HAKATA PARIS NEWYORK

いまのファッションを斬りまくる辛口コラム

手段と目的をはき違える専門教育。

2011-11-18 18:06:03 | Weblog
 このコラムでも、ファッション専門学校の教育については、論じてきた。少子化の影響で学生の確保が難しく、学生の志向も多様化している。それ以上に業界の変化、ビジネスの革新は著しい。
 でも、ファッションが好きで、自分で服を作りたい学生はいるだろう。だから、そのニーズに少しでも応えてあげなければいけないのだが、これが教育の現場では中々難しい。一つはデザイナー育成という視点だけでは、学校経営が立ち行かなくなっているからだ。
 通常、独立したデザイナー学科を開講するならなら、1クラス最低25名ほどの学生を確保しなければならない。ところが、定員に達しない学校はビジネス学科などとの混成クラスになる。当然、講師の人件費などの面から、学生のニーズに見合うカリキュラム、授業時間は限られてくるのだ。

 ビジネスの授業を延々と受けさせられたり、検定試験の対策がメーン授業になったりでは、 学生は的外れだと思うだろう。デザイナーを目指すのに幅広い知識や資格は必要ないとまでは言わないが、それはあくまで仕事をするための手段であって、教育の目的になってはならないはずだ。
 二つ目は学校側が学生をつなぎ止めたいがために教育をエンターテインメント化し、 必ずしも業界の現状に合わせた人材育成をしきれていないことである。
 もの作りの勉強はそこそこにイベントの企画・実施を優先させたり、流行りの「企業コラボレーション」を口実に小売店の品揃えの一部を肩代わりさせたり、旅行とほとんど変わらない海外研修に出かけてみたり。それが完成度の高いクリエイティブワークにつながるならともなく、とても一般にお披露目できる作品やお客に買ってもらえる商品を生み出せているとは言い難い。

 加えて講師自体が進化していないから、 自分の得意分野を教えるだけで授業に工夫がない。 こういう内容で学生を育て、あのアパレルの企画に送り込もうとか、ここまでの技術を身につければ、このメーカーなら入れるなんて、 就職に結びつける技術伝承やリアルな発想があまり見られないのだ。
 しかし、専門教育がこのままでいいはずがない。服作りを勉強している若者に対し、先日、南充浩さんが「(専門学校は)縫製工場、染工場、織布工場、ニット工場などに卒業生の就職をあっせんしてはどうだろうか?」と書かれていたが、筆者も大賛成である。
 大学を卒業しても中々就職できない昨今、「徒弟制度」の復活とまでは言わないが、「縫う」「染める」「織る」「編む」技術を身につけた方がよほど、若者の将来は明るいと思う。

 ただ、アパレル一社をとっても、安さを訴求するところもあれば、高付加価値、高価格が売りのところもある。自社企画のオリジナルブランドを謳っても、商品企画や開発のスタイルは一貫型もあれば、業者にアウトソーシングする企業もある。
 自社に企画開発部門をもてばクオリティは維持できるが、商品化が遅くロットが増えないと高コストで、販売価格がはね上がる。逆に企画開発を外部の業者に依存すれば、スピードアップとコスト削減はできても、クオリティの徹底がなされず、似通ったテイストになって競合が多くなる。
 当然、各社各様でテキスタイルや染め、縫製、編み立てなどの業者や工場がすべて変わってくる。学校や講師はその辺の現状を十分理解した上で、学生に対し就職指導やカウンセリングを行なわなければならないのである。

 「キミがゆっくりデザインをしたければ、テキスタイルメーカーや染色工場もいいよ」とか、「あなたがトレンドに敏感なら、OEMメーカーの企画の方が適しているかも」とか、「国内にある縫製や織布の工場で働いてみると、将来独立する上で勉強になるはず」といった具体的なアドバイスが必要である。
 いずれにせよ、ファッション専門学校がこうした業界の現状をマクロ的かつ俯瞰で見ながら、教育内容を変えていかなければ、学生がアパレル業界に就職して服作りに携わることなど難しいと思う。
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