HAKATA PARIS NEWYORK

いまのファッションを斬りまくる辛口コラム

集中力を高める技。

2018-03-21 05:23:05 | Weblog
 昔は二八と言って、2月と8月は暇だった。だが、今では暮れの企画が2月をピークに3月までズレ込み、冬向けは7月くらいから動き出すので、8月は忙しくなっている。今年も昨秋からかかっている物件が年明けに最終段階に入り、2月3月は多忙を極めた。

 ただ、人間の集中力なんて、それほど長続きしない。机についても10分〜15分が限界だろう。長丁場の仕事を乗り切るには、テンションを上げるというより、緊張と弛緩という風にメリハリをつけるしかない。仕事に集中するには適度な息抜きというか、ストレス解消も不可欠なのだ。歳をとるにつれて、なおさらそう感じるようになってきた。

 だから、大きな仕事で溜まったストレスを解消するには、いたってアナログな手作業の方が自分には合っていると思う。それがレザークラフトだ。加工には指先を使うし、繊細な技や力もいるが、それが却ってストレス解消につながり、次の仕事への集中力を養ってくれる。

 レザークラフトはアメリカンなヘビーデューティが主流で、それが男っぽさの象徴からか、根強い人気を誇っている。革材料の専門店に行くと、独特の香りと共にアンティークゴールドのバックルからコインを用いたコンチョ、スタッズまでが並んでいる。まさにバイカー御用達というか、ヘルズ・エンジェルをイメージさせるテイストだ。

 一方で、デザイナーズ志向、ユーロテイストを求めれば、パーツ1点1点を探しまわらないと、思うようなデザインは上がらない。重要なのは革選びだ。ラムは繊細で柔らかだが、堅牢度に欠ける。カーフは丈夫だが固さがある。さらにキップ、ステアなど、作るアイテムで、向く革は異なってくる。

 金属パーツも手芸店やアクセサリー材料店までこまめに回ると、意外なものが見つかる。パーツ1点1点に拘れば拘るほど、個性的なアクセサリーを作ることができる。そのためには日頃からリサーチを欠かさず、こまめに材料店に寄ってどこに何があるか、目星を付けておく。こればかりは服以上に質感が大事だから、必要な時にネットで探して購入すると言うわけにはいかないのだ。

 こうして革から金具まで、探しに探し選びに選んで揃えれば、結構、自分でも納得がいくデザインに仕上げることができる。先日、昨年の9月以来、半年ぶりにウォレットやスマートフォンに付ける「革のストラップ」を制作した。パーツはすべて1店、一カ所では揃わないだろうとの前提で、リサーチを頼りに以下の店舗を回った。



 昨年、レザーメーカーのハシモト産業が福岡市中央区赤坂に福岡営業所を開設した。(https://hashimotoindustry.com/news/2522/)ここは事務所から歩いて行ける距離なので、中央図書館や体育館に行く度に覗いているが、革の在庫はそれほど多くなく、ショールームのような感覚だ。たまたまなのか、前を通る時に限って人影がなく、未だスタッフに話を聞くまでにいたっていない。

 やはり、事務所近くにある「クラフトハウス(http://www.crafthouse.jp/corp/index.html)」や国体道路沿いの「ハンズたかおか(http://www.e-hands.jp/)」、博多駅の「東急ハンズ」、そして地元の「いづみ恒商店(http://www.izumikou.com/)」に、どうしても足が向いてしまう。結局、今回のパーツもそれらで調達した。



 まず、革紐でお気に入りが見つかったのは、東急ハンズといづみ恒商店。ハンズの革紐は幅5mm・長さ約1m。おそらくカーフだと思う。価格は691円(税込)。 いづみ恒商店の革紐は同じ幅だが長さが180cm程度で540円。ハンズのものより厚みがあってやや硬い。おそらくステアだろう。




 次に金属パーツだ。ウォレットのDカンに付ける「ナスカン」は、東急ハンズ、いづみ恒商店、クラフトハウス共々同じものしか置いていない。これなら大手セレクトショップのPBにも使用されているから、ありふれている。そこで、リサーチ時に天神の「ユザワヤ福岡店」で見つけていた「Dカン付きミニナスカン」を使うことにした。

 このナスカンは、レザークラフト専門店が扱う機能重視の資材系ではなく、南京錠をイメージした小ぶりでモダンなデザインで、鍵1本を付けるキーリーングのような感覚だ。ヘビーなレザーアイテムより、スタイリッシュなアクセサリー向きだと思う。価格は1個238円。

 この下部に付いて回転するカンに革紐を通し、固定する金具は東急ハンズの「ツメ付け」(6個129円)といずみ恒商店の「紐留め」(2個220円)の両方を使ってみた。ツメ付けは薄い金属板をコの字状に折ったもので、上下にツメが付いてこれが革を咬む仕組み。紐留めはリングを3つ重ねたようなC字型で半円状に隆起した形が特徴である。

 どちらも紐を通してラジオペンチで空き部分を閉じれば、革紐を固定できる。補強のためにナスカンに通す数cmだけ別の革を接着した。そのため、この部分のみ紐が分厚くなり、ツメ付け、紐留めとも金具がやや開いた感じだが、紐の固定には何の問題もない。

 金具をしっかり留めるにはペンチを使ってもかなりの力がいる。だが、力任せに曲げてしまうと、ペンチ先の切れ込みが金具に食い込んでキズがつく。そのため、カバーをつけて、少しずつ力を入れ徐々に曲げるようにした。スタイリッシュなアクセサリーづくりにはこうした繊細さも不可欠で、この辺がアメリカンなレザーグッズとは違うところだ。

 両方の留め金具を試してみたので、結果、2種類となった。どちらがナスカンやウォレットに似合うのか。検討するのも結構楽しい。



 そして、革紐の末端を始末する「バネ付きの金具」。以前に東急ハンズで購入したものは、1個80円と格安だったが、プラスチックメッキで経年で表面が禿げ落ちてくる。そこで今回はニッケル製の本格的なものを使用することにした。これのみ地元では手には入らないので材料店を通し、中国の問屋に発注した。

 多分、到着まで時間がかかるだろうと早めにオーダーしたが、案の定、春節にかかり荷物が空港留めされて入荷までに1カ月ほどを要した。でも、別の商品と一緒に送付されたことで、送料はかからず1個240円で済んだ。

 実際に使って見るとは東急ハンズのプラスチック製に比べ、重みもあるし質感が違う。他の金具もメタリックなので統一感を出す事ができた。プラスティック製はブランドアクセにも使用されネット通販でも販売されているが、インスタ映えするような写真を見ただけでは金属製と見まがってしまう。

 だから、購入した後に現物をみて、意外に安っぽく感じるユーザーもいるだろう。商品説明に細かく記されていなければ、消費者は金属とばかりに思ってしまうわけで、この辺がネットの限界というか、実際に専門店を回ってパーツを選んだ場合との差ではないか。

 まあ、大手セレクトショップがオリジナルでアクセサリーを企画する場合でも、外部発注のODMばかりになれば、バイヤーはそこまで関知すらできない。だから、東急ハンズにはパーツ仕入れの部分で、この辺の拘りにもぜひ着目してほしいものだ。

 今回の製造コストは1本1100円程度で済んだ。これでPC用の薄型バッグにストラップを取り付ければスリやひったくりを心配することなく、ウォレットに電鉄系のICカードを入れたまま、地下鉄や電車のカードリーダーにスムーズなタッチできる。

 このウォレットはジャケットスタイルの方が似合うから、ストラップを外せば内ポケットに入れることができる。レストランやホテルでもスマートにチェックを済ませられるところがいい。さすがにポーターのひも付きでは、折角スタイリングも台無しになる。カジュアルとオフィシャルで使い分けられるのは好都合だ。



 実はウォレット自体は、某有名ファッション通販サイトにも出店しているモード系ブランドで、もともとストラップ用のDカンは付いていなかった。ブランドのテイストを考えると、そこまでの機能、細工を凝らす必要はない。もっともである。だから、こちらがわざわざ付けたものだ。

 ファスナーや内部の札、小銭、カードをホールドする間仕切りの関係から、こちらの取付には非常に腐心した。寝ている時に加工法が夢に出てきた時は、朝起きた後にすかさず試してみるなど、試行錯誤を繰り返して何とか体裁よく付ける事ができた。

 単に革の平紐にDカンを付け、それを折り返し部分の外からカシメを通して留めれば簡単に固定できる。だが、そうすると、カシメを打った部分が目立ってしまう。なるべくウォレットの表情を変えないままにしたかった。反面、ウォレットはストラップで引っ張るので、しっかり固定しておかないとちぎれてしまう。こうした加工の細かな点は企業秘密ということにしておこう。

 お客からすれば、ウォレットにストラップを付けたいというニーズもあるだろう。メーカーがオプションでそうしたニーズを聞き入れてくれればいいのだが、ブランドのテイストも守らないといけないから、なかなかそうは行かない。

 駅ビルに出店しているレザーグッズ専門店では、店頭にミシンを置いて職人による手作りやオリジナルイメージを訴求するところもある。ただ、オーダーと言っても、革の色を替えてくれるか、せいぜいファスナーの「ムシ」を革の色に合わせるくらいだろうか。

 無理に注文すれば、Dカンの取付もやってくれるかもしれないが、それこそ既製品にカシメを打って留められたひにゃ、ウォレット自体が台無しになる。表革と内革の間にDカンを付けた平紐を縫い込んでもらえるのが強度的にもデザイン的にも理想なのだが、そこまでになるとオリジナルで発注することになるのかもしれない。

 ネットで注文すると、仕様書を書いて添付しないといけないだろう。機能とデザイン、そしてブランドイメージを並立させるのは容易ではないのだ。

 だからこそ、既製品と市販の材料を駆使しオリジナリティと機能性を加えるレザークラフトは楽しいのだ。仕事の合間に取り組んだことで、ストレスが解消にもつながったし、次の仕事への集中力を養うこともできた。

 また、いづみ恒商店のスタッフから、「趣味でレザークラフトを楽しむ人々の間では、バッグやウォレットでもYKKの高級ファスナー『エクセラ』を使うのが浸透してます。うちもオーダーを受け付けているので」との話も聞けた。これはYKKの代理店にわざわざ頼まなくても良いから朗報だ。

 大手のセレクトショップが中国生産するレザージャケットでは、コストの関係から安いファスナーが使われているが、オリジナルレザーではウエア、グッズとも高級なエクセラがトレンドになっているようだ。

 これを機に、今年はずっと懸案だったレザーウエアの制作にも取り掛かりたいと思っている。





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