HAKATA PARIS NEWYORK

いまのファッションを斬りまくる辛口コラム

パルコを手中に収めたJFRの真意。

2012-02-28 14:52:01 | Weblog
 大丸と松坂屋を傘下に持つJ・フロントリテイリングがパルコを関係子会社化する。売り上げ減少に歯止めがかからない百貨店が若者に強いファッションデベロッパーをグル-プ傘下に納めることで、脱百貨店戦略にも踏み込もうということらしい。
 一般メディアは「顧客層の拡大」「百貨店の再編」が進むなんて相も変わらずのフレーズをお書きになっているようだが、パルコを手中に収めたところで小売り面のメリットがそれほどあるとは思えない。
 パルコが2000年以降の経営改革で行なったことは、若手店長を抜擢して店舗ごとにジャッジできるようにし、都心店と地方店にグルーピングしてテナントとのリーシング交渉を有利にした程度。集客力のあるイベント企画、ハウスカードによる顧客戦略などででは、取り立てて特筆すべきものはない。

 また「若者に強い」と言っても、客層は10代後半、20代前半、20代後半、感度もセレクト、デザイナー、ストリートなど多種多彩。自店の特性に合わせセグメントしきれているかと言えば、テナントの顔ぶれをみる限り必ずしもそうではなく、脱百貨店の手本になり得るかどうかは懐疑的だ。
 パルコ側はマーケットニーズに合わせてコンセプトを作り、そのコンセプトに合わせてリーシングするテナントとのパートナーシップに優位性があると言い続けてきた。しかし、リーシングの本流はすでにでき上がったブランドなりショップなりに対し、立地と家賃や歩率の好条件を出して引っ張っているに過ぎない。 
 運営管理や販促についても、テナントからの家賃収入や歩率で賄えるから、売上げの上がらないテナントは入れ替えればいいだけの話である。この程度のノウハウは何もパルコの専売特許ではない。

 ラフォーレ原宿が原宿発のファッションブランドをインキュベートし続け、渋谷109がギャルファッションの市場を創造した。このようなエポックメイキングがパルコにはない。もし、やっていればとうの昔にファッションマーケットはもっと活性化しているはずである。
 10年8月には日本政策投資銀行と資本提携し150億円を調達。中国などへの進出を本格化させると発表した。しかし、それは日本からテナントを連れて行って開発運営するのか、現地のテナントでそれを行なうかで、ハード面はもとより運営手法まで大きく違ってくる。
 商環境もお客の嗜好も違う海外市場において、日本だけでの知名度やノウハウでSC開発がスムーズに進むと考えるのはあまりに短絡的だ。まあ、150億円くらいの資金ではとても足りないだろうし、日本で限界が見ているデベロッパーの海外進出を投資家が評価するはずもない。

 では、Jフロントはなぜパルコを手中に収めたのか。それはショッピングセンター(SC/業態名としてはこれが正式)事業には、保証金などの様々なドル箱があるからだ。
 一流商業地では借地権が更地の時価の90%まで認められているから、当然、借家権も時価にスライドしている。しかし、SCだけは保証金は出店時の金額しか保証せず、金利は付かない。なのに退店で空きスペースができると、そこの保証金は時価で新規入店テナントに要求できるというメリットがある。
 他にも内装費のピンハネ指定レジの押しつけクレジット手数料収入など、デベロッパーにはおいしいところがいくつもある。
 つまり、Jフロント側は単なる委託販売や消化仕入れ、歩率商売といった百貨店モデルから、こうしたデベロッパーの「うま味」にも目をつけたということ。これが脱百貨店の本音かもしれない。顧客層の拡大なんて小売り面して、裏では資本を動かして儲けようという魂胆が透けて見えるのである。
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