商売柄、いろんなアパレルや小売店のプロモーションを行なう。毎年、この時期になるとクリスマス販促の相談を受けるが、今年はとあるセレクトショップの依頼でモデル撮影を行なった。オーナーはプレ・クリスマスカードに自店のレコメンド商品を載せ、お客にメッセージと着こなし提案を伝える考えらしい。
この人はファッション業界でずっと働いていながら、独学でグラフィックデザインを習得。Macやllustrator、Photoshopが使えるため、われわれには撮影のみを依頼してきた。カードのデザインは自分で行ない、質感のある紙にプリントアウトして、凝った封筒に入れて送るのだという。
デジタル機器の発達で、ショップレベルでも簡単に販促ツールが作れるようになった。ただ、オマケのソフトや市販のプリンターで完成度の高いクリエイティブワークはなし得ない。それはプロの見方かもしれないが、このオーナーも「自分でやる以上、デザインでは妥協はしない」と言い切った。
今年のクリスマス向けイチオシのアイテムを等身大のモデルに着せて、お客さんの目線で商品の特徴や着こなし提案をするこだわりを、販促ツールのグラフィックデザインでも見せたいのだろう。当然、この考えにはわれわれクリエーターも大賛成である。
大金をかけてデザイン会社に丸投げすれば、少なくともプロの評価に足る「広告作品」はでき上がる。でも、それが顧客目線にあった「販促」につながるかどうかと言えば、必ずしもそうではない。個店の場合は、オーナーの個性や力量がビジネスや品揃えに映し出される。顧客のことも外部の人間より、オーナーの方が知っているわけで、コピーやデザインでも内部の表現が説得力を増すとの考えには一理ある。
もちろん、われわれもプロのクリエーターだから、依頼された仕事には最大限のパフォーマンスで臨んでいる。他がやらないようなアングルやシチュエーション、オーナーの想像以上のカットで「商品の魅力」を写し出そうとする。クライアントに喜んでもらいたい一心からだ。
今回、オーナーのアナログな発注とは別に、こちらはデジタル技術を駆使して、メーンヴィジュアル用として商品の質感やフォルム、着たときの意外性なども表現してみた。それは掲載した2枚の写真である。
ファッションフォトは欧州のメゾンに代表されるように、どうしてもロケ地やシチュエーションに凝ったものが撮影されるなど、ブランドイメージが優先されてきた。それを米国のギャップは「インディヴィジュアル」という手法に変え、パーソナリティをもつモデルに商品を着せてシロホリ(白いホリゾント/背景)の前で撮影し、インパクトのあるヴィジュアルに仕上げた。
どちらが、販促効果が高かったかと言えば、商品がクローズアップされる後者で、ユニクロの広告づくりも基本的にギャップスタイルを踏襲したものだ。その後、グッチのトム・フォードは、広告ビジュアルは「最後のデザインだ」として、デザイナーである自身のビジョンを的確に打ち出した。それがモデルやカメラマンが変わっても、ブランドの世界観は統一させる技法を生み出した。
世界的なブランドと一個店を比較するのは、いささかはばかられる。でも、表現の目的は同じだ。訴えたい商品やショップの考え方をいかに打ち出すか、なのである。オーナーは、カードデザインの方向性は決まっているとだけ話すが、デザイン用のソフトを使うので折りを加えるなど、デザインにすると思われる。おそらく写真は商品とそのメッセージを伝える中面にレイアウトされるはずだ。
印刷はオフィスコンビニを利用し、特殊紙に印刷するのだそうだ。大きめの紙に印刷すればあとはトンボを合わせてカットするだけで、両面カラーのカードに仕上げられる。印刷会社に出せば簡単だろうが、最低ロットがあるので経費面ではバカにならない。オフィスコンビニなら1枚からOKだし、いつでも追加印刷が可能だ。
その分のコストを紙やデザイン封筒に投資できるところまで、このオーナーは考えている。もちろん、作業は店を閉めてからの深夜に行なうという。
Webデザインの浸透で、肩身が狭くなっているグラフィックや印刷物。しかし、1枚の布から作り上げるファッションもアナログな世界。ならば、それぞれがもつアナログの良さをもっと生かせるはずだ。
個店レベルのプロモーションではデジタル機能を活用しつつ、アナログ感覚なものを創る。この程度がちょうどいい。カードの出来上がりが楽しみである。
この人はファッション業界でずっと働いていながら、独学でグラフィックデザインを習得。Macやllustrator、Photoshopが使えるため、われわれには撮影のみを依頼してきた。カードのデザインは自分で行ない、質感のある紙にプリントアウトして、凝った封筒に入れて送るのだという。
デジタル機器の発達で、ショップレベルでも簡単に販促ツールが作れるようになった。ただ、オマケのソフトや市販のプリンターで完成度の高いクリエイティブワークはなし得ない。それはプロの見方かもしれないが、このオーナーも「自分でやる以上、デザインでは妥協はしない」と言い切った。
今年のクリスマス向けイチオシのアイテムを等身大のモデルに着せて、お客さんの目線で商品の特徴や着こなし提案をするこだわりを、販促ツールのグラフィックデザインでも見せたいのだろう。当然、この考えにはわれわれクリエーターも大賛成である。
大金をかけてデザイン会社に丸投げすれば、少なくともプロの評価に足る「広告作品」はでき上がる。でも、それが顧客目線にあった「販促」につながるかどうかと言えば、必ずしもそうではない。個店の場合は、オーナーの個性や力量がビジネスや品揃えに映し出される。顧客のことも外部の人間より、オーナーの方が知っているわけで、コピーやデザインでも内部の表現が説得力を増すとの考えには一理ある。
もちろん、われわれもプロのクリエーターだから、依頼された仕事には最大限のパフォーマンスで臨んでいる。他がやらないようなアングルやシチュエーション、オーナーの想像以上のカットで「商品の魅力」を写し出そうとする。クライアントに喜んでもらいたい一心からだ。
今回、オーナーのアナログな発注とは別に、こちらはデジタル技術を駆使して、メーンヴィジュアル用として商品の質感やフォルム、着たときの意外性なども表現してみた。それは掲載した2枚の写真である。
ファッションフォトは欧州のメゾンに代表されるように、どうしてもロケ地やシチュエーションに凝ったものが撮影されるなど、ブランドイメージが優先されてきた。それを米国のギャップは「インディヴィジュアル」という手法に変え、パーソナリティをもつモデルに商品を着せてシロホリ(白いホリゾント/背景)の前で撮影し、インパクトのあるヴィジュアルに仕上げた。
どちらが、販促効果が高かったかと言えば、商品がクローズアップされる後者で、ユニクロの広告づくりも基本的にギャップスタイルを踏襲したものだ。その後、グッチのトム・フォードは、広告ビジュアルは「最後のデザインだ」として、デザイナーである自身のビジョンを的確に打ち出した。それがモデルやカメラマンが変わっても、ブランドの世界観は統一させる技法を生み出した。
世界的なブランドと一個店を比較するのは、いささかはばかられる。でも、表現の目的は同じだ。訴えたい商品やショップの考え方をいかに打ち出すか、なのである。オーナーは、カードデザインの方向性は決まっているとだけ話すが、デザイン用のソフトを使うので折りを加えるなど、デザインにすると思われる。おそらく写真は商品とそのメッセージを伝える中面にレイアウトされるはずだ。
印刷はオフィスコンビニを利用し、特殊紙に印刷するのだそうだ。大きめの紙に印刷すればあとはトンボを合わせてカットするだけで、両面カラーのカードに仕上げられる。印刷会社に出せば簡単だろうが、最低ロットがあるので経費面ではバカにならない。オフィスコンビニなら1枚からOKだし、いつでも追加印刷が可能だ。
その分のコストを紙やデザイン封筒に投資できるところまで、このオーナーは考えている。もちろん、作業は店を閉めてからの深夜に行なうという。
Webデザインの浸透で、肩身が狭くなっているグラフィックや印刷物。しかし、1枚の布から作り上げるファッションもアナログな世界。ならば、それぞれがもつアナログの良さをもっと生かせるはずだ。
個店レベルのプロモーションではデジタル機能を活用しつつ、アナログ感覚なものを創る。この程度がちょうどいい。カードの出来上がりが楽しみである。