HAKATA PARIS NEWYORK

いまのファッションを斬りまくる辛口コラム

紙だってブランド化で生き残る。

2015-07-08 13:36:36 | Weblog
 ウェアから雑貨へという軸足の流れから、国内外、大小、異業種混合で、新業態が開発されている。取り扱う商品もアクセサリーからホーム、キッチン、ステーショナリー、コスメ、バス、レジャーと様々だ。

 OEMやODMといった商品開発のシステムも整い、アジアや東欧、南米とった生産基地側の競争激化で、あらゆるアイテムに対応してくれるようだ。

 価格がチープということが受け、さらに100円ショップなどが入り乱れて、ファッション性のみならず、アイデア商品や機能性追求など、いろんなベクトルで勝負する業態も登場している。

 まあ、世界的な不況や節約意識の浸透からか、かつてのように雑貨が「ギア」として存在感をもつよりも、消費されるものだから賢く使うという考えの方が強いように感じる。欧米の合理的な思想が世界的にも雑貨の潮流なのだろう。

 ただ、あまりにいろんな業態があり溢れすぎて、店頭のアイテムやその出来映えを見ると、そろそろ出尽くしてきたかと思う。

 ほとんどが商品はオリジナル生産か、製造委託をしているため、為替の変動や製造コストの上昇で、利益の確保が厳しくなっている。そのため、ビジネスモデルや商品づくりで効率追求に腐心してところなどをみると、それもいたし方ないのかもしれない。

 これだけ業態が溢れると、消費者の目も肥えて来るだけに、もっとお洒落、もっと使いやすい、もっと便利と要求は厳しくなる。それに対する妥協点は個人差があるだろうが、筆者は価格は5割増しでも良いから、少しは「規格外」も加えてほしいと思う。

 先日、取引先に郵送する封筒で、定型より大きめのものが必要になった。事務用の茶封筒や白地封筒では、郵便番号の罫が入ったものはいくらでもある。

 しかし、デザイナーが自分のクリエーションの延長線上で、ビジネスフォームに利用できるようなものは、市販されていない。

 バブル期にはブランドメーカーがポストカードやビジネスカード、レターヘッドと一緒に、ロゴデザインのVIを図っていた。

 そこでブランドオリジナルの封筒も、「製袋」していたのである。ブランド価値を顧客に伝えるには、 クリイティブなビジネスフォームに統一するのは重要な要素だ。もちろん、その分の経費も十分に回収できたから、怯まずに作っていた。

 ところが、バブルが弾け、低成長が続き、コストダウンや効率追求で、商品本筋ではない、プロモ用のビジネスフォームにはカネがかけづらくなった。名刺一つとってもパソコンで簡単にプリントアウトできるくらいだ。

 さらにインターネットの浸透や環境保護の観点から、ゴミになる印刷物は削減される傾向にある。それがプリント関係で食ってきたグラフィック関係者の仕事を縮小均衡させている点は否めない。

 ただ、知り合いの紙問屋によると、「デジタル時代の技術革新により小ロット印刷に対応できるようになり、質感のある紙へのニーズは高まっている」という。筆者も上質で組織に特徴がある生地を好むの感覚で紙にも接して来たので、全く同感である。

 それが気軽に市場に出回れば良いのだが、現実にはそう簡単にはいかないようだ。これだけ欧米を含め雑貨店が登場しているのだから、封筒や便せんでも規格外サイズや手に馴染む質感の良い紙があっても良さそうだと、思いながら探すがなかなか見つからない。

 定型サイズより少し大きめの封筒を探しまわると、デザイン関係者には馴染みのある製紙メーカー「竹尾」がDresscoというブランドで、ENVELOPE GRANDシリーズを発売していることを知った。

 サイズは天地157mm、左右230mmで、市販の封筒にはないイレギュラーサイズである。これなら大きめのDMも楽々入るし、キャビネ判の写真を送ることもできる。

 竹尾の紙だけに質感も申し分ない。送料に120円かかるが、大量に送るわけではないので、経費とすればたかが知れている。

 ファッション業界はともかく、商品をブランド化する上で、クリイティブなビジネスフォームに統一するのは重要な意味を持つ。

 ショップの店頭に置いたり、顧客に送付するポストカード、スタッフが名前やショップの連絡先を教えるビジネスカード、お客にお礼状を出すレターヘッド、いろんな情報を伝えるPOP、経費をかけたフォトブックなどだ。

 いくらネット販売が充実とは言え、店舗にショッピングに出かけて来るお客が無くなることはない。そうしたお客に強烈なブランドバリューをすり込むには、アナログツールも不可欠だと思う。

 それらにおいて、エッジの利いたリテイルグラフィックに切り込む。そして、顧客に目で見て、手で触れてもらうために、紙の色や質感にも気を配る。これはやはりアナログの感覚でしかだせない。特にもらった方の気持ちが違うだろう。

 まあ、こんなもん、わからない人間にはわからないのだから、伝わる人にだけ伝えればいいだけの話だ。筆者はマンションアパレル時代にそんな仕事もしていたから、ずっとその感覚が抜けきらない。

 ある晴れた日の日曜日、表参道でプロモーション用の撮影をし、その写真をもとにトレーシングペーパーを使ったフォトレターをデザインしたことがある。自分なりにあまりに出来映えが良かったため、個人的に流用して高校や大学の友人にまで送ったほどだ。

 まあ、服づくり以外にそんな仕事もしてきたもんで、フリーランスになってもコストダウンのご時世ながら、ステーショナリー選びでもなかなか妥協できない。

 クライアントに請求書を送る封筒一つにしても、ブランド戦略をだぶらせてしまい、市販の定型サイズでは満足できないのである。

 先日、購入した竹尾のDresscoは、紙質、手触りとも申し分ないのだが、白地の封筒がなく、厚めでプリンターを通せないことが唯一の難点だ。 薄くするとIT対応は可能だが、質感が損なわれてしまう。この辺が紙屋として微妙なところだろう。

 まあ、それをクリアするには製袋するしかないのだが、製紙業界もデジタル時代を捉えつつ、逆にそのアナログな製品も進化させる。

 そのバランスを上手く取り入れるブランド紙が、ファッションやデザインのクリエイティブビジネスには不可欠だと思う。紙も生地と同じ面があるということである。

 もちろん、当事務所としてもそれを十二分に知った上で、コストとのバランスを考え、住所シールを貼るなどで妥協したが、自分なりには様になったと思う。 CIイメージも訴求できるので、当分は利用していきたい。

 クリエーター気質から封緘シールは、シャープなラインを出したいから、トムソンで型抜きしたものを使いたいのだが。もっとも、今日は1枚から印刷できるという点で、アナログのビジネスフォームも隔世の感があることだけは確かだ。

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