HAKATA PARIS NEWYORK

いまのファッションを斬りまくる辛口コラム

脱却のカギはセレクトSPA化?

2013-02-12 16:14:12 | Weblog
 ユナイテッドアローズは昨年の4~12月、 連結業績は2ケタの増収増益を維持したものの、売上高の伸びを在庫の増加率が上回るという状況に陥った。これはB&Yユナイテッドアローズ、ユナイテッドアローズGLRといった稼ぎ頭のSPA化で在庫が増え、消化のためのセールが長期化していることを示す。

 特に春夏シーズンの在庫状況について、竹田光広社長は「ニーズに応えようとする意識が強すぎ、半歩先の提案が薄くなっていた。今春夏からシーズンの立ち上がりに、鮮度のある商品の提案を増やす」と解決策を語る。
 猛暑シーズンに販売する夏物はデザインで特徴を出しづらい。とすれば春・初夏物の方が多少なりとも遊びのあるものが企画できるし、提案しやすい。でも、7月にはセールに入ってしまうため、在庫は抑えながらプロパーで売り切って、定番で夏を乗り切ろうということだろうか。
 そもそも竹田社長は兼松繊維という商社の出身。中国などでのアパレル生産のノウハウやネットワークに長け、その実績を買われてU.Aのトップに就任した。言い換えれば、セレクトショップであった同社をSPA化していった陰の立役者と言えるだろう。

 SPA化とは「OEMやODMを含め、自社で企画したオリジナル商品を自社で販売する」という仕組み。本来のセレクトショップのようにメーカー仕入れではないから、荒利益率はグンと高くなる。反面、自社で商品づくりまで手がけるには、反つぶしなど一定規模の生産ロットが必要で、それを捌くための店舗数の拡大が不可欠になる。
 例えば、B&Yのオリジナル商品は、アウターで2万円以下と値ごろな価格帯。これで50%以上の荒利益率を確保するには、相当量の生産規模を抱えないといけない。ユニクロが国内だけで850店以上を展開しているからこそ、あの価格を実現できていると言えば、説明もつくだろう。

 しかし、2013年2月時点で、U.Aの店舗数は36店。B&Yユナイテッドアローズは単独店33店、U.A取扱い店12店。いちばん多いユナイテッドアローズGLRでも56店しかない。オリジナル商品で値ごろな価格帯と50%以上の荒利益を確保するには、店舗の販売数量をはるかに超える生産数量が存在するわけで、それが在庫を増やす結果となったのだ。
 ゾゾタウンやアマゾンなどいくらネット販売が伸びているといっても、その消化を加えたところで、同社が言うように「売上高の伸びを在庫の増加率が上回る」のは否めなかった。その結果が在庫を消化するためのセールの長期化である。

 具体的にどんなMDイメージかは想像つかないが、おそらくSPA化する前のU.Aイメージだろうか。昨今のU.Aはオリジナル商品がほとんどベーシックの域を出ていない。
 だから、商品の味付けを従来のセレクティングやヴィンテージ系の商品に近づけること。セレクトショップ本来の多少キャラクターの濃い、オリジナルより浮き上がって見えるようなスパイスの利いた商品の投入。これを仕入れまたはオリジナルで賄い、ミキシングしたセレクトSPAとでも言えるだろうか。
 U.A全体ではSPA化によるオリジナル商品の拡大で、元来のセレクト色は薄まっている。だから、どこまでバランス良くMDが構築できるかが課題になる。

 しかも、こうした商品は、半歩先の提案として売場の鮮度アップには貢献するが、ビジネスとしてどれほどの収益をもたらすかである。ベーシックでパーツ化した商品に飽き足りないお客はいるが、それらは回転の良い商品ではない。歩留まり率や荒利益率も精査しなければならない。
 またオリジナルとコーディネートさせていくには、デザイン、テイストのバランスも重要だ。それをメーカー仕入れで、簡単に商品が手当てできるとは思えない。逆にオリジナルで生産するにはロットが必要だし、在庫リスクが発生する。
 ゆえにせっかく全社的にSPA化を進めてきたのだから、自社開発でキャラクター性をもつ値ごろ感の商品を素早く開発・調達してもいいのではないか。それは自社の企画スタッフと外部ODMのデザイナーや、OEMの生産スタッフが一致協力していけば、決して不可能ではない。

 U.Aと比較される企業にビームスがある。同社はオリジナルこそあれど、メーカー仕入れの比率がU.Aより高いのは売場を見れば一目瞭然。しかし、普遍のアイテム、上質な商品、変わらぬデザインテイストで、最近はお客離れが著しい。
 セレクトショップとしてブランド力、ポジショニングを確立した両社だが、今日の差はSPA化というビジネスモデル以外にはないと思う。だからこそ、U.Aはそのシステムに磨きをかけ、社内外のスタッフが同じ目標のもとで、新しいセレクトMDを創造していかなければならない。
 まずはU.Aのスタッフがリスクを踏んで、ダメなら首を賭けるくらいの姿勢で臨むこと。でないとODMのデザイナーも、OEMのスタッフもやる気にならないはずだ。「鮮度のある商品の提案を増やす」をスローガンで終わらせないためにも、U.Aの本気度が試される。
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