また行政にも経済以外の部局にまでの予算獲得の道を拡げたいと、なりふり構わぬFACoプロデューサーの思惑が透けて見える。
実際にイベントを仕切るのは、神戸コレクションをプロデュースし、このほどニューヨークコレクションに「東京ランウェイ」で参加したアイグリッツだ。同社が企画する「神戸コレクション」には大阪毎日放送、兵庫県、神戸市が協賛している。
企画運営委員長がクールジャパン・フクオカ、福岡の知名度向上、集客促進とご託宣を並べたところで、 イベントフォーマットはアイグリッツに頼らざるを得ず、所詮、FACoは神戸コレクションのコピーに過ぎない。
RKB毎日放送の役割と言えば、行政とスポンサーとの顔つなぎでしかないだろう。
イベント資金を拠出する福岡商工会議所は、一連の事業の大義を地元ファッション産業の振興としているが、真の狙いは若年のファッション事業者、商店経営者などから「組合員を募集する」ことに他ならない。
現時点では、その両方とも達成していないと言える。ファッションウィーク福岡を含め稚拙な企画内容、客寄せ興行が続く限り、組合員の募集なんて永遠に無理だろう。
いよいよイベントさえできれば良いイベントであることが鮮明になった。地元ファッションの振興なんて、当初から絵空事に過ぎない。言い換えれば、FACoは先が見えてきたということである。