ブラウスやスカートなど1アイテムの服作りに執念を燃やし、都会的でスパイスの利いた商品を上質な素材と高い縫製で提供する専業アパレル。後発他社が練り上げたMD、スピード、価格を前に「専業」という独自性にコストと時間をかけるのは、完全に市場から見放された感がある。
「ブランドやトレンドを安くを手に入れればいい」が衣料消費の趨勢となりつつある中、最後の砦としてサービス力で勝負かけるのがドレスファッション業界だ。
かつて専門店の売場には春秋の結婚式シーズン、冬のクリスマスホリデーに合わせ、ドレスコーナーが設けられていた。これが独立した業態としてマーケティングを強化し、ビジネスモデルを確立しつつあるのだ。
ボリューム、マス市場のニーズはそれほどカネをかけない。そえゆえ、ドレスもレンタルで済ませる考えは従来からあった。しかし、タイム、プレイス、オケージョンがカギを握るフォーマルは、カジュアルウエアを購入する場合とは明らかに異なる。
じっくり時間をかけ専門スタッフのアドバイスを受けながら、最高のドレスアップをしたいというのが消費者のニーズだ。特に女性の場合は、主賓、来賓を問わず同じ心理のようである。
こうした背景から欧米ブランドのデザイン力や国内専業メーカーの仕様ノウハウ、それに専門スタッフのフィッティング技術を組み合わせた新業態、 結婚式場などと提携した「ドレスブティック」が地方都市でも少しずつ増えつつある。
秀逸な点はマーケティング能力の高さだろう。ウエディング市場だけを見れば、少子・晩婚化、価値観の多様化が進み、市場は縮小するという見方が大勢を占める。
しかし、モノからコトに消費が軸を移す中で、ドレスを着る=正装の機会は必ずしも減ることにはならない。つまり、いろんな「ハレの日」を仕掛けることで、老弱男女を顧客にしていこうという狙いだ。
もう少し詳しく市場を見ると、2010年の20~29歳の結婚適齢人口は1740万人。それが2030年でも1350万人は維持されるという統計がある。
人口減少に伴い結婚カップルは減ってはいくが、それでも1兆円超えのマーケットを維持されるわけで、ドレスウエアに対する一定ニーズは底堅いということになる。つまり、パーティやセレモニーなどを含めコト需要を作り出せば、人口15万人規模の都市でも十分にペイするということだ。
ドレス業界は専業アパレルのジャンルに入る。かつてはKウエアという専業メーカーがあったが、販路を広げられず需要喚起の仕掛けも怠って、ファッション市場から姿を消した。
目下、ウエディングドレスでは知名度のあるデザイナーズブランドの人気が高いが、それでも大手による寡占化が進んでいるわけではない。数%のシェアしかないところが大多数だから、新規参入もしやすいのである。
しかも、試着が絶対条件だからインターネットの参入は難しい。仮に価格面で競争が激化しても、商品は数年で償却していくため、アパレルにコスト圧力がかかることは少ない。販売にしてもレンタルにしても、アパレルは十分な利益を確保して商品が納入できると言える。
まあ、ショップ側はコンサルティングやフィッティングを売りにし、高度な接客サービス力をもつスタッフが業務に当たるため、今のところは価格破壊とも無縁だろう。
だからといって、簡単に業態展開ができるわけではない。お客はそこらのショップで口にする「コレ、ください」で、商品を手にすることはない。きちんとした目的を持ち、TPOをイメージしてドレス選びに来るからだ。
商品のタイプも、正礼装から昼間、夜間の準礼装までと幅広い。レディスではウエディングからオケージョナル、カクテル、PM、パラシュートやブラドレスまでと多種多彩。デザイナーズブランドはあえてメンズスタイルを取り入れたウエアを作り出すところもあるほど。
メンズになると、正礼装のテールコートやモーニング、準のタキシード、略のブラックからディレクタースーツ。デーフォーマルやイブニングフォーマルでも使い分けなければならない。
こうしたドレスコードの知識をもち、適切かつ的確にドレス選びのアドバイス、きめ細かなフィッティングまで行うには、高度な接客技術、優れたセールストークを必要とする。
それゆえ、昨今のファッション業界が忘れかけている接客に長けた優秀な人間が求められる。一時期、若者に人気だったブライダルコーディネーターのさらに上をいく人材。ドレスウエアを知りつくした「人財」が必要になるのだ。
憧れや情熱だけで就ける仕事でもないだろう。サービスや笑顔はその本人に備わる物理的、精神的余裕があって生まれるもの。だから、マニュアルや教育で習得するには限界がある。
とある新興企業はこうした適正を見極めるために、新卒採用で6度にわたる選考を行うという。一流大卒でも不向きと見られれば不合格となり、専門学校卒でも適正があると判断されれば合格する。ファッション、ブライダルの勉強をしているかどうかも関係ないようだ。
ドレスファッションはある意味、階級社会、社交界といったヨーロッパが育んだ衣服文化と言える。ここらで冠婚葬祭というオケージョンでしか見てこなかった日本のドレスファッションが覚醒するか。ファッション業界を活性化する上、今後の動向に注目したい。
「ブランドやトレンドを安くを手に入れればいい」が衣料消費の趨勢となりつつある中、最後の砦としてサービス力で勝負かけるのがドレスファッション業界だ。
かつて専門店の売場には春秋の結婚式シーズン、冬のクリスマスホリデーに合わせ、ドレスコーナーが設けられていた。これが独立した業態としてマーケティングを強化し、ビジネスモデルを確立しつつあるのだ。
ボリューム、マス市場のニーズはそれほどカネをかけない。そえゆえ、ドレスもレンタルで済ませる考えは従来からあった。しかし、タイム、プレイス、オケージョンがカギを握るフォーマルは、カジュアルウエアを購入する場合とは明らかに異なる。
じっくり時間をかけ専門スタッフのアドバイスを受けながら、最高のドレスアップをしたいというのが消費者のニーズだ。特に女性の場合は、主賓、来賓を問わず同じ心理のようである。
こうした背景から欧米ブランドのデザイン力や国内専業メーカーの仕様ノウハウ、それに専門スタッフのフィッティング技術を組み合わせた新業態、 結婚式場などと提携した「ドレスブティック」が地方都市でも少しずつ増えつつある。
秀逸な点はマーケティング能力の高さだろう。ウエディング市場だけを見れば、少子・晩婚化、価値観の多様化が進み、市場は縮小するという見方が大勢を占める。
しかし、モノからコトに消費が軸を移す中で、ドレスを着る=正装の機会は必ずしも減ることにはならない。つまり、いろんな「ハレの日」を仕掛けることで、老弱男女を顧客にしていこうという狙いだ。
もう少し詳しく市場を見ると、2010年の20~29歳の結婚適齢人口は1740万人。それが2030年でも1350万人は維持されるという統計がある。
人口減少に伴い結婚カップルは減ってはいくが、それでも1兆円超えのマーケットを維持されるわけで、ドレスウエアに対する一定ニーズは底堅いということになる。つまり、パーティやセレモニーなどを含めコト需要を作り出せば、人口15万人規模の都市でも十分にペイするということだ。
ドレス業界は専業アパレルのジャンルに入る。かつてはKウエアという専業メーカーがあったが、販路を広げられず需要喚起の仕掛けも怠って、ファッション市場から姿を消した。
目下、ウエディングドレスでは知名度のあるデザイナーズブランドの人気が高いが、それでも大手による寡占化が進んでいるわけではない。数%のシェアしかないところが大多数だから、新規参入もしやすいのである。
しかも、試着が絶対条件だからインターネットの参入は難しい。仮に価格面で競争が激化しても、商品は数年で償却していくため、アパレルにコスト圧力がかかることは少ない。販売にしてもレンタルにしても、アパレルは十分な利益を確保して商品が納入できると言える。
まあ、ショップ側はコンサルティングやフィッティングを売りにし、高度な接客サービス力をもつスタッフが業務に当たるため、今のところは価格破壊とも無縁だろう。
だからといって、簡単に業態展開ができるわけではない。お客はそこらのショップで口にする「コレ、ください」で、商品を手にすることはない。きちんとした目的を持ち、TPOをイメージしてドレス選びに来るからだ。
商品のタイプも、正礼装から昼間、夜間の準礼装までと幅広い。レディスではウエディングからオケージョナル、カクテル、PM、パラシュートやブラドレスまでと多種多彩。デザイナーズブランドはあえてメンズスタイルを取り入れたウエアを作り出すところもあるほど。
メンズになると、正礼装のテールコートやモーニング、準のタキシード、略のブラックからディレクタースーツ。デーフォーマルやイブニングフォーマルでも使い分けなければならない。
こうしたドレスコードの知識をもち、適切かつ的確にドレス選びのアドバイス、きめ細かなフィッティングまで行うには、高度な接客技術、優れたセールストークを必要とする。
それゆえ、昨今のファッション業界が忘れかけている接客に長けた優秀な人間が求められる。一時期、若者に人気だったブライダルコーディネーターのさらに上をいく人材。ドレスウエアを知りつくした「人財」が必要になるのだ。
憧れや情熱だけで就ける仕事でもないだろう。サービスや笑顔はその本人に備わる物理的、精神的余裕があって生まれるもの。だから、マニュアルや教育で習得するには限界がある。
とある新興企業はこうした適正を見極めるために、新卒採用で6度にわたる選考を行うという。一流大卒でも不向きと見られれば不合格となり、専門学校卒でも適正があると判断されれば合格する。ファッション、ブライダルの勉強をしているかどうかも関係ないようだ。
ドレスファッションはある意味、階級社会、社交界といったヨーロッパが育んだ衣服文化と言える。ここらで冠婚葬祭というオケージョンでしか見てこなかった日本のドレスファッションが覚醒するか。ファッション業界を活性化する上、今後の動向に注目したい。