先日、ファッションライターの南充浩さんがご自身のブログで、「某百貨店に常設店を何年間も展開し続けているブランドが、別の百貨店に1週間だけ期間限定売り場を出した。…当然のことながら、常設店のある百貨店からそれなりの「嫌がらせ」「嫌味」の類があったというのだが、さもありなんである」と、ブランドを取り巻く「バッティング」の問題に言及されていた。
アパレルメーカーと小売りの関係で、バッティングやエクスクルーシブは長らく続く商慣習と言っても良い。ネット販売の浸透で、このルールは崩れてきたとも言えるが、リアル店舗では今でも厳然と残る不文律である。
南さんのご意見は、「(このブランドの売上げ規模) せいぜい5億円程度だろう。予想よりも売れていたとしても10億円弱であろう。となると、そこまで過敏に「囲い込む」必要があるのだろうかと個人的には疑問を感じる」と、だった。
確かに、日本の場合、アパレルメーカーと小売りとの関係では、圧倒的に小売りの方が強い。だから、メーカーは小売りから圧力をかけられると、従わざるを得ない場合もある。南さんが書かれていた「嫌がらせ」「嫌味」の類いは、その一つと見れなくもない。
これが海外ブランドになると真逆だ。経営トップ自らブランドの本社に日参して、誘致に奔走する。パリやミラノ、NYで徐々に人気を集めたブランドは、まずインポーターや中堅商社の手で日本に持ち込まれ、まずは専門店の手で少しずつ販売されていく。
それがブレイクすると、百貨店は大手商社などと組んで、根こそぎかっさらっていく。それを自店の顔にするためだ。アニエスb.もアルマーニもドルチェ&ガッバーナもみなそうだった。ところが、こうした海外ブランドがジャパン社を設立し、直営展開を行うようになると、状況は一変する。百貨店でもこれからブレイクしそうな海外ブランドに目を向けなければならない一方、国内ブランドも手当てせざるを得なくなるのだ。当然、エクスクルーシブやバッティングも問題が起きてくる。
メーカーは百貨店に対しエクスクルーシブを楯に、一定ロットの仕入れを要求する。百貨店はそこで他店とは「バッティングさせないでくれ」と頼む。ここでめでたく契約成立となれば、百貨店にブランドのハコやコーナーができるという構図だ。ただ、日本のファッション市場は、F1層を中心にトレンド重視になっており、アパレルも小売りもじっくりブランドを育てていくような状態にはない。
アパレルはとっかえひっかえデザインを発表し、それをタレントによるプロモーションでブランドへと昇華する。百貨店も売り上げ効率から中高年ばかり意識しておられず、旬のブランドへのリーシングに走る。ただ、ファンドなどからブランドの開発資金を得ているアパレルは、短期の収益拡大が至上命題で、SPA化して売上げ規模を拡大しなくてはならない。そこで、最大化する在庫の処分として、並行してネットチャンネルによる直販も行うのである。
となると、エクスクルーシブもバッティングも、意味をなさなくなる。だから、差別化のために希少なリアル店舗のブランドほど囲い込みたくなるのだ。南さんは売り上げ規模という観点から、それをすることに疑問を感じるという論調だった。加えて筆者は百貨店のバイイングや編集のノウハウが一向に進化していないこともあると思う。これについて、専門店と専門店系アパレルとの関係では、違った手法が取られている。
百貨店は所詮、ハコレベルだが、専門店は店舗を作りこむ。アパレルはある程度、商品を量産しなければならないから、卸先においては当然バッティングが起こってしまう。そこで専門店の中には業態から開発してコーディネート編集で売ることで、ブランドが同じでも似て非なる店を創り上げるところが、少ないながらも存在する。ディレクターなり、バイヤーなりが完全にその頭の中にあるMD像で、商品編集を具現化していくのだ。
他に同じブランドやアイテムを扱っている店がいくらもあるかもしれない。でも、一般にこのアイテムとこのアイテムは合わせないだろうと思うところを、うちはコレでいくという外し崩しの手法をとる。 スタイリング提案から考えれば、いくらでも独自性を出せるのだ。言い換えれば別のバイヤーが行えば、別のMDが構築され、店の顔が変わっていく。セレクトショップとは本来そうした業態で、これは百貨店のハコやコーナーでも十分可能なはずである。
自店が狙うコアな客層をしっかりイメージし、個々のブランドやアイテムでスタイリング提案する。それである種のトレンドやムーブメントを起こすことは十分可能だ。あるいはメーカーに対し、リスクを承知で別注をかけるという手法もあるだろう。ならば、エクスクルーシブもバッティングも関係ない。お客さんもそこしかない商品なら、プロパーで買ってくれる。バイヤーとは、バイイングとは本来そうあるべきなのである。
メディアは百貨店がじり貧状態にあるとは報道する。しかし、その根本原因の一つにバイヤーの能力不足、バイイングや編集の進化遅れを上げるところはほとんどない。ファッションマーケットが完全に成熟している時代に、まさしく「ブランドの新規性と希少性に頼っている」ようでは、百貨店に明日はないと思われる。
アパレルメーカーと小売りの関係で、バッティングやエクスクルーシブは長らく続く商慣習と言っても良い。ネット販売の浸透で、このルールは崩れてきたとも言えるが、リアル店舗では今でも厳然と残る不文律である。
南さんのご意見は、「(このブランドの売上げ規模) せいぜい5億円程度だろう。予想よりも売れていたとしても10億円弱であろう。となると、そこまで過敏に「囲い込む」必要があるのだろうかと個人的には疑問を感じる」と、だった。
確かに、日本の場合、アパレルメーカーと小売りとの関係では、圧倒的に小売りの方が強い。だから、メーカーは小売りから圧力をかけられると、従わざるを得ない場合もある。南さんが書かれていた「嫌がらせ」「嫌味」の類いは、その一つと見れなくもない。
これが海外ブランドになると真逆だ。経営トップ自らブランドの本社に日参して、誘致に奔走する。パリやミラノ、NYで徐々に人気を集めたブランドは、まずインポーターや中堅商社の手で日本に持ち込まれ、まずは専門店の手で少しずつ販売されていく。
それがブレイクすると、百貨店は大手商社などと組んで、根こそぎかっさらっていく。それを自店の顔にするためだ。アニエスb.もアルマーニもドルチェ&ガッバーナもみなそうだった。ところが、こうした海外ブランドがジャパン社を設立し、直営展開を行うようになると、状況は一変する。百貨店でもこれからブレイクしそうな海外ブランドに目を向けなければならない一方、国内ブランドも手当てせざるを得なくなるのだ。当然、エクスクルーシブやバッティングも問題が起きてくる。
メーカーは百貨店に対しエクスクルーシブを楯に、一定ロットの仕入れを要求する。百貨店はそこで他店とは「バッティングさせないでくれ」と頼む。ここでめでたく契約成立となれば、百貨店にブランドのハコやコーナーができるという構図だ。ただ、日本のファッション市場は、F1層を中心にトレンド重視になっており、アパレルも小売りもじっくりブランドを育てていくような状態にはない。
アパレルはとっかえひっかえデザインを発表し、それをタレントによるプロモーションでブランドへと昇華する。百貨店も売り上げ効率から中高年ばかり意識しておられず、旬のブランドへのリーシングに走る。ただ、ファンドなどからブランドの開発資金を得ているアパレルは、短期の収益拡大が至上命題で、SPA化して売上げ規模を拡大しなくてはならない。そこで、最大化する在庫の処分として、並行してネットチャンネルによる直販も行うのである。
となると、エクスクルーシブもバッティングも、意味をなさなくなる。だから、差別化のために希少なリアル店舗のブランドほど囲い込みたくなるのだ。南さんは売り上げ規模という観点から、それをすることに疑問を感じるという論調だった。加えて筆者は百貨店のバイイングや編集のノウハウが一向に進化していないこともあると思う。これについて、専門店と専門店系アパレルとの関係では、違った手法が取られている。
百貨店は所詮、ハコレベルだが、専門店は店舗を作りこむ。アパレルはある程度、商品を量産しなければならないから、卸先においては当然バッティングが起こってしまう。そこで専門店の中には業態から開発してコーディネート編集で売ることで、ブランドが同じでも似て非なる店を創り上げるところが、少ないながらも存在する。ディレクターなり、バイヤーなりが完全にその頭の中にあるMD像で、商品編集を具現化していくのだ。
他に同じブランドやアイテムを扱っている店がいくらもあるかもしれない。でも、一般にこのアイテムとこのアイテムは合わせないだろうと思うところを、うちはコレでいくという外し崩しの手法をとる。 スタイリング提案から考えれば、いくらでも独自性を出せるのだ。言い換えれば別のバイヤーが行えば、別のMDが構築され、店の顔が変わっていく。セレクトショップとは本来そうした業態で、これは百貨店のハコやコーナーでも十分可能なはずである。
自店が狙うコアな客層をしっかりイメージし、個々のブランドやアイテムでスタイリング提案する。それである種のトレンドやムーブメントを起こすことは十分可能だ。あるいはメーカーに対し、リスクを承知で別注をかけるという手法もあるだろう。ならば、エクスクルーシブもバッティングも関係ない。お客さんもそこしかない商品なら、プロパーで買ってくれる。バイヤーとは、バイイングとは本来そうあるべきなのである。
メディアは百貨店がじり貧状態にあるとは報道する。しかし、その根本原因の一つにバイヤーの能力不足、バイイングや編集の進化遅れを上げるところはほとんどない。ファッションマーケットが完全に成熟している時代に、まさしく「ブランドの新規性と希少性に頼っている」ようでは、百貨店に明日はないと思われる。